- Amazon.co.jp ・本 (522ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062205245
作品紹介・あらすじ
本書は国鉄が崩壊、消滅に向けて突き進んだ二十年余の歴史に再検証を試みたものである。昭和が平成に変わる直前の二十年余という歳月は、薩長の下級武士たちが決起、さまざまな歴史上の人物を巻き込んで徳川幕藩体制を崩壊に追い込んだあの「明治維新」にも似た昭和の時代の「国鉄維新」であったのかもしれない。少なくとも「分割・民営化」は、百年以上も続いた日本国有鉄道の「解体」であり、それはまた、敗戦そして占領から始まった「戦後」という時間と空間である「昭和」の解体をも意味していた。
感想・レビュー・書評
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国鉄は戦後も公共企業体として再出発しながらも政治との蜜月が続き、利権化されていた。さらには戦後の民主化政策で労働組合が力を増し、五十五年体制を作り上げる。国鉄はまさに昭和の腐敗した歴史の象徴であり、それが解体していく様は圧巻。
また、中曽根首相の先見の明、断固とした決意、圧倒的な政治感覚には目を見張るものがある。
以前読んだ国鉄改革の本は、葛西の視点によっており重視しているポイントも違うように感じたので、そちらも改めて読み直し比較してみたいと思った。 -
自分の年齢としては当時はまだ子供で、このようなドロドロした世界があること自体も知らなかったが、読むと壮絶な暗闘という言葉がしっくり来ると改めて思った。淡々とした語り口も主題に合ってしていて、硬派な内容で分量も多いが意外とすらすらと読み進めることができた。
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国鉄栄枯の歴史を国鉄内部の目線で描いたルポ。
鉄道ファン向けに描かれるような東海道新幹線開通や世間の様子ではなく、国鉄がJRへ解体されるまでの組織と政治の話に特化していて、その人間の織り成すドラマはあまりにも金と欲にまみれて重苦しい。
変わり続ける政治家、利権をむさぼる労働者、不明瞭な責任の中で愛されなかった国鉄という組織が、国鉄三羽ガラスと言われる井出、松田、葛西の三人の官僚を中心に終息を迎える。
筆者はベテランなだけあり、(ドラマ的な描き方をしている部分もあったが)可能な限り事実を書こうとしていたように思われる。
心底悔やまれるのが、福知山線事故の責任を感じた井出が国鉄改革回想録2000ページをお蔵入りさせたという話。
本書はこちらも参考にされているとのことから、他の国鉄関連書籍を読んだ上で再読したいと思った。 -
国鉄の民営化は本当に本当に大変だったと生々しく伝わってくる。
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国鉄が労使対立と巨額の債務のなかで迷走を続け、分割民営化されるまでのドキュメント。親方日の丸で統制の取れない職場の実態が生々しい。
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本来は、国鉄の解体が昭和の解体であるということを、すぐに分からなければならないのでした。
いや、本当に勉強になりました。 -
先日読んだ同著者の「暴君:新左翼・松崎明に支配されたJR秘史」が裏の歴史だとすると、先に書かれた本書は国鉄改革の表の歴史である。
国鉄分割最後まで分割・民営化に反対した国労の歴史は戦後まで遡る。
シベリア抑留から帰国した、田中角栄の戦友、細井宗一から国労の歴史が語られる。
機関助士廃止反対運動、マル生粉砕、スト権スト。
国鉄当局と国労との泥仕合の中で分離した動労など、労使関係は累積赤字とともに悪化の一途をたどる。
そして国鉄再建の道として示されたのが分割・民営化案だった。
しかし、審議される頃には国鉄総裁はレームダック、運輸省と国鉄上層部は分割・民営化案を潰しにかかる。
手を結んだのは、国鉄若手官僚と政府だった。
これは国鉄解体にとどまらない。
昭和62年4月1日にJRとして新しく発足したその日は、昭和の解体と言っていいほどの意味を持っていた。
これが国鉄解体、表の歴史である。 -
昭和の一大事件である国鉄分割・民営化に関わったさまざまな人物の証言を元に再検証する500ページ超の大著。改革派・国体護持派それぞれの思惑が交錯する様はまさにスペクタクルで読み応え抜群!タイトルが「国鉄解体」ではないのも、読み終えればこれしかないと思えるのにも驚いた。
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半強制的に組合に入らされている若手や中堅に、昔はこんなことがあったと知る意味でおすすめ。信じられないようなことがあったんだなと、驚くと思う。