本物の読書家

著者 :
  • 講談社
3.10
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  • (2)
本棚登録 : 208
レビュー : 18
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062208437

作品紹介・あらすじ

川端康成、サリンジャーなどのテキストをモチーフに、小説としての企みもふんだんに盛り込んだ、注目の若手作家の第二作。

感想・レビュー・書評

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  • なにかで書評をみて気になって。中編がふたつ。
    「本物の読書家」は、川端康成から手紙をもらったことがあるという大叔父から、彼を老人ホームまで送り届けるという体でその真相を聞かされるつもりだった青年が主人公。
    しかしその鈍行列車の車内で、関西弁のミステリアスな男に絡まれて--という話。
    川端やカフカといった文豪のエピソードに導かれるように、本物の読書家とはなんなのか?と考えさせられました。
    「事実は小説より奇なり」に対するアンチテーゼ。その事実の構成員に本物の読書家は決して含まれない。本物の読書家は事実の中に棲まうことを拒否する。言うなれば異邦人なのだ。

    「未熟な同感者」は、とある文学ゼミで集まった4人の大学生のほろ苦い青春のようなもの。
    難解な論文や文献の引用が多く、まるで私まで教授の講義を聴いているようでした。
    こちらの題材はサリンジャー。書くことってなに?読むことってなに?という読書の本質を問い質してきます。
    「読む」とは「書く」と同じ強度でそれを自動詞として体験すること。うーんむずかしい。
    大学生4人の人物造形が魅力的でした。

  • 2篇収録されていて、もう1篇の『未熟な同感者』の方が私は面白かったです。構成とテーマと書き方どれも新しく、作中の講義内容がとても興味深かった!ほぼ全部を引用したいほどです。講義のテーマの中心人物となるのはサリンジャー。有名すぎて読んでいないので(有名な作家を読むのは何だか恥ずかしい気分になります)これを機に読んでみたくなりました。

  •  現代小説だね、完全な同感者は。
     本物の読者家も、何かどっかに行ってしまった。
     語り手は、ちょっとよじれた。

  • 『本物の読書家』
    大叔父を茨城へと送る道中の電車内で、「わたし」は田上と名乗る関西弁の男と出会った。
    田上は「わたし」に文学的アプローチを仕掛け、大叔父の過去に迫っていく。大叔父と川端康成の関係。そして田上の正体。

    『未熟な同感者』
    ゼミでサリンジャーを学ぶ四人の学生、そしてコミュニケーション能力の低い先生。
    女子学生は男子学生に恋をする。もう一人の女性学生はそれに気づく。先生は授業中でもトイレに向かい、自慰をする。「私」は脳内でサリンジャーの文章を想い連ねる。

    ---------------------------------------

    『本物の読書家』について
    田上は偶然乗り合わせたわけではなく、大叔父の売却した古書に興味を持った人が直接話を聞きに来た、ということだったのだろうか。
    わざわざ「わたし」の書いている読書サービスの記録を予習し、念入りにブログを読み込んで、そんな回りくどいことをする必要がどこにあったのかがわからない。

    田上の行動は謎のままでもいいけど、大叔父が川端康成の『片腕』の原作者(ゴーストライター?)だったかも、という話は結末が知りたかったな。

    『未熟な同感者』について
    読むことがなんだ、書くことがどうした、サリンジャーの戦争体験がどうのこうの言っても結局は射精の快感には敵わないということだったのだろうか。
    それを理解している間村季那だけが、教授たちの射精と引き換えに単位を稼いだということなのか。
    そんなこと言いだしたら、世界中のほとんどの人が性行為の結果生まれてきているわけだし(人工授精等の人は性行為ではないけど)、トイレの個室のなかでは皆性器をさらけ出している。そういうプライベートな部分と、読むことや書くことを同列に考えていいのかな、とは思う。
    けれど、自分もサリンジャーの小説を読んだのに全然読み取れていなかったことに気づかされて、読むこととは一体何なんだ、という気持ちにさせられた。

  •  
    ── 乗代 雄介《本物の読書家 20171124 講談社》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4062208431
     
    (20210112)
     

  • 2021年1月11日読了。

    電車に乗る主人公と大叔父、そして乗り合わせた男。
    3人で展開される、三谷幸喜的とも言える1シチュエーションもの。
    “読書家”の定義や使い方が面白い。
    乗り合わせた男も独特で、「エロ事師たち」のスブやんを思わせる喋り口。
    「川端康成からの手紙」を入り口と引っ張りに独自の展開を見せる個性的な世界観。

    ●P19

    ●P65

    ●P104

    ●P121

  • 文学論議の合間に、大叔父と川端康成に関係はあったのか、というミステリー仕掛けが挟まれ、さらに会話をする3人の関係性が一言一言で変わっていく。一気に読んでしまいました

  • 文学論と物語が巧みに並行して進む。
    難解なのに一気に読めるのは、作者の筆力か。

    読む、書くという行為について
    深く考えさせられる。

  • 【本物の読書家】
    純文学らしさに囚われておらず自由な構成、展開が魅力的だった。ミステリー要素もあり、大叔父の秘密が結局本当なのかがわからないところがまた良かった。一番印象的なシーンは髭が植えられた本がでてくるところ。

    【未熟な同感者】
    サリンジャーを中心とした評論と女子大生の日常が交錯するような作品。古典文学からの引用をふんだんに盛り込みながらも人々の会話とかはやけに現代的だったりするその組み合わせのギャップに新鮮さを感じた。オリジナリティがすごい、それは著者の膨大な読書体験に支えられているであろうことが伝わってくる。

  • 緊張する

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著者プロフィール

1986年、北海道生まれ。法政大学社会学部メディア社会学科卒業。2015年、「十七八より」で第58回群像新人賞を受賞し、デビュー。2018年、『本物の読書家』で第40回野間文芸新人賞を受賞。著書に『十七八より』『本物の読書家』『最高の任務』『ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ』がある。

「2021年 『旅する練習』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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