Ank: a mirroring ape

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 278
レビュー : 46
  • Amazon.co.jp ・本 (482ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062207133

作品紹介・あらすじ

2026年、多数の死者を出した京都暴動(キョート・ライオット)。
ウィルス、病原菌、化学物質が原因ではない。そしてテロ攻撃の可能性もない。
人類が初めてまみえる災厄は、なぜ起こったのか。
発端はたった一頭の類人猿(エイプ)、東アフリカからきた「アンク(鏡)」という名のチンパンジーだった。

AI研究から転身した世界的天才ダニエル・キュイが創設した霊長類研究施設「京都ムーンウォッチャーズ・プロジェクト」、通称KMWP。
センター長を務める鈴木望にとって、霊長類研究とは、なぜ唯一人間だけが言語や意識を獲得できたのか、ひいては、どうやって我々が生まれたのかを知るためのものだった。
災厄を引き起こした「アンク」にその鍵をみた望は、最悪の状況下、たった一人渦中に身を投じる――。

江戸川乱歩賞『QJKJQ』で衝撃の”デビュー”を果たした著者による、戦慄の受賞第一作!
我々はどこから来て、どこへ行くのか――。人類史の驚異の旅(オデッセイ)へと誘う、世界レベルの超絶エンターテインメント!!

感想・レビュー・書評

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  • 多数の死者をだした京都暴動(キョート・ライオット)。その原因はウイルスや病原菌、テロでもなかった。。
    時系列を細々と切り替え、チンパンジーを主とした霊長類の研究から読者をだんだんと核心に迫っていくという、凝ってはいるけど読みやすいつくりでした。はじめから暴動ありきのお話なので読んでいて非常に剣呑な雰囲気をひたすら感じざるを得ないという。。
    ただなんというか、ちょっと無理やりな真相じゃないのかな?という。フィクションとはいえさすがに無理があるような。遺伝子にそこまで「我を失って意図しない行動をさせる」みたいな呪いのようなものがあるのかっていう。そこまでぶっ飛んじゃうとどんなに大層な理由づけが物語内でされても読んでいてちょっと冷めてしまう。急にB級感が漂ってしまった。

  • ほんとに、ジェノサイド読んだ時のような没入感でした。ほんとかどうかわかりませんが、実に説得力あって、終始ドキドキでした。ラストはややあっさり目ですが、それだけに余韻が感じられました。しかし、前作と全く違う作風で驚きです。次作も今から楽しみです。今やってる猿の惑星の予告編が、落ち着いて見られなくなりました。

  • 研究所から逃げ出した一匹のチンパンジー。
    その叫び声が京都の街にパニックを引き起こし人々は原始的な衝動に駆られた暴徒と化す。

    ミラリングの理論がいまいち理解できなかった!でも鏡像を、他者→自分→他者と重層的に認識していく過程は面白い。
    パニックサスペンスとしてのスケール感も十分。

  • 人工知能と人類の進化/ 京都暴動のきっかけとなったチンパンジー/ 類人猿と猿の違いなど非常に為になった/ 京都暴動に至るまでを、主人公に係わった登場人物たちの過去で振り返っていく/ stsat配列、土星通のトラウマ/ 主人公にとって運がよすぎる、というか物語の進行に都合の良いキャラクターがぽんと登場しすぎる気はするが、物語の本質はそんなところにはないと言われればそんなものかと思う/ じゃあエンターテイメントじゃないなと言う気もするが、そんな崇高なことが書いてあるとも思えない/ 鏡に気をつけろ/

  • ——映っているのは自分であり自分ではない。自分ではないが、自分であり、だが自分ではないが自分であり——

  • 面白い。
    思わず、引き込まれ、読んだというより読まされた。

  • ダ・ヴィンチプラチナ本 2017年11月

  • "友好度は知能と比例する" つまり誰かと揉めたり喧嘩するのはバカだということ。

  • 動物 猿人類 ヒト 共通に持っているもの「恐怖」
    コミュニケーションの成り立ちは何か?
    SFかと思いきや、SFなんだけど、最終的には神話へと戻る

  •  著者お初。快作でした。
     昔からの興味(ホモ・サピエンスの進化の謎)と昨今の関心(AIの高度化と限界)とが、いい具合に絡まった近未来SFサスペンスで、非常に楽しめた。
     著者が前作で第62回江戸川乱歩賞を受賞したとか、本作が大藪春彦賞、吉川英治新人賞を獲ったとかは読んでみようと思った理由ではなく(先日『マンモスのつくり方』を読んだ影響は多少あったかもしれないけど)、本屋のサイエンスコーナーには、なぜ我々(ホモ・サピエンス)だけが唯一の生き残りなのかの新解釈の本が次々に出ている昨今、この分野は古くて新しい実にホット話題と思うところ。そんな古くて新しい神秘にAI(人工知能)の発展の切り札として、人が「言葉」を獲得した謎、「鏡像認識力」というヒトと類人猿の分岐の謎を絡めた点が、非常に斬新だ。

