著者 :
  • 講談社
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062204972

作品紹介・あらすじ

上原沙矢は、一人特急オホーツクにのり網走を目指していた。遠距離恋愛中の恋人が隣にいるはずだったが、急な仕事で来れなくなってしまったのだ。沙矢は途中にある金華駅で「常紋トンネル殉難者追悼碑」を、そして網走で出会ったある本により、北の大地にいきた女と男の人生を知ることになる。
大正三年。八重子は一人息子の太郎を知人にあずけ、遊郭「宝春楼」で働くために東京から網走へ向かっていた。本州と北海道を繋ぐ青函船の中で、一人の青年と出会う。この青年とはのちにも巡り会うが、そんなこととはお互い想像もせず、それぞれの行き先へ散っていく。
初見世も終わったある日、知人からの手紙を同じ遊郭の百代に読んでもらった八重子は、太郎が死んだことを知る。この日から八重子は変わる、何が何でもトップにたつのだと――。
青函船で八重子と出会った白尾麟太郎は、どういう運命の巡り合わせか、タコ部屋で働くことになる。それまでの裕福で満ち足りた生活とは一変し、生きのびることで精一杯だった。
八重子と麟太郎は過酷な運命にさらされながらも、己の生きる意味を見いだしていく。
そんな彼らの生き様を知った沙矢も、自分の生き方に一筋の光を見いだすのだった。

感想・レビュー・書評

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  • 連れていかれた北の大地の遊郭で、娼妓として生き抜いた女性達のその生き様に、激しく圧倒された。胸が熱くなるものすら覚えた。今まで遊郭で働く女性達の事は、時代劇のドラマなどで知ってはいたけど、こんなに具体的に目の当たりにしたのは初めてで、彼女達が、娼妓として働くことになった背景、遊郭での生活、翻弄された運命、覚悟などに、衝撃を受けました。
    また、「タコ部屋労働」たるものが現実にあり、実際にタコ部屋労働で常紋トンネルが建設されたことも衝撃でした。こんな凄惨過酷な事が行われていたなんて、知らなくて、信じがたく、もっと受け継いで行かなければならない過去なんじゃないかと感じました。
    目を背けたくなり、読むのが辛くなってしまうタコ部屋労働の描写に、遊郭での激しい性描写もありますが、だからこそ臨場感があって、翻弄された運命を生きる、登場人物達の生き様が伝わってきました。
    私は、なんとなく流され、これといった目的もなく、むなしく感じる事も多かったり、とりあえず今を生きている、でも生きたい!と人生を歩んでいますが、彼女達の壮絶な覚悟はないにせよ、同じだと感じ、これでもいいんだと思いました。
    「生きる」「生きている」ということ、自分の生き様について、考えさせられる一冊でした。

  • 読み進めるのが辛かった……重い……

  • 久しぶりに、食い入るように夢中で読んだ。
    実際には見た事のない景色が、人々が、目に浮かぶ様だった。


  • 就活中の上原沙矢は、恋人との旅行のはずの網走へ一人で来る。沙矢は途中にある金華駅で「常紋トンネル殉難者追悼碑」を、そして網走で出会ったある本により、北の大地にいきた女と男の人生を知ることになる。
    大正三年。八重子遊郭「宝春楼」で働くために東京から網走へ向かっていた。本州と北海道を繋ぐ青函船の中で、一人の船酔いした青年に会う。

    初見世も終わったある日、知人からの手紙を同じ遊郭の百代に読んでもらった八重子は郷里に預けてきた息子の死を知る。
    青函船で八重子と出会った白尾麟太郎は甘い考えによりタコ部屋で働くことになる。それまでの裕福で満ち足りた生活とは一変し、生きのびることで精一杯だった。
    そこでさらに、親分と親子の契りまで結ぶ…

    最初と最後だけ現在の上原沙矢と恋人が登場する。そのふたりがいなければ、網走に行くこともなく、よってこの遊郭やタコ部屋の話を知ることもないのだが、全く違う本のように、続きには思えない。
    少し前までにあった出来事をクローズアップするのはとても良いのに、前後が上手く繋がっていない違和感。

