森家の討ち入り

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 55
レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062208840

作品紹介・あらすじ

『神崎与五郎の妻』
ゆいは5年前まで江戸詰めの夫と目黒の下屋敷で暮らしていた。ところが騒乱のせいで津山森家が改易、夫とは離縁を余儀なくされる。一度は実家へ戻ったゆいだったが、再び嫁ぎ、今は江戸作事奉行の妻となっていた。前の夫―神崎与五郎の消息は分からぬまま、日々淡々と過ごしていた。そんなゆいのもとに、謎の人物から、森家の家紋が入った扇が届けられた。一体誰が、何のために。そして前の夫は――。

『和助の恋』
国家老の密命を帯びた茅野和助は仙台の死去に伴い、津山森家の家督を継ぐことになった式部衆利のもとへ急いでいた。その道中、何ものかに襲われる。そこに通りがかった、赤穂浅野家の陣屋に住まう郡奉行・吉田忠左衛門一行により助けられる。そこで和助は手厚い看護を、忠左衛門の娘・紗代から受ける。

『里和と勘平』
里和は津山森家存亡の危機を阻止するため、御犬小屋に忍び込んだ。そこで出会ったのは、かつて思い合っていた横川勘平、その人だった。遂げられれなかった思いが再燃する二人。だが、今は立場があまりにも違う二人がとった道は――。

他2編書き下ろし収録。

感想・レビュー・書評

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  • 赤穂浪士の中に、何故津山森家の旧臣が三人もいたのか?
    この作品を機に、赤穂四十七士を調べてみたら、播磨赤穂藩の藩士は半分程度らしい。
    赤穂事件についてはいまだ謎の部分も多いし、興味深い。
    ただこの作品についていえば、赤穂事件は添え物程度の描かれ方で、主要テーマは津山森家のお家騒動。
    よくある権力争いの話かと思えば、そこに柳沢吉保の名前がちらほらと出て来て一気にキナ臭くなる。
    諸田さんらしく男女の情愛を絡め、時にミステリータッチに、時にサスペンスモードに、最後はそれぞれがそれぞれの道でなすべきことを成していくという、苦くもスッキリした描き方。
    お家騒動により改易された森家が、やがては松の廊下事件でお取り潰しとなった赤穂藩を引き継ぐという皮肉な運命も興味深い。
    ただ勘平の言う『森家が、(ご公儀に対して)いったい何をしたのか』という部分が最後まで分からないままだったのが消化不良。
    せっかく多視点から描いたり、時系列を遡るという凝った構成だったのに、上手く活かされなかった感じが強い。

  • 備中森家のお家騒動にまつわる様々な出来事と、その後の赤穂浪士の討ち入りに加わった三人の武士の物語。
    森家の騒動がわかりにくくて、登場する人々の気持ち等よりもただ出来事を説明する事に終始した感がある。
    とにかく感情移入出来なかったなぁ。

  • 森家に焦点を当てた「討ち入り」。知らないことばかりで面白かったです。
    諸田さんの作品に出てくる女性はおれんさんのように色っぽい人もいれば、旦那様を支える武家の妻…様々な立場の人がいますが、みんなそれぞれに魅力的です。

  • 江戸時代、岡山県の北、中国山脈の近くに、美作国津山藩があった。津山藩はわ織田信長の小姓で有名な森蘭丸の一族、森忠政が築いた藩。
    元禄8年に幕府から中野村に犬小屋の築造することを命じられた。この工事、財政的にも大変な負担で、このことが要因のひとつになり、森家は改易になる。その森家に仕えていた3名の家臣が赤穂藩にとりたてられ、5年後にの討ち入りに参加する。徳川幕府の、自分たちが務めた2つの藩への理不尽な仕打ちに、許しがたい気持ちがあったのではないかという視点で書かれた討ち入りの話。
    地元(作州は津山)の人間としては、面白いと納得。

  • 野犬の収容施設「お囲い」で、同じ作者の「犬吉」を思い出した。そういえば,あれも赤穂浪士討ち入りの日の話だった.