     その昔、『ネアンデルタール』(ジョン・ダーントン著 1996年)を読んだ時も、実に楽しかった。あの頃は、雪男の謎ではないけど、現世に彼らがまだ生きているという仮説でお話が進んだが、今や、ホモ・サピエンス以外の新人類は絶滅したという説が有力で、なぜ彼ら(本書ではロスト・エイプと称される)は亡びたかという謎解きが主流か。 本書も、その論旨、その謎解きで展開される。
     絶滅の謎に加え、ヒトとチンパンジーの遺伝子の差は1.8%に過ぎない等々既知の情報、京都大学霊長類研究所に代表される日本における霊長類に関する総合研究の実績を踏まえ、舞台を京都としたあたりも面白い。「京都暴動(キョート・ライオット)」という騒ぎが引き起こされるのであるが、嵐山、太秦(映画撮影所)、金閣寺、哲学の道、鴨川等々、落ち着いた古都の風景と血なまぐさい騒動の対比が視覚的にも楽しめ舞台設定として巧い。そんな表面的なこともであるが、洋の東西で検体である類人猿に対するアプローチの違い、その違いによる発想の違いも京都ゆえに説得力が増すのであった。曰く、

    「カリフォルニアの研究者が一頭のチンパンジーを個として観察するような場合でも、京都の研究者はそこに群れの世代の心理を見てとろうとする。それも禅の直観のような、じつに深いレベルでだ。」

     科学と相いれないような禅の思想も、舞台を京都に置くことで、すんなんり腑に落ちる。主人公はじめとする科学者たちは、”西洋哲学と東洋思想のハイブリッドされた思考”を用いて、霊長類の研究を通じ、進化の謎、言語能力獲得の謎に迫りつつ、ヒトのルーツを探る700万年、それ以上の壮大な歴史をたどっていく。
     そしてその研究が、当該研究所KMWP(KYOTO MoonWatchers Project)の出資者である人工知能で財を成した事業家の、AIの限界(AIは言語の模倣できても真の意味で使うことができない)を超える成果に結びつくかもしれないという期待、経済的な損得勘定も絡んでいて現実的でもあり納得のいくものだった。
     
    「みずからのルーツがわからないものに、未来が思い描けるだろうか?」

     これが主人公はじめ、研究に携わるKMWPの科学者、および出資者の共通の思いだ。

     そんな夢のある設定が、とある個体による暴走で「京都暴動」という悲劇を生み、物語の後半はバイオレンス・アクションとなってゆく。時を前後しながら、その”暴走”に至る原因の推測、あるいはそもそも当KMWPの計画が発足した経緯、主人公たちの過去が描かれていく。
     キーワードは「土星通りのトラウマ」と暗号化された「StSat反復」というDNAの塩基配列の謎と、自己鏡像認識という大型類人猿にしか見られない反応だ。KMWP内で主人公と出資者と、もう一人の科学者だけで極秘裏に進めていた研究が、不幸なアクシデントの積み重なりで暴動へと発展し甚大な被害をもたらすことに。後半は、これでもかこれでもかと繰り広げられる京都の観光名所各地での惨劇の描写にあてられ、エンターテイメント性は高まるが正直、分量としてはこの半分くらいでも良かったんじゃないかと思われるところだ。それぞれ各所での暴動やそこで見られる行動パターンなどが後々の伏線となるのならまだしも、どちらかというと「絵」になるということで紙面が割かれていた感がなきにしもあらずだ。

     その他、いろいろ強引な仮説、無理やりなコジツケもてんこ盛りで(ナルキッソスの話、8分19秒の謎)。 故にヒトは何故、言語と思考を手に入れたのか?という究極の謎は、当然、本書内の仮説に過ぎないままとなるのであるが、鏡像認識による己と鏡の中の己であるが己でない存在の理解を極めたヒトは、本書の仮説の暴動の引き金となる警戒音(アラーム・コール)に冷静でいられたからこそ生き残れ、ロスト・エイプたちはその進化に及ばなかったが故に絶滅してしまったと理解したが、そうではなく、まだまだ我々の中にも絶滅への引き金が潜んでたのか?!

    「おれたちは過去にStSat反復をどこまでも増幅させ、仲間を殺し続け、無限の殺戮の果てに閾値に達したStSat反復が、あたかも特異点が爆発するように状態を変えて、言語の母胎となるまでを生き延びた。他のヒト族は、進化の途中でたがいを殺戮して死に絶えたのだ。」

     閾値に達したStSat反復も言語を生み出し何かに変質したのではなく、リスクを孕んでいる(故に京都暴動が起こった)ということだったか? そのあたりが、ちょっと判然としなかった。

     また、暴動の端緒となった一頭のオスのチンパンジー、「Ank」(ギリシャ語の鏡から命名)の存在は、何か特別だったのだろうか? 駆け足で読んで読み飛ばしたか? そもそも、そんな重要な役回りのAnkであるが、あまりに偶然に捕獲され、特に理由もないまま施設に引き取られ、なぜ特異な能力を持ち発揮するに至ったのかという背景説明が特になかったのが、ひっかかる部分か。
     ただ、どんどんドライブのかかるストーリー展開と、過去と未来を前後させて描く物語構成の妙で、そんな引っ掛かりを意識させずに読み進めていけてしまうところが、エンタメ作品としての本作品の良さでもあったかもしれない。

     究極のところの説明が実は省かれていた(かもしれない)という欠点はあるのだけれど、自分の興味と、進化論をエンタメ的仮説を軸に、周辺の情報も楽しく興味深く読ませてくれたということで、良かったです。

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著者プロフィール

1977年福岡県生まれ。2004年、佐藤憲胤名義で書いた『サージウスの死神』が第47回群像新人文学賞優秀作となり、デビュー。2016年『QJKJQ』で第62回江戸川乱歩賞を受賞。

「2017年 『Ank: a mirroring ape』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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