  • 一気読みの後、胸が塞ぎどうしようもない。それほど蛭田さんの読ませる筆力を感じた作品。北海道を舞台に、大正時代の遊郭の娼妓たちと、たこ部屋に住む労働者たちの生活や有り様がとても細かく描かれている。初めて知った娼妓という言葉。そうか、当時は御上が認める生業だったのか。人権はもちろん、人々の尊厳が踏みにじられる描写は性表現も含まれ、繊細かつ巧だと思う。ただ、兎に角胸が苦しい。根底に人々の怒りや悲しみが横たわり、読むのが辛かった。最後がちょっと唐突な結末。でも蛭田さんはこれからも追いかけたいです。

  • で。という中途半端な一冊。
    現代パートと過去パートに必要性ある
    繋がりなく、だが無理矢理パート分けしたせいで
    結局一冊の中にまとまりがない。
    で。で⁇
    という一言で終わる。
    なんか書きたかったんだろうけど、
    まとめられなかったんだな〜と。
    キャラに一貫性や説得力がないので
    そこの落ち着かなさがまた気持ち悪い。

  • 大正に、遊郭に売られた八重子とタコ部屋の麟太郎
    昭和に、トンネル整備中に白骨化遺体を発見した国鉄職員
    平成に、旅行に来て郷土史的な本を図書館で見つけた女子代生
    メインは対大正だけど、3つの軸ではなしが進んだけれど、わざわざ軸を分けたわりにははなしの繋がりが弱い気がした。あのくらいであれば、大正のはなしをもっと濃く描いたほうがよいのではないかと思う。

  • 重く苦しかった。蛭田さんの作品ほとんど読んでいますが、今までと全然違う作風にぎょっとした。ずっとずっと重たい。
    現代を生きる沙矢と大正時代を生きた八重子と麟太郎。
    読み終えてからずっと寒い。。

    以下出版社から
    上原沙矢は、一人特急オホーツクにのり網走を目指していた。遠距離恋愛中の恋人が隣にいるはずだったが、急な仕事で来れなくなってしまったのだ。沙矢は途中にある金華駅で「常紋トンネル殉難者追悼碑」を、そして網走で出会ったある本により、北の大地にいきた女と男の人生を知ることになる。
    大正三年。八重子は一人息子の太郎を知人にあずけ、遊郭「宝春楼」で働くために東京から網走へ向かっていた。本州と北海道を繋ぐ青函船の中で、一人の青年と出会う。この青年とはのちにも巡り会うが、そんなこととはお互い想像もせず、それぞれの行き先へ散っていく。
    初見世も終わったある日、知人からの手紙を同じ遊郭の百代に読んでもらった八重子は、太郎が死んだことを知る。この日から八重子は変わる、何が何でもトップにたつのだと――。
    青函船で八重子と出会った白尾麟太郎は、どういう運命の巡り合わせか、タコ部屋で働くことになる。それまでの裕福で満ち足りた生活とは一変し、生きのびることで精一杯だった。
    八重子と麟太郎は過酷な運命にさらされながらも、己の生きる意味を見いだしていく。
    そんな彼らの生き様を知った沙矢も、自分の生き方に一筋の光を見いだすのだった。

  • 網走の妓楼「宝春楼」で生き抜いた八重子、タコ部屋に送られることになった帝大生の麟太郎。ふたりの過酷な人生が、縦糸と横糸として織りなす北の大地での物語。

  • 自分が堕ちてる時はオススメしません。重いです。

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著者プロフィール

1979年北海道札幌市生まれ、在住。2008年第7回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞し、2010年『自縄自縛の私』(新潮社)を刊行しデビュー。そのほかの著書に、『凜』(講談社)『エンディングドレス』(ポプラ社)『共謀小説家』(双葉社)などがある。

「2023年 『窮屈で自由な私の容れもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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