風神雷神 雷の章

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 323
感想 : 60
  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062207164

作品紹介・あらすじ

万能の天才・本阿弥光悦からの鷹峯移住を断り、京で「俵屋」を継いだ宗達は、堺の商家の娘・みつを娶り、二人の子を生した。都で一番の扇屋の主人として忙しく働いていたある日、名門公卿の烏丸光広が前触れもなく俵屋を訊ねてくる。烏丸光弘の手引きで養源院に唐獅子図・白象図を、相国寺に蔦の細道図屏風を完成させる。後水尾天皇から法橋の位を与えられ、禁中に立ち入れるようになった宗達は、さらなる名品を模写する機会を得、その筆をますます研ぎ澄ませる。日本の絵画に革命を起こした関屋澪標図屏風、舞楽図屏風、そして風神雷神図屏風――世界が憧れた謎の絵師はいかにして生まれ、没したのか。美術界きっての謎が斬新かつ丹念に描かれる。

京都国立博物館120周年記念 特別展覧会「国宝」割引クーポン付き!

カバー:国宝「風神雷神図屏風」(所蔵):建仁寺(俵屋宗達)
表紙:重要文化財「舞楽図屏風」(所蔵):醍醐寺(俵屋宗達)
口絵:重要文化財「白象図」(所蔵):養源院(俵屋宗達)
以上をカラー掲載した豪華造本!

感想・レビュー・書評

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  • 伊年から宗達への改名、烏丸光宏との出会い、貴重な作品との遭遇、習得していく機会が宗達の人生に上手く絡まっていて、事実かどうかではなく、展開に説得力があった。
    宗達の嫁・みつの心の広さで、光悦の娘・冴、出雲の阿国がそれぞれの思いをもって、宗達の死後、集まるところも想いの絡み合いに心があつくなった。
    宗達を記録した史料がないと後日知るまで、実話であると信じていた。ストーリーの構成が素晴らしい。

  • 主人公の俵屋宗達も、周囲の人物も、とても魅力的に描かれています。とにかく、見てきたかのように詳しいです。そして、優しい。
    もちろん見てきたわけではないのだから、想像力もずいぶん働かせていると思うけれど、作者の方は、相当な知識をお持ちなのだと思います。
    一方で、知識を持たない読者に対する、気遣いも相変わらず。現代人には頭でわかっていても感覚的にわかりにくい、身分や当時の事件やイベントについても、現代人に合わせて、取り入れやすい解説をしてくれるのです。
    公卿たちの事情、大きなお寺の事情など、部外者には窺い知ることのできない話も興味深いです。

    物語としても、新しく登場した人物によって、平穏な生活に変化が生じ、非凡な才能をますます開花させる軌跡が、見事に描かれていて、一気に読んでしまいました。

    本物を見に、久しぶりに京都に行きたくなりました。

  • 字が大きいので、結構あっさり読み終わった。
    風神雷神図、めっちゃ有名ですが、
    作者である俵屋宗達がどういう人なのか、
    全く知らなかったので、
    「へぇ、こういう生い立ちかい」と勉強。

    才能あるだけじゃ駄目。
    その才能を見抜き、活かし、
    多少乱暴でも引っ張り上げる力のある人と出会えるかが
    芸術家にとっての分岐点だということが分かる本。

    だから、タイトルは『風神雷神』というより、
    『俵屋宗達』にすべきだよねぇ。

  • 上巻を読み終わって、本阿弥光悦の娘「冴」とどうなるのか気になってググって見たけど俵屋宗達の生涯って不明なのね。
    生没年すら判らない。
    つまり此の小説は殆ど創作な訳だ。
    それにしては上手い。
    上巻はボンヤリした若旦那から、覚醒するまで。
    人付き合いも苦手そうに見えるのに幼馴染に恵まれ、本阿弥光悦に導かれ烏丸光広に更なる高みに引き上げられる。
    絵を描きあげるきっかけ、工夫、制作秘話が著名な絵ごとに詳細に描かれる。
    凄いね、これ。全部著者の想像なんだよ。
    下巻は覚醒後の目覚ましい活躍ぶり。
    奥様は「みつ」なんだけど、端整な美人との描写がある「冴」との仲も気になり、此の時代の著名人「出雲の阿国」とも怪しい。
    古今東西、仕事のできる人はモテるのだ。
    音楽を文字にするのは難しい。絵を文章にするのも難しい。作者はあまり微に入り細に入り絵の様子は描写していない。雰囲気だ。
    絵を知っていれば尚よし、知らなかったら見に行かんかい、って感じだ。
    私は幸い、昨年京都で開催された「琳派展」で幾つか現物を観た。展覧会の目玉になっていたのは本作の表紙にもなっている「風神雷神図」だ。俵屋宗達、尾形光琳、酒井抱一の3作品が一堂に会するあり得ない光景だったのだが、一際人だかりがしていたのが、俵屋宗達作品だ。本作でもエンディングを飾る屏風として出てくる。宗達に関わった女3人の此の絵に対する三者三様の捉え方が凄く面白い。
    上巻の「冴」の謎の行動が此処で、こんなところで明かされる。「みつ」は長年連れ添った夫婦らしい捉え方、「阿国」は芸術家らしい捉え方。醍醐寺で始まり醍醐寺で終わる。
    最後の一行、

