15歳、ぬけがら

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 107
レビュー : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062206013

感想・レビュー・書評

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  •  海外の作品はかなり果敢に厳しい問題に挑戦するけど、日本のYAは学校で読まれることを配慮してか、厳しい問題もソフトに描く傾向がある気がしているが(『カーネーション』『小やぎのかんむり』など。岩瀬成子は例外)、これは、日本の貧困家庭をかなりリアルに描いている。(一般向けなら厳しい現実を描いた作品はいくらでもあるが、この本は児童文学、つまり子どもに読まれる前提で書いている。)
     主人公は両親が離婚し、母と暮らすが、母の精神状態が悪く、家事も仕事もできない状態。狭い家に男を連れ込むこともある。
    貧困とネグレクトが一体化すると、とたんに大人社会の闇が接近する。女子は売春し、男子はチンピラになり、児童は放浪し、万引きする。最近になって「子どもの貧困」なんて言われだしたけど、いつの時代にもこういうことはあった。多分ほかの国でも同じだろう。しかし、貧しい国ならいざしらず、国家としては豊かな日本が、こうした子どもたちの救済に乗り出さないのは異常だ。
     この本でも食事を与え、勉強をサポートするのは民間のボランティアだ。こういう善意の人々に頼って良しとするのではなく、きちんと行政がサポートしなくては。
     食欲に負けてサポート団体に行き、少し将来に光が差してきた主人公に比べ、18になったため何のサポートも受けられず、売春で身を立てなければならない優香のことを考えると胸が締め付けられる。(たった一人田舎の祖母に引き取られた和馬も、将来グレる予感大。)しかし、これが現実。すべての人が救われるわけではない。
     著者は公立中学の教員だったとあるから、きっとこういう現実を目の当たりにしたのだろう。甘くない現実と同時に、夢物語ではない希望も描いた作者に拍手を送りたい。

  • 生徒の家庭のことを何も知らない先生。
    すごいな、今の時代にそんなこと可能なのかなと思うけれど、じゃあ逆にいったい何を知ってると言えるのだろうかと言えば、やっぱり何も知らないのかもしれないなとも思う。
    支援を必要とする側が、支援する側になる。
    未だ自らも支援を必要とするままなのに。
    これが自助、共助の世界ですか。

  • 読んだのは去年。いまだに読み終わった瞬間の哀しさと遣る瀬無さを覚えている。つくづく思うのだけれど、これは物語のお話なんかじゃなくて、実在する人間の話だったのだ。きっとたびたび思い返す。わたしには何ができるのかと思いながら。

  • 作者は北海道の方。

    現代の問題を乗り越えていこうとする15歳を描く。

  •  講談社児童文学新人賞で佳作に入った、著者のデビュー作だ。

     貧しい母子家庭の中学3年生・麻美を主人公に、「子どもの貧困」問題を小説仕立てにした作品。

     麻美の母親のキャラ造型がややステレオタイプで、血が通っていない印象を受けた。『ルポ母子家庭』とかの本を読んで、頭で作ったキャラという感じ。

     あと、麻美がお風呂にあまり入れずに体のニオイを気にするとか、ニオイに関する描写がしつこすぎ。
     「五感に訴える文章を」との意識からそうしているのだろうが、そういうのはここぞという場面で一、二度言及すればよいのであって、あまりくり返されるとげんなりする。
     そのへんの瑕疵が、佳作にとどまった要因かもしれない(エラソーですが)。

     ……と、ケチをつけてしまったが、全体としてはよい作品だ。
     後半、貧困家庭の子どもに無料で勉強を教える学習支援塾「まなび~」との出合いによって、麻美はよい方向に変わっていく。その蘇生のプロセスが感動的である。

     「よい大人」の象徴として描かれる「まなび~」の塾長の言葉によって、麻美は初めて自分の未来を明るいものとしてイメージする。
     その場面の麻美のモノローグ――「あたしたち、未来って考えてもよかったの?」は、物語全体のキーフレーズともいうべき言葉で、深く胸を打たれた。

     『15歳、ぬけがら』というタイトルは一見ネガティブだが、後半に出てくるセミの抜け殻のエピソードを通じて、「ぬけがら」に込めた著者のポジティヴなイメージが明かされていく。そのへんのイメージ転換も面白かった。
     
     塾と勉強の様子についての描写が冴え渡っている。それもそのはずで、著者は公立中学の教師、塾講師、学習支援塾スタディアドバイザーをしてきた経歴の持ち主だという。その経験が活かされているのだ。

  • 厳しい、つらい、現実。YAはこういう薄暗く重い話も多いね。

  • 貧困家庭の女の子が、学習支援塾に出会い、希望を見出す。食事っていいなと思えた。
    塾の人ができすぎな点、主人公が不思議にまっすぐな点をのぞけば、自分の世界とも地続きなリアルさを感じて共感できました。

  • 経済的に困窮している家庭がいくつか出てくる。主人公の中学生の麻美の家庭もそんな家庭のひとつ。父と離婚した後、母親が精神的に病んでしまい、部屋が汚くて食べるものも着るものも欠いている。
    フィクションだが、経済的にも精神的にも自立できていない家庭の子どもたちの現状がよくわかる。子どもを取り巻く先生や同級生や見ず知らずの大人たちは、貧困家庭に育つ子供たちの背景を理解しないで阻害したり批判的だ。
    そんな中でも、無償の愛を注ぐ、学習支援塾のまなびーに出会うことで、麻美は変わっていく。
    近年、子ども食堂が話題になっているが、この本を読んでその価値を改めて認識した。
    私は大人として、自分の行動を振り返ったが、中学生はどう読み感じるのか、正直分からない。

  • 今の豊かな時代に、今日明日の食べ物に困っている子供たちがいると思うと、切なくなる。物語の中では、学習支援塾でご飯を出してくれたり、勉強を教えてもらったり、話を聞いてもらったりする場所があったから、少しは救われたと思うけど、ホントに切ない。

  • 児童文学というカテゴリーだけど、大人にも読んでもらいたい一冊。

    世の中、理不尽なことが多いけど
    誰かのせいにして不貞腐れてないで
    自分のできることからやってみよう!
    そんな気持ちにさせられます。

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著者プロフィール

作家。都留文科大学卒業。公立中学校で国語教諭として勤務後、塾講師、学習支援塾スタディアドバイザーなどを経験。2016年、『15歳、ぬけがら』で、第57回講談社児童文学新人賞佳作入選。

「2017年 『YA! アンソロジー ひとりぼっちの教室』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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