満月の娘たち

  • 講談社
3.50
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本棚登録 : 100
レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062207324

作品紹介・あらすじ

まるで神話のようだ。新しい時代の母娘の。  
──梨木香歩氏
「読者をどんどん惹きつけていく、さすがのストーリーテリングで、この子どもたち三人の冒険と友情に引き込まれ、彼女らが愛おしくて愛さずにはいられなくなります。
母という存在の呪いと祝福、慈しみと憎悪──母と娘は永遠に誰よりも生々しく近く、そして誰よりも遠い存在なのでしょう。」

足りないってことばをママはあたしによく使う。
あんたは言葉が足りない、とか素直さが足りない、あとは血が足りないってのもある。
ママの中ではあたしは足りないものだらけらしい。
とにかく、あたしの歯が足りないせいですきまがあいてしまい、矯正が必要になるかもしれないということだ。
そうしないと十年後にはかみあわせの不具合で色々とよくないことがおこるかもしれず、それをママはとても気にしていたから、今日歯医者さんに行かなかったことにも腹をたてているらしい。
でもあたしにとってはたいした問題じゃない。
歯が何本か足りないまま成長したってそれがどうだっていうのだろう。それはあたしの未来でママの未来じゃない。
─本文より。

どこにでもいる標準的見た目の中学生の私と、オカルトマニアで女子力の高い美月ちゃんは保育園からの幼なじみでママ同士も友だちだ。
ある日、美月ちゃんの頼みでクラスで人気の男子、日比野を誘い、3人で近所の幽霊屋敷へ肝だめしに行ったのだが……。

幽霊屋敷探検を発端におこる様々な出来事を通じ母と娘たちの葛藤と成長とがリアルに描かれる。話題の母娘問題を独特の観察眼でとらえた感動作。

椋鳩十賞、小さな童話賞大賞受賞作家、「頭のうちどころが悪かった熊の話」の安東みきえ氏、初の長編小説。
(中学生漢字以上にルビ)

感想・レビュー・書評

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  • 中学校1年生の志保は、親友の美月と美月の想い人日比野と3人で近所の空き家に肝試しに行ったところ警察に捕まってしまった。家主である繭に謝罪に行ったところ、幼なじみで同級生の祥吉と出くわし、彼が、ミニチュア作家である繭のファンでよく手伝っていることを知る。自由人の繭に興味を持った彼女は、それからも繭の家を訪ね親しくなっていく。あの空き家は繭の実家で、最低限の修理をして移り住むつもりだという。次第に実家へのこだわりを強めていく繭に志保たちは不安を感じていく。




    *******ここからはネタバレ*******

    母親に「何もかも足りない」と思われていると感じる志保。
    娘は自分のキャリアと引き換えだったと思われている美月。
    大家族で仲がいいけど、父親は失踪中の祥吉。
    自分の自由を束縛されたのが嫌で吐いた暴言が、母に言った最後の言葉になり、亡母が悲しみのあまり空き家に留まっていると感じている繭。
    思春期の親との葛藤を空き家を巡るエピソードを中心に描いていく。

    親の愛が重い、ウザいと感じる年ごろの娘たちの言動に、母としては傷つきますが、身に覚えもあるので、文句も言えません。
    この心理の掘り返しはとっても見事ですが、さりとてそう簡単に解決もしないので、この物語も空き家の崩壊で幕を閉じてしまいます。
    きっとこの先にもいろんな葛藤があって大人になっていくんでしょうね。

    空き家の幽霊の存在が、ちょっとこの物語をファンタジーにしていますが、かえって歯切れが悪くも感じました。
    特に繭はもう大人なのに、母親の呪縛から逃れられていず、それが中学生たちの不安感を増大させる役割になったのではないかと思うからです。

    児童書ですから、なんとか彼女だけでも、何となくではない親からの自立を希望として持たせてほしかったと感じます。

    ウザい母親へのきつい切り替えしの言葉が載っているので、子どもには薦めたくないですね(笑)。←冗談です。

  • 中学一年生の思春期の子どもが抱く親への強い反抗の気持ちと、それを辛辣に伝える台詞が、私自身も子どもを持った今、思った以上にこたえる。大人のちょっとした言動を子どもはよくみてるんだなあ。自分自身を振り返ってもそうだけど。

    幽霊屋敷での探検と、自由人に見えるが実は彼女も亡くなった親との葛藤を抱える繭との交流も、最後は伏線が回収されて、話の筋も面白かった。

    クライマックスでは、やっぱり子どもではなくて大人が子どもをしっかり救ってあげられて、カタルシスがあった。

    美月のお母さんの下記の台詞を、私自身も忘れずに、毎日一生懸命家庭をつくっていきたいと思った。

    「もしも私なら 、最後に大嫌いって言われたってどうってことないわ 。子どものついた悪態なんてなんでもない 。覚えてもいないわ ! 」
    「子どもが自分のことをどう思ってるかなんて 、気にしてらんないの 。そんなひまはないのよ 。きっとあんたのおかあさんも娘の言葉に傷ついたりしてないと思うわ 。だからだいじょうぶ 。なんにも悲しむことなんてない 。」

