あの頃トン子と

著者 :
  • 講談社
3.28
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本棚登録 : 35
レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062203906

作品紹介・あらすじ

東北地方の農村で養豚業を営む洋一、39歳独身。その幼馴染で、東京で夢破れ故郷に舞い戻ったマナブ、バツイチ。二人は暇しのぎに、子豚のトン子に芸を仕込み始める。だが、そのトン子が、呼びかけられると「トン子!」と返事をするようになったのだ! 「しゃべる子豚」としてテレビ局の取材が相次ぎ、ついには豚骨ラーメンのCMに出演、トン子は日本中の人気者になる。ついに二人はトン子を擁して、上京するのだが……。

感想・レビュー・書評

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  • 東北地方の農村で養豚業を営む洋一(アラフォー独身)。その幼馴染で、夢破れ東京から故郷に舞い戻ったマナブ(バツイチ)。二人は退屈しのぎにメスの子豚に「トン子」と名付け芸を仕込み始めるが、利口なトン子は、呼びかけると「ドォンコ!」と答えるまでになった。テレビで紹介され、人気者になったトン子を擁して二人は遂に上京するが・・・。


    小学生の頃、祖母に買ってもらった子豚のヌイグルミ2匹に、ブー子とトン子と名付けて可愛がっていた私は、表紙のトン子の絶妙な表情も相俟って、引き寄せられるように本書を手にしていた。


    一言でいえば、可愛くて賢い子豚が、人間の身勝手に振り回される話で、映画「ベイブ」のようなハートウォーミングな展開にはならないのだが、不思議と読ませる物語だった。そこまで劇的な内容とは言えず、実録かと思うくらいありそうな話なのに、何故だかワクワクしてページをめくる手が止まらないのだ。


    それはたぶんこの小説が、アラフォーの上京物語だからだと思う。地元の農業高校を出てすぐに家業を継ぎ、女っけゼロのまま39歳になった朴訥な主人公が、40手前にして初めて上京する。マナブに巻き込まれただけとは言え、夢追い人となる。その遅咲きさに私はトキめいたのだ。上京だって恋だって夢だって結婚だって、適齢期は人それぞれなのだ。(ただ、イモ子はもうちょっと早く痩せて綺麗になっていたら良かったのかもと思う。料理上手で一途なのに、不憫でならない)。


    10代でペニー・レインに甘酸っぱい恋心を抱くのも青春なら、40でトン子との日々を思い出すのもまた青春。
    アラフォーの青春譚に乾杯!

  • トン子みたいな子ブタが実際にいたら可愛くて可愛くて仕方ないんだろうなと思いながら読んだ。
    まず、テンポが良い。主人公の第一人称で話が進むのだがノリがとても良いから読みやすい。洋一とマナブの正反対な感じもまた良いし、誰のことも憎めない。や、それはうそ。最後の最後で出てくる若造にはたまらなくイラっとした。
    可哀想なトン子。お手してお回りして待てして順応なトン子。踊って喋って愛らしいトン子。ストレスで疲弊し人間恐怖症になったトン子。最後の最後まで可愛くて可哀想だった。さよならトン子。ラストがあまりにも切なくて、ブタらしいラストで巧いなと思った。これがストレスで死んだとかだったら面白くない。最初から最後まで巧いストーリー展開だった。すごい。

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    3/9の選書ツアーにて購入

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著者プロフィール

昭和34年生まれ。宮城県出身。本作で2016年小説現代長編新人賞奨励賞受賞、デビュー。

「2017年 『あの頃トン子と』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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