青空に飛ぶ

著者 :
  • 講談社
3.70
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本棚登録 : 160
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062207096

作品紹介・あらすじ

2015年10月。中学2年生の萩原友人は、伯母の住む札幌を訪れる。それはいじめられる日々からの束の間の逃避であった。友人はひょんなことから伯母の勤務する病院に神風特攻隊の有名人・佐々木友次が入院していることを知る。
いじめの苦しさから逃れるため、自殺を試みるも思いとどまった友人は、伯母の勤める病院に向かい、佐々木の病室を見つける。佐々木は9回特攻に出撃し、9回とも生還したのだという。特攻隊と佐々木に関心を持った友人は、古本屋で『陸軍特別攻撃隊』を手にする。そこに書かれていたのは、敵艦への体当たりという任務を負った万朶隊の物語であった。

感想・レビュー・書評

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  • 昔の戦争時代と現代のいじめそれぞれの描写。とっても重い内容。でも、学べることはたくさんあった。この作品のポイントは「同調圧力にいかに抗うか」だと思う。周りが正しいと言っていることとは逆のことをやるというのは、とても勇気と意志が必要。
    表題が「青空に飛ぶ」。結果的に、主人公の友人くんが新しい環境に、希望をもって羽ばたいていく結末でホッとした。

  • 読むのにこんなにパワーいる本、あります?

    本の感想とはいえないけどどうしても書いときたい。

    酷いというより残酷なイジメのシーン。
    これはイジメの酷さを把握させるために導入部で必要なだけよね?と思ったら、どんどん酷いいじめを挟み込んでくる。
    シンドイ。
    こちらも吐きそうになる。
    今のイジメってこんな風なの?

    イジメを受ける側、主人公の両親の立場になっても辛いけど、
    ここには書かれていない、イジメている子の親がこれを知った時、どんな気持ちになってどんな行動をおこすのか…ふと考えたら
    胃がギュッと握り潰されるような気持ちになりました。
    本編には全く関係ないけど。

    イジメはなにも解決されてない。
    イジメている子達にはなんの救済もない。
    そして、イジメられていた友人がいなくなった教室からは
    また新しい生贄がでるのかと思うと、指先が痺れるほど恐ろしい。

    でも読んでよかった。
    頑張ったよ…

  • 友人の受けていたいじめがとにかく酷くて、ものすごく辛い読書になりました。
    友人のパートはフィクションとの事ですが、どこかでこのようなことが起こっているのかもしれないと思うと、胸が苦しくなります。

    親は気づけないものなのでしょうか。
    親には言いたくないものなのでしょうか。

    我が子のその時代をなんとか無事に通り過ぎた親の立場として、あらゆるいじめがなくなることを祈らずにはいられません。

    生きてさえいれば、いつか良いことはある。
    友人が最終的に死を選ばずにすんで本当によかったと思います。

    特攻のパート、他の書物でも読んでいましたが、陸軍の特攻の話は初めてで新たな知識として、いい体験となりました。
    戦争という不幸な出来事も、今後起こしてはいけないと思います。

  • しんどかった。
    最初は、特攻のほうの宣伝文に興味を持って手にしました。
    でも、衝撃だったのは主人公の生活のほうでした。

    戦時中の状況や感情は正直想像もできないけれど、いじめのシーンは本当につらくて直視できず、本を何回もとじたり、飛ばして読んでから戻ったりして少しずつ進めていくしかなかった。読むのやめようかと思ったくらいだった。
    結局加害側は、被害側が死んでも逃げても特に変わらない。しまいには武勇伝のように当時を語り、平然と社会に出て結婚して子をもうけたりするんだろう。理不尽な上司もそう。その時々の多数派の声もそう。機能しない組織もそう。思考停止して、他者を攻撃することで自分を正当化して生きてる。

    逃げて生きよう。
    自分で、考えなくてはいけない。
    親も教師も、時には友と思う相手も的外れなことを言う。
    時には裏切る。
    時には本気で、見当違いなことを問題にする。

