- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062206747
作品紹介・あらすじ
少数精鋭、短期決戦をモットーとするホストクラブの店長、白鳥神威。いつも通り歌舞伎町から帰った彼を待ち受けていたのは、見知らぬ赤ちゃんだった!育てることを決意した神威は、IT社長・三國孔明と一緒に、クラウドファンディングで赤ちゃんを育てることを思いつく。試練を前にして逃げることは、カリスマホストの本能が許さない。ITで日本の子育てを救えるのか!?男たちが日本の育児の変革に挑む、新時代のイクメン小説!
感想・レビュー・書評
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かつて文科系トークラジオLifeによく出演していた海猫沢めろんの作品。喋るメロン先生はよく聞いていたが、その作品は実は初めてだった。が、予想以上に面白かったし、いろいろと考えさせられた。ホストがクラウドファンディングで子育てをする話。そしてそのように育てられた子供がやはり人間らしく何かを取り戻すように成長していく話。感動したし、すがすがしくもあった。メロン先生の人間に対する希望のようなものを感じる良い作品だった。しかしキャラづくりが面白い。
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小説で別世界を持ちつつ、子育てをすることにした。
時代の変化を感じさせつつ、永遠のテーマも描いてる、というかんじがして、よかった。
おすすめです。
過去も、いまも、死だけはぼくのものだ。それさえあれば、ぼくは生きられる気がする
この台詞は、深いと思う。 -
ホストさんが主人公の小説って、初めて読みました。
カリスマホストが、ひょんなことから赤ん坊を育てることになるのだけど、その育て方が斬新。
現代的な手法を取り入れながらも、そこに反発する人や、問題点など、共感者だけでなく、主人公サイドにご都合主義的な感じではなく、現実的な展開で物語が進む。
世界観が一貫していて、後の方で出てくるウェーイには笑ってしまいました。
こんな世の中になったら幸せかもしれないし、傷つく人もいるかもしれない。
視点が偏っていないので、子供がいる人・いない人、子供が好きな人・そうでない人など、色々な人にオススメできる、ハッとさせられる本です。
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歌舞伎町カリスマホストがマンションの部屋の前に捨てられていた子どもを育てる話。・・・かと思ったら、育児描写は全くなく、仲間とクラウドファンディングで子育て費用の出資を求め、SNS炎上を利用しメディア出演、そのまま現代の子育てについて世間に疑問を投げかけるという話。ちょっと冗長な会話文や描写を除けば、ショートショートのような世界観ではある。
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カリスマホストがクラウドファンディングで見知らぬ赤ちゃんを育てる、というあらすじだけで、おもしろそうだと思いました。実際に読んでみても、主人公のホスト白鳥神威の、前向きで自分が大好きなキャラクターがおもしろくて、好きになりました。
しかし、ただおもしろいだけでなく、新しい子育てやプライバシーなどについて考えさせられるような、さらっと読めるなかに重いテーマがあります。 -
2018.3.13読了。
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変わったモノを読めたなぁ、という読後感でした。
歌舞伎町のホストクラブの店長が、ある日家の前に「よろしくお願いします」との手紙と一緒に置き去りにされた赤ちゃんを育てることを決意し、子育てにクラウドファンディングを活用する…という凄まじい展開の小説です。
本著には上記の表題作「キッズファイヤー・ドットコム」とその6年後を舞台にした「キャッチャー・イン・ザ・トゥルース」の2作が収録されていて、前者はナルシストなホスト文体、後者はマセた子ども文体(まだこっちのが普通)と結構な高低差です。
個人的には、前者を読み通した段階では文体は面白いものの正直何が何だか良くわからなかったのですが、全編読み通したことで言いたいコトがちょっとわかったように感じました。(後者もストーリー展開はなかなかに急ですが。。)
しかし、ホスト文体が強力すぎて毒気に当てられたような…。冒頭から大量の名詞がページを埋め尽くし、ホストクラブの謎に意識が高いやり取りが、普段意識しないような場所をくすぐられているような気分になります(笑
「今日も生まれるな・・・レジェンドが」とかもう。
著者はホスト経験もあるようで、それっぽさを保ちつつも現実離れした描写はお見事だなぁと思いました。 -
子供の面倒は親が見るべきである、などという常識はくだらない。いい意味でもっと無責任になって、育てられる人間に任せてしまえばいいーー子育てを端から見ていたときはそう思っていた。だが、当事者になってみて初めてわかった。この責任は誰かと分け合えるものではない。なぜそう考えてしまうのか、自分でもわからない。 (99)
「リスクをとらなくては心は強くならない。計算にあわなくとも、魂の輝きがその方向を目指せというなら従うべきだ」(94)
「他国の子供への援助が悪いとは言いません。でも、考えてみてください。あなたの隣の子供はもしかしたら同じように、いや、それ以上に不幸な子かもしれないんですよ。愛などといった曖昧な言葉ではなく、お金で救われる子はいるんです」 (113)
「君は子供が愛の結晶だと口にした。しかし、それは、愛のない家庭に生まれた人間にとっては、自分の存在を否定されるような暴力的な言葉だ」(118)
「ガキってのは、理想と現実を合致させられると信じている青臭いやつのことだと世間は思ってる」(略)「俺に言わせるとちがうね。理想と現実は合致させられる。その力を持っているやつだけがずっとガキでいられる。そうじゃないやつらは、ガキの皮をかぶった大人になるしかないんだよ」(145)
「考えてみると、人間は誰しも誰かからお金をもらっているわけで、誰ひとりとして自分でお金を作ったわけじゃない。人のお金じゃないお金なんてないのだ」(154)
笑いと遊びは善悪を超えたところにある。人は退屈な正義よりも面白い悪を見たがるものだ。
「どうやったら、たのしいことと、いいことがおなじになるのかな」
ぼくはその問いに答えられない。たぶん、今の社会にも。(169)
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現実の社会現象を糧に、ただのニュースで終わらせないために、刺激的なフィクションをかなり計画的に書き上げた、といった印象を受けた。前半は、保育園不足や子育ての孤立の問題が中心に、後半では、高齢者が問題が中心となって話が展開していくが、今の社会システムについて考える大胆なフィクションに、読む手がとまらなくなった。読みやすいから、中高生くらいから読めるのでおすすめ。 -
GACCOH小説読書会で読みました。
本気なのか、からかっているのか。批判的なのか、肯定的なのか。理想的なのか、現実的なのか。悲観的なのか、楽観的なのか。
そうした二項対立のどちらにも決定しがたいバランス感覚で書かれており、見事。