理科準備室のヴィーナス

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 120
感想 : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062206341

作品紹介・あらすじ

私たちの学年の理科の先生は、洋風の印象的な顔立ちをしている。
そして、結婚していないのに、子どもがいるっていうウワサ。
私はその先生の真似をして髪を伸ばし始めた。

そして、先生をみつめる生徒は、もうひとりいた。

先生が理科準備室でくれる美味しくて可愛いお菓子と愛の時間。


<書店員さんからのコメント>
遠い昔に味わった、他者を求めているのに、どうにもコントロールできず、押し寄せる感情の疼きに翻弄されていた、あの頃の自分を思い出しました。ジュンク堂書店藤沢店鈴木さん
瞳は決して「ふつう」の女の子ではない。自分を曲げない。誰にも解決することができないはがゆさが切ない。長谷川書店ネスパ店永島さん

感想・レビュー・書評

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  • 印象的な魅力を放つ教師と、彼女に惹かれる少女と少年。
    ひょっとしたら恋より強い結晶みたいな好意が硬度を増してもろくなる。焦がれて傷つき、傲慢になり傷つけて、ああなんて、息苦しい甘美。
    真夜中の雪降り積む校庭、銅像の手のひらの上の折り紙のバラ、美しい人見先生。

    揺れ動くきもちが、ときに残酷なほど細やかに描写されていて感嘆する。曖昧な感情を言葉にすることはセラピーみたいなものだし、この本を必要な子は世界のそこここにひっそりといるだろう。願わくば彼女と彼らに、瞳と正木のような同士がみつかりますように。あるいはこの本が届きますように。

  • 面白かった!従来のYA作家さんたちとは、こたえの出し方がちがう。立ち向かうとか、殻を破るとか、そんな話じゃない。今後の作品も楽しみ。

  • 理科の人見先生は、ボッティチェリのヴィーナスのような、印象的な顔立ちをしていた。話すことも行動も少し「普通」からはずれている先生に、瞳はなぜか心惹かれた。授業中、先生をみつめていると、同じように先生を見つめている男子、正木に気が付いた。先生と二人の、秘密の時間が始まる…。
    憧れとも尊敬とも違う、それは恋に近い思い。性別も年齢も越えて、心に芽生える独占欲。ひとつひとつのエピソードにこもる若くて固い切迫感が息苦しいほど。
    この独特の世界感を作り出す作者に俄然注目。

  • 一人の教師をめぐる少年と少女の物語。
    その三角形の図式はまさに"甘美"で"秘密のにおい"がした。
    同じくらい強い想いを抱きながら、その想いの種類はそれぞれに少しずつ違っている。そしてそのどちらにもはっきりとした名前はない。憧れや恋もつかないし、いわゆるLGBTQを扱っているという感じでもない。そのあいまいさが良かった。

    秘密は秘密のままそっと在り続ける。
    名付けることのできないさまざまな心の揺れが描かれたとても瑞々しい作品だった。

  • 「平成30年度埼玉県推奨図書」の中学生向けにあり、気になっていたので借りた。

    埼玉県HP「平成30年度埼玉県推奨図書」
    https://www.pref.saitama.lg.jp/a0307/jourei/30suisyoutosyo.html
    (最終閲覧日 2020年5月4日)

    私たちの学年の理科の先生は、洋風の印象的な顔立ちをしている。
    そして、結婚していないのに、子どもがいるっていうウワサ。
    私はその先生の真似をして髪を伸ばし始めた。
    そして、先生をみつめる生徒は、もうひとりいた。
    (カバーそでより)

    なんだかひりひりしました。
    はじめのほうで2箇所、そうそう、このことに気づいたとき、少し大人びたような冷めたような感覚になったんだっけ、と思い出した。
    そして読み進めていくうちに、どうしようもない自意識が自分という一個体の中でぐるぐるしていて、どこかにとびだしていかんばかり、でも、どこにもいけない、ということを否応なく思い知らされたりしたな、ということも思い出す。
    人見先生にひかれる、主人公の「私」と正木くん。
    ふたりは、それぞれが自分のなかで自分に含みきれないものを、人見先生という「大人になりきらない大人」に投影することで安心したかったんじゃないかな。
    大人に「なりきれない」のではなく「なりきらない」存在が、思春期の人たちの心を乱すのかも。
    私はときどき、結局何にもなれないけれどなろうともしていない、という、どろっとした気持ちになる。
    台風一過は、少年たちのこころ。
    感想がまとまらないけれど、こころには、いろいろなあわいがあるということを感じました。
    感情のなかに壁や区切りはなくて、実は「好き」「嫌い」は続いていたり、感情がワープする白い部分がある。
    そのことがわかったので、大人ですけど、読んで良かったです。

    最後に。
    書架で見かけた最果タヒさんの『十代に共感する奴はみんな嘘つき』というタイトルが頭をかすめました、気になっていてまだ読んでいないので、今度、読んでみます。

  • 中学生となった瞳は「ヒトミ先生」と呼ばれる女性の理科教師に惹かれる。
    どこか浮世離れした感じのある教師と、瞳、同級生の正木の三人が織り成す不思議な雰囲気の学園ストーリーだ。

    全体的にふわっと5㎝ほど地から足が離れているような雰囲気が漂っていて、なんとなく物語を掴み切れないまま読み終えてしまった。

  • 憧れと恋、まだ自分自身の中にある感性や感情を捉えられない年頃。中学時代は、制服もあるせいか、自分はこの集団からこぼれ落ちていないか、成長が皆より遅れてないか…と大人になればどうということもないことに縛られて、窒息しそうだ。そういう中で、賢い主人公は、自分自身や周りを一歩後ろから俯瞰できるオトナだと思っていたが…。些細なことで揺れる、この年頃の感情をよく捉えていると思う。
    2018.4

  • 登場人物は、みんな簡単に説明できない気持ちを抱えている。

  •  クラスの女王様の南野さんに嫌われている瞳は、嫌われていると知りつつも南野さんのことが好きだ。
     ある日南野さんに転ばされてけがをして保健室に行った時、手当てをしてくれた白衣の先生に特別な感情を持った。彼女は理科の教師だった。

     理科の授業ではいつも彼女に視線を向けていたが、すぐに同じように彼女を見つめている人物に気がついた。名前も覚えていない男子生徒だった。
     その後二人は、先生を間に同志のような関係になった。

  • 中学校のクラスになじめない結城瞳
    とくにランクの高い南野さんには小学生のときから嫌われている

    洋風の印象的な顔立ち、シングルマザーとうわさされるいつも白衣の人見先生とかかわりができ、理科準備室に行ってみると、同じクラスの正木くんが先生と向かい合っていたのだった

    3人は金曜日の放課後、理科準備室ですごすようになる

    白衣、花言葉、洋菓子、絵画、そして名前...さりげなく配された小道具が“私”と“友だち”と“家族”をあざやかに描き出す

    『ぼくたちのリアル』で第56回(2015年)講談社児童文学新人賞を受賞した作家の『十一月のマーブル』につづく第三作

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著者プロフィール

1984 年、埼玉県生まれ。武蔵大学経済学部経営学科卒業。東京都在住。『ぼくたちのリアル』で講談社児童文学新人賞を受賞し、 2016 年にデビュー。同作で児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞フジテレビ賞を受賞。2019年には『ゆかいな床井くん』で野間児童文芸賞受賞。そのほかの作品に『十一月のマーブル』『理科準備室のヴィーナス』『レインボールームのエマ』『トリコロールをさがして』『しかくいまち』など。

「2021年 『ジャノメ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

戸森しるこの作品

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