叢書「東アジアの近現代史」 第1巻 清朝の興亡と中華のゆくえ 朝鮮出兵から日露戦争へ (叢書東アジアの近現代史)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062204866

作品紹介・あらすじ

日本、中国、韓国・朝鮮……。東アジア各国の関係は、ますます混迷をきわめています。日中間の尖閣問題、日韓間の竹島問題はその象徴ですが、それだけではありません。どうしてここまで仲が悪いのか、その本質は、歴史をたどらないかぎり明らかになりません。
本シリーズは、東アジアのいがみあう現実の、歴史的な起原と形成過程をさぐり、問題の核心に迫ります。日中韓を中心とする対立と融和の東アジアの歴史の核心を、学術研究の成果をふまえて描き出します。
第1巻は、清朝の歴史を中心に、日清・日露戦争に至るまでを描きます。
はじまりは豊臣秀吉の朝鮮出兵に求められます。そして、日露戦争の帰結が、ひとつの大きなターニングポイントになります。
満洲人が漢人を支配するという形ではじまった清朝の絶頂と凋落、そして朝鮮やチベットなど周辺国との関係、日中関係。それらを活写して、現在の問題の淵源に迫る力作です。

感想・レビュー・書評

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  •  清朝の通史だが、教科書的に個々の事件や発生年を追うというより、世の中がどう変動したかという流れを重視している。また、「辺境」が清の版図に入ったり「属国」関係を結んだりまた離れたり、という点にも多目に紙幅を割いている。全体としては語り口は柔らかく、また筆者の過去の著作と重なる部分も少なくなく、読みやすい。
     筆者は、「盛世」を誇ったはずの乾隆帝及びその治世に対してやや手厳しい。満洲人の漢人への同化と言えば単純だが、筆者はそれを、それまでの清朝は自らを「外夷」と自覚し、旧来の「華」「夷」二分法的な秩序原理を克服していたのに、乾隆時代に旧態依然の「華」「夷」二分法に回帰してしまったと言い換えている。
     18世紀に入ってからの人口増加と流動化、既存の社会秩序から逸脱した移民たちの秘密結社。そうなると皇帝の独裁にも限界が来て、地方大官の権限を大きくせざるを得ない「督憮重権」。19世紀の大変動の下地は既に18世紀に準備されていたということだろう。

  • 叢書「東アジア近現代史」の第1巻として、豊臣秀吉の朝鮮出兵から日露戦争に至る清朝の歴史を通観。
    著者も指摘するように、明朝の一元的な秩序・イデオロギーに抗して、多元勢力の強体制をつくりあげたものの、やがて画一・同化を強いる「近代」の到来に呑み込まれ、存在理由を失い去った清朝の歴史は、現代の東アジア情勢を考える上でも、みつめなおすべき歴史であろう。
    著者の広博な研究成果を濃縮した本書の内容自体も非常に優れたものだが、著者の文体も、宮﨑市定などの過去の大東洋史家を彷彿とさせる名文で、それも素晴らしいと感じた。

  • 清は満洲人の国でありながら、明代の漢人の支配体制を利用し、新疆も含め、間接的な統治というか、連邦国家的な支配体制だったと理解しました。
    やはり華夷秩序の思想が連綿と続いていることも分かりました。

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著者プロフィール

1965年、京都市に生まれる。現在、京都府立大学文学部教授。著書、『近代中国と海関』(名古屋大学出版会、1999年、大平正芳記念賞)、『属国と自主のあいだ』(名古屋大学出版会、2004年、サントリー学芸賞)、『中国経済史』(編著、名古屋大学出版会、2013年)、『出使日記の時代』(共著、名古屋大学出版会、2014年)、『宗主権の世界史』(編著、名古屋大学出版会、2014年)、『中国の誕生』(名古屋大学出版会、2017年、アジア・太平洋賞特別賞、樫山純三賞)ほか

「2021年 『交隣と東アジア 近世から近代へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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