    第一話、間に合わなかった饅頭を主従が泣きながらやけ食いするところが、おかしくもあり、悲しくもあり、なんだか印象に残る。

    改易された森家の旧家臣が討ち入りに加わっていた,という史実から作られた物語なのだろうか.作家の想像力に感服する.

  • 小説現代2017年1、8、9月号に掲載の3編に、プロローグ、エピローグとなる2編を書下ろし、2017年12月講談社から刊行。四十七士の中の3人は改易した森家の家臣。3人をそれぞれを1話ずつで描いたもの。いずれも、理不尽な幕府に立ち向かう武家の男とそれを助ける女の話で、浅野家での話は殆ど出てこないという、予想もしなかった内容。読み終えてやっと内容とタイトルの意味がわかりました。

  • 赤穂浪士に津山森家の人間が3人もいたとは知らなかった。その事実と津山森家が持つ幕府との因縁もあり、物語の結末に描かれる事実に驚いてそして題名に納得した。

  • 初出 本編とも言うべき義士の3話は2017年の「小説現代」、その前後の2話は書き下ろし。

    赤穂義士の中に、隣藩の津山森家が改易されたために浅野家に仕官した3人がいたとは知らなかった。

    序章とも言える「長直の饅頭」は、津山森家十八万石が改易となった後に二万石の大名として残った分家の藩主となった長直が、江戸で「お犬様の囲い小屋」建設に関わった元藩士3人が討ち入りに加わったと知って、音信の許されない彼らに「森家が彼らを誇りに思っている」と伝える工夫として、預かり先の大名屋敷に家紋入りの饅頭を大量の饅頭を差し入れようとする話。

    「与五郎の妻」は昨年出た『決戦!忠臣蔵』にも収録されたものを読んでいたが、何度読んでも感動する話。
    江戸で「お犬様の囲い小屋」建設で江戸にいた神崎与五郎は、改易の沙汰を知って籠城するため妻の”ゆい”を離縁して津山へ向かい行方が知れなくなった。”ゆい”は分家に残留した藩士に再嫁していたが、5年後に商人姿の与五郎が突然別れを告げに現れ、翌朝討ち入りに加わった与五郎たちが門前を通ると知って、”ゆい”は子供たちを連れて門前に建つ。

    「和助の恋」は、江戸へ向かう途中で病に倒れた次期藩主の元へ行こうとして刺客に襲われ重傷を負った茅野和助が、赤穂藩の郡代に助けられ療養するうち、伊登と恋仲になる話。

    「里和と勘平」は、両親を亡くした少女里和が藩主に引き取られて隠密として育てられ、後継の藩主の側女として送り込まれて、幕府側に付こうとした藩主を殺害する。幼なじみの横川勘平は「お犬様の囲い小屋」を巡る幕府側からの陰謀に里和と協力して抗するが、幕府の隠密に人質にされた生母を失う。
    幕府と大名の裏での抗争のサスペンスもので、作者得意の女性の活躍と苦悩が描かれる。

    その後長直は因縁の赤穂に転封されて、塩の特産物化に力を尽くして将軍から「日本一の塩」との褒詞をもらい、藩主になって正室を迎えるために離縁した”お道”と再婚し赤穂で没した。養子を次期藩主にする仕事を果たした”お道”は赤穂を訪ね、長直は塩で幕府に討ち入りを果たしたのだと感慨にふける。

    作者らしい読み応えのある時代小説。

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著者プロフィール

諸田玲子

一九五四年静岡県生まれ。上智大学文学部英文学科卒。九六年『眩惑』でデビュー。二〇〇三年『其の一日』で吉川英治文学新人賞、〇七年『奸婦にあらず』で新田次郎文学賞を受賞。著書に『お鳥見女房』『あくじゃれ瓢六』シリーズのほか、『恋ほおずき』『恋ぐるい』『思い出コロッケ』『ともえ』『王朝小遊記』『波止場浪漫』『帰蝶』など多数。

「2021年 『元禄お犬姫』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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