  • YAものではよくある親との関係がうまくいってない系の本。ちょっとファンタジー。

  • 思春期の子どもって、考えることが純粋と残酷が入り混じっていて、でも時々周りの大人たちよりもしっかりしていて…。危ういストレートさが、大人の代わりに行動や言葉にできる、10代の特権なのかなと少し羨ましくもなりました。自分の思春期を思い出しながら、共感したりちょっと懐かしくもなりながら読み終えました。
    あの白い影は繭さんを守ろうとしていたのだと、大人になった私は思いました。 優しい物語。

  • 最後まで一気に読みたくて時間を忘れてしまった。がみがみうるさい母親に対する気持ち・・・・改めて、まさに同じ年齢の子たちを持つので、親としての関わりについて、色々身に染みるところがあった。明日以降、気を付けていきたい。

  • 中学1年生の志保は同じ満月の日に生まれた親友の美月と、美月が片思いしている日比野と三人で近所の蓮池の傍に建つ古い洋館へ肝試しに出かけるが、警官にみつかり親を呼び出されお目玉を喰らってしまう。洋館の管理を任されている不動産屋の息子で志保の幼馴染兼クラスメイトの祥吉に付き添われ、志保は家主・繭の部屋へ謝罪に訪れる。繭はミニチュアのドールハウスを作る職人で、洋館に母親を残し独立していたが、その母が死去したため洋館に戻ろうと準備していた。繭と仲良くなった志保、美月、祥吉の三人は屋敷の掃除等を手伝うようになるが・・・。

    ヒグチユウコさんの表紙絵に魅かれて手に取ったのだけど、児童書というかYAというかティーンむけなので大人にはやや物足りない内容だったかも。娘と母親との確執、もっと毒親系の話かと思っていたのだけど、娘たちが反抗期の年齢で母親に反発するだけで、結局、お母さんはちゃんと娘たちのことを愛してくれてる、お母さんの辛さを娘たちも理解する、という安心の着地点でした。でもまあ、10代の頃ってこんな感じよね。主人公たちは中1だし。

    志保と美月はそんな感じだが、ある程度大人なのにまだ母親の呪縛から逃れられていない繭のほうはなかなかヘヴィーなのかもしれないけれど、そこを幽霊話でホラーファンタジーにしてしまったのは、良かったような悪かったような。祥吉くんの素朴さ素直さは癒しでした。

  • 子どもを一番傷つけるのは母親だ、というのを聞いた時、妙に納得したのを覚えている。
    娘を想って、心配して口にした言葉や、なんの気なしに放った言葉がまるで呪いのように娘を縛ることがある。
    多分母も祖母の言葉に傷ついたことがあったんだろうなあっと今は思う。
    もし私が母になることがあるのなら同じ轍は踏まないようにしたいものだが、やっぱり傷つけてしまうのだろうなあっと思うと怖い。
    この本の内容とは逆行してしまうけど、天使が聞いてくれたなら、私はきっと断るだろう。
    でもそーゆーことを考えるのはこの思春期特有のものなのかしら?とすると私はそこから未だに成長できてないのかなあっとため息。
    でも魔物な親は増えてるし、自然は季節ごとに牙を剥くし、エネルギー問題も食料問題も、汚染水問題も解決する気配もないし、治安も人権もなにもかも危機に瀕してるし、
    どうやったらこんな世界に生まれてきたいと思えるのだろう?
    それでも繭さんに熊井さんがいてくれて、祥吉に美月に志保と出会えてよかった、とそう思う。

  • 同じ病院で同じ日に産まれ志保と美月。その二人と保育園が一緒だった祥吉。
    思春期真っただ中のあのややこしい時期の物語。

    親との軋轢。反発。あるね、思春期には。
    大人の繭と知り合うが、そこにも母と娘の軋轢があった。

    素敵な物語でした。
    志保と美月、祥吉はどんな大人になるんだろうなぁ。

  • 会話が多くて軽快で、文章も分かりやすくワンセンテンスが短いので、たいへん読みやすい。あまり本を読まない子どもでも読める。
    テーマは母と娘の絆だが、いさかい、行き違いがあってもそれほど重くないし、あまりドロドロにもならず、後味も良い。娘たちの友情が爽やかなので、安心して読める。
    中学生の主人公の志保と友人の美月、大人の繭さん、三組の母娘が描かれるが、最終的には母の愛が感じられるように描かれている。
    思春期になり、娘が母を批判的に見るようになるのは、子どもが成長したからで、ある意味喜ばしいことなのだな、と思った。

    金井美恵子の『小春日和』を思い出したりもした。小説としては金井美恵子の方が上手いが、中学生に読ませるならこれくらいが分かりやすく、毒が少なくて良い。

  • 母親の気持ちがよくわかる。

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著者プロフィール

安東みきえ
1953年、山梨県生まれ。、『天のシーソー』で第11回椋鳩十児童文学賞、「ふゆのひだまり」で第11回小さな童話大賞(毎日新聞社主催)大賞を、「いただきます」で同選者賞今江祥智賞を受賞。その他、「夕暮れのマグノリア」「頭のうちどころが悪かった熊の話」など著書多数。

「2017年 『満月の娘たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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