    ーーーほんま、ええ絵や。

    が深い余韻を残す。ホンマにええ話や。

  • 京の扇屋・俵屋の若旦那・伊年は、店を継いで現実の世界に生きることを決意する。
    先代が用いていた号をもらい、宗達と名乗ることになった。
    『俵屋宗達』の誕生である。

    古くから店に伝わる意匠や図柄を職人たちに公開し、良い扇絵を描いてもらう。
    職人の絵付けはすべて宗達が目を通し、店に出すものを決める。
    人付き合いは苦手だったが、店表にも立ち、店主の義務として会合に出席し、必要ならば頭も下げた。
    扇だけではなく、絵の注文も受け、扇面屏風や絵巻、貝絵、カルタなど、ちょっとお洒落なものも、戦乱が収まった開放感が広がる京の人々には良く売れた。
    宗達は、商人としても成功したのである。

    しかし、才能を見出す目というものが、彼を市井の中には放って置かなかった。
    本阿弥光悦に代わって、宗達の中に眠るものを引き出す者。
    烏丸光広という、自由すぎるお公家さん。
    「絵には"ええ絵"と"つまらん絵"があるだけ。わかる人にはわかる」
    という光広の言葉は、まさにこれに尽きる。

    あらゆる貴族の屋敷に眠る名品・門外不出品を宗達に模写をさせ、挙句は禁中に出入りする資格「法橋(ほうきょう)」の位まで手に入れさせ、宗達の頭の中の引き出しにネタをせっせと仕込むとともに、難しい条件の絵の注文を持ってきては、試練を与えた。

    烏丸光広の存在なくしては、宗達は新しい扉を開けることができなかっただろう。
    時々は、光悦との仕事もする。
    「新しい発想」を恐れる幕府が、安定と引き換えに不自由な法を次々に定め、鎖国を進め、窮屈な世の中になってしまう瀬戸際の時代。
    まさに、黄金の時代だった。

    天才は一代限り。
    一人、また一人と滅していくラストはやはり寂しいが、時を置けば、必ず新しい天才が現れることを、後の時代に生きる私たちは知っている。
    天才の世界に遊ばせてもらう手引きとなる、わくわくする本だった。

  • 表紙を見てわかると思いますが,風神雷神を描いた俵屋宗達のお話です。
    このお話を読むまで宗達は絵師だと思っていたので,絵師との違いを初めて知りました。
    もう絵師でいいんじゃないかと思うのですが,そこは色々しがらみが・・・
    難しい物です。
    上下巻をどんどこ読めるほど,魅力的な登場人物ばかり
    本が手元にないので,登場人物の名前がぼんやりしか出てこず感想がかけず・・・
    すぐ書かないとですね。

    以前建仁寺でレプリカの絵も見たことがありますが,このお話を読んでから見るともっと感じるものがあるのじゃないかと
    建仁寺は龍の天井画もすごい迫力だし,石庭もいい感じでオススメです。
    そうだ 京都に行こう

  • 終わり良ければ全て良しではないけれど、爽やかで明るくてしみじみとした幕の降り方が全てかなぁという気がする。桜が咲き楽の音が微かに聞こえる、うららかな春の日に、宗達渾身の遺作である(史実であるかどうかはわからないけれど)風神雷神図を、宗達と関わりの深かった3人の女性が眺めている場面の心地好さ。それまでに、3人の女性がそれぞれ素敵に描かれてきているので、温かで気持ちの良い終わりになっていると思った。絵に魅せられた宗達の一生の締めくくりにふさわしいクライマックスだと思った。

  • 本阿弥光悦と出会って開花した才能は、雷の章では、烏丸光広との交流でスケールアップします。俵屋宗達は謎の人物ですが、巧みな切り取り方で史実のように描かれ、メキメキ腕を上げていくのが楽しい。宗達ファンなので多くの作品を見てきましたが、作中に依頼の経緯や宗達の意図が描かれていて(真偽はわかりませんが) 説得力がありました。関屋澪標図屏風の横から見ると現れるという須磨・明石の騙し絵の話も、是非見たくて興味津々です。

  • 2021年7月西宮図書館

  • 俵屋宗達の一生 絵に生きた!
    いつ描くのかと思いつつ読んでいたら最後の最後に風神雷神がやっとでした!光悦と烏丸光広が宗達を 光悦の娘冴が宗達に鬼をみて、父親を連れに来たと思っていた!宗達の妻のみつは光広が夫をどこかに連れていくようで怖かった!阿国には宗達に二つの顔がある!風神雷神は宗達の自画像に想えた! 芸術の途方も無い感性がある人が時代を創ったのかな!

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著者プロフィール

1967年生まれ。2001年、『黄金の灰』でデビュー。同年、『贋作「坊っちゃん」殺人事件』で第12回朝日新人文学賞受賞。『ジョーカー・ゲーム』で吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門を受賞。他著に「ジョーカー・ゲーム」シリーズの『ダブル・ジョーカー』『パラダイス・ロスト』『ラスト・ワルツ』や、『新世界』『トーキョー・プリズン』など。

「2021年 『ゴーストタウン 冥界のホームズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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