- Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062207157
作品紹介・あらすじ
評判の扇屋「俵屋」の後継ぎとして大旦那の養子となった伊年は、秀吉が開催した醍醐の花見で見た屏風絵や、出雲阿国の舞台、また南蛮貿易で輸入された数々の品から意匠を貪る。彼が絵付けをする「俵屋」の扇は日に日に評判を増していた。伊年が平家納経の修繕を頼まれ描いた表紙絵は、書の天才、本阿弥光悦の興味を惹く出来となる。伊年は嵯峨野で出版・印刷事業を始めた幼馴染みの角倉与一より、光悦が版下文字を書く日本語書物の下絵を描かないかと持ちかけられる。その料紙を手配するのは、これまた幼馴染みの紙屋宗二。かくして本朝の美と叡智の粋を結集した「嵯峨本」が完成した。次に、伊年が下絵を描き、光悦が書をしたためた「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」が完成。京の知識人はもちろん、伊年自身もその出来に驚嘆し、涙を流す。その後光悦に鷹峯へ共に移住しないか問われた伊年は、嘗て観た阿国の舞台や来し方を脳裏に浮かべ、誘いを断り、俵屋を継ぐ決意をした。
京都国立博物館120周年記念 特別展覧会「国宝」クーポン付き!
カバー:国宝「風神雷神図屏風」(所蔵):建仁寺(俵屋宗達)
表紙:重要文化財「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」(所蔵):京都国立博物館(本阿弥光悦/俵屋宗達)
口絵:国宝「平家納経 願文見返し『鹿図』」(所蔵):嚴島神社(俵屋宗達)
以上三点をカラー掲載した豪華造本!
感想・レビュー・書評
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伊年が作品を送り出していく背景に絡む歴史的な動き、状況も把握でき、読んでいる時よりも読み終えたあとに更に伊年自身の感心、伊年の作品への感心そして関係するその他の登場人物(光悦等)への関心が大きくなっていた。それは作品の出来上がる環境、思いをこの小説から感じることができたためだと思う。宗達の記録はないと知っていても、作品への感心を持つためには読んでおきたい1冊。
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もともと歴史小説大好きでよく読んでたけど、まったく触れてこなかった文化史の話。
慶長という戦国から江戸のまだ安定しない情勢下の京の町を、自分が彷徨っているような感覚を覚えるほど文章からイメージが湧き上がってくるし、俵屋宗達その人の感性が、絵を見なくても伝わってくるのがすごい!
下巻もたのしみ -
有名な、「風神雷神図屏風」を描いた、俵屋宗達のお話。実在した人物をとてもリアルに描いてあるので、「ノンフィクション??」と思ってしまう。ちょこちょこ入る、現代人への解説のせいもある。小説として入り込むには、この解説部分はちょっと邪魔に思うときもある。
しかし、読むうちに、やはりこの解説のおかげで、楽しみながら知識が身につく(この解説がある程度間違っていないのならば)ことがわかってくる。
そもそも、この有名な絵が、誰によって描かれたかもわかっていなかった読者A(私)の頭にも、時代背景、作者俵屋宗達の生い立ち、人となり、当時の他の様々な美術品の知識や、行事、人々の暮らしぶりなどがすーっと入ってくる。
上巻にあたる、この「風の章」では、宗達の前半生が語られる。 -
一芸に秀でた人は時に、"○○馬鹿"と呼ばれることがある。
一つの事しか視界に入らないのだ。
京の扇屋「俵屋(たわらや)」の大旦那・仁三郎は、跡継ぎたる息子がいない。
ある日、本家の末息子・伊年を養子として連れて来た。
何時間でも飽きずに絵を描き続ける集中力、長じるうちには、扇に図案を配するセンスが目利きの客に喜ばれるようになった。
しかし、絵を描く以外はぼんやりとして、とても商家の若旦那としてやって行けそうに無い。
一番番頭の喜助は行く末を案じるが、大旦那は自分の見立て通りであったと喜ぶばかり。
戦国の世が終わりかけ、解放されたエネルギーが、文化や芸能に向かう時期だった。
出雲阿国との不思議な縁、平家納経の修復作業、本阿弥光悦とのめぐり合いを通じ、伊年の世界は徐々に開かれていく。
友人、角倉与一が印刷所を起こしたことから、本阿弥光悦の書、紙屋宗二の料紙、俵屋伊年の下絵の三位一体の芸術が大人気を博し、伊年は次第に家業の扇の仕事からは遠ざかる。
しかし、光悦とのコラボレーションは、絡み合い、刺激し合いながら独りではたどり着けなかった芸術の高みへと伊年を押し上げてくれるものであった。
仁三郎が見出し、光悦が花開かせた、伊年の才能と言ってもいい。
彼にとっては無くてはならない出会いだったのだ。
だが、やがて邯鄲の夢から醒める時が来た。 -
京の町の色使いまで見えて来そうな作品。一気読み。
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読みづらい作品かと思ったが、本阿弥光悦、俵屋宗達の作品作りなど、わかりやすく書かれていて、続きが気になる。
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こんなに読みやすい歴史小説は久し振り!
感想は下巻で。 -
俵屋宗達の半生を描く。
ふだんはちょっと抜けてるのに、絵に対する没頭ぶりはすさまじい。伊年が魅力的。
ひとつひとつの案件が、絵師としての課題をつきつけ、それを乗り越えることで、新たなステージへと進んでいく。新しい芸術が生まれるわくわくをともに楽しめる。
紙屋や豪商といった幼馴染も描くことで、絵以外の切り口があり、広い視野の物語になっている。
下巻も楽しみ。 -
俵屋宗達が ローマ使節団に入るまでの話
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まるで、講談でも目の当たりにしているような。頭の中を一節もニ節も響き渡る。雷の章が楽しみだ。