銀河鉄道の父

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (418ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062207508

感想・レビュー・書評

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  • 雨ニモマケズ、の最後の一文は盛大なオチだと随分昔から感じていた(「……って、自分がそうだってんじゃないんかーい!!」)ので、それが実の父親の言葉として文章化されて壮快な気分。

    タイトル通り、宮沢賢治の父親が語る、賢治を中心とした彼の子どもたちの人物譚。
    この父親がいい。昔の田舎の人間にしては先進的で話が分かり、しかし母親的とも言える湿っぽい愛情を子どもたちに向けるのを抑えきれない。

    賢治の童話をこよなく愛し、これまで幾度となく岩手に行くほど傾倒していたため手に取ったが、これは宮沢賢治の人生の記録という側面もさることながら、貫くテーマは「親の不器用な愛」。
    久しぶりに会った溺愛する息子の、急激に成長した姿に、好感ではなく「なんだかただの男になった気がした」と不快感をもつなど、醜いとも言える愛情を赤裸々に描いている。

    また、賢治がトシに抱く情を、よく言われる崇高な兄弟愛を越えて肉欲をも感じさせる描写を交えるなど、世間で勘違いされているような「聖人君子」然とした賢治像にしていないところがいい。
    いや、ある意味では彼は確かに至高の頂を目指す求道者だったのかもしれないが、得てしてそういう存在は身内や身近にいる人間に図々しいほどの迷惑を無意識のうちに掛けているものだ。
    自分や自分のごく近しい人間から搾取したものを、多くの人に分け与える。
    その矛盾を、最も本人と分かちがたい存在である「親」の視点からつまびらかにした本作。
    賢治の作品のキレイゴトにちょっと違和感を覚えている人は是非読むべきである。
    決して賢治を好ましい人物として描いてはいないのに、読み終えると彼に親近感を覚え、ちょっと好きになっているはずだ。

  • あまり宮沢賢治は読まないし、銀河鉄道の夜に至ってはよくわからない。っていう感想だったものの、そうか、宮沢賢治がすごいのは父の多大なる愛だったのだな。と、思うと同時に、こんな素敵な父はいまの世の中にも少ないんじゃないかと思った。

    母親のような深い愛を持った父。

    この父を持った故に苦労したこともあっただろうと、思うことと、すごい父を持ってしまったことへの負い目もあっただろうに。

    直木賞を取ったようだけども、私には若干読みづらいのと先に進まないほど若干退屈な昔の人の日記的要素満載だった。へー宮沢賢治のねぇ。くらいの感じ。

    まぁ、このくらいの親子の衝突は誰にでも、、、とかね。

    さほど珍しい話でもないのか、な?

  • 先入観なしに読み始めた。宮沢賢治の話だったのか。金持ちの父が賢治を溺愛して甘やかしているにしても、限度がある。しつけがなってない。賢治が悪ガキたちと 草に火を点け、それが燃え広がって数件の家を全焼させる家事になってしまった時、父に「知らねす」と賢治は嘘をついた。父はそれが嘘だとわかっていたにもかかわらず、不問に付す、と決意してしまう。「こんな小さなことで賢治の未来に傷をつけるなどということは、(考えられん)」だって?! ありえない。もし、その家に人がいたら焼け死んでいたかもしれない。「小さなこと」どころか、とんでもない大罪なのに、しらばっくれれば済んでしまう? 親として、そこは厳しく(体罰という意味ではないが)叱らなければならないはず。 
    私は憤りを抑えられなくて、これ以上読めなくなった。

著者プロフィール

1971年群馬県生まれ。同志社大学文学部卒業。2003年、第42回オール讀物推理小説新人賞を「キッドナッパーズ」で受賞しデビュー。15年に『東京帝大叡古教授』が第153回直木賞候補、16年に『家康、江戸を建てる』が第155回直木賞候補となる。16年に『マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代』で第69回日本推理作家協会賞(評論その他の部門)、同年に咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞。18年に『銀河鉄道の父』で第158回直木賞を受賞。近著に『ロミオとジュリエットと三人の魔女』『信長、鉄砲で君臨する』『江戸一新』などがある。

「2023年 『どうした、家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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