    そんなのに構っている時間はない。
    寿命がつきるまで、どう考えどう生きるか、考えよう。

    友人(ともひと)が自分で行き先を決めたことにとても爽快感があった。友次さんに会いたいと行動できたところ。飛び出して死ねなくてでも知りたいと歩み続けたところ。自分で南の島への転校を決めたこと。全部大きな財産になる。いじめていた側や保身体質の学校が無理に変わる結末じゃなかったことが、逆に生きていくことへの道標になっていたように思えました。

    軍隊に身を置いてなお、同調圧力に流されない。
    引きずられるように仲間が死んでいく中で、考えて、意見して、行動した。そのうち、理解してくれる人もいた。

    佐々木さんは聡明で、強さをもち、自分を持ち、腕を磨いていた。
    生きながらえたからこそ味わった苦しさもあったことでしょう。
    本を通してでも、佐々木さんに出逢えてよかったです。


    ちなみに主人公が選んだ鳩間中学校。
    実在するんですね。
    詳しくは調べてないですが、これも、選択肢。
    生きよう。

  • 元特攻隊員の佐々木友次さんの話をはじめて知りました。一度は死亡で上に報告してしまったのだから、(訂正することはできない)次は死んでこいというメチャクチャな言い分がまかりとおるのは戦時中の話だけではなくて、現在もなんだろう。

  • 2018.3.20-

    いじめのシーンは本当に読むのが辛かった。
    学校の対応、先生の言葉に愕然とした。
    最後は学校側やクラスメイトも変わるのではという仄かな期待も、現実はそうではなかった。

    9回も特攻を生き抜いた佐々木友次さんも、きっとこんな風に地獄を耐えてきた。
    友人くんは佐々木さんに会えたこと、『陸軍特別攻撃隊』を手にしたことに、運命を感じる。

    寿命は自分で決めるものではない。
    という佐々木さんの言葉。

    あなたが生き抜いたことには意味がある。しなくてはならないことがある。だから生き抜いてください。
    という岩本大尉のお父さんの言葉。

    多くの子ども達に読んで欲しい、知って欲しい本だった。

  • 鴻上アニキの作品は舞台書物を問わず好んで見てきたが今回ばかりはなんでこんな胸糞悪い話を書いたんだろうと正直読むことを止めようかとも思った。
    いじめのシーンはエグすぎて正視に耐えずそれ以前にいじめと特攻がなぜ同列に扱われるのか全く理解出来なかった。しかし最後まで読んで始めてアニキの意図することがわかった。
    それは死ぬか逃げるかどちらかしか選択肢がなく自分の力ではどうすることも出来ない状況に陥ったときには「逃げて生きろ」と言う強いメッセージだったのだ。
    敗戦の屈辱と引き換えに取り戻した平和はいつの間にこんなに捻じ曲がってしまったのだろう…悲しくてとてもやりきれない

  • 読んで良かった。実在した特攻隊員の方の話も良かった。

  • 皆さんが書いているように、読むのがつらい話でした。
    いじめが解決して終わるのではなく、逃げて終わるのが、かえって真実味があった。
    その後、このクラスでは別のいじめが始まっているのだろうか…

    札幌に住んでいながら、佐々木友次さんが札幌の病院で亡くなったことや、当別町にお墓があることを知らなかった。

    折りしも今日は終戦記念日。
    合掌

  • とても読みやすい作品。戦争という理不尽な世界を生き抜いた男性の強さを感じた。ほぼノンフィクションというのは現代を生きる私にとって信じがたい。辛い時また読みたい。

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著者プロフィール

著者等紹介
鴻上尚史[コウカミショウジ]
1958年8月2日生まれ。愛媛県新居浜市出身。早稲田大学法学部卒業。劇作家・演出家・エッセイスト・小説家

「2023年 『ヘルメットをかぶった君に会いたい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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