されど愛しきお妻様 「大人の発達障害」の妻と「脳が壊れた」僕の18年間

著者 :
  • 講談社
4.12
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本棚登録 : 384
レビュー : 54
  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062208888

作品紹介・あらすじ

発達障害妻と脳梗塞夫の愛と笑いと涙の実話!
41歳で脳梗塞で倒れたものの、懸命なリハビリの末に見事現場復帰したルポライターの鈴木大介さん。鈴木さんが高次脳障害を受容するまでの行程を描いた記事は大反響を呼びました。 そんな鈴木さんの闘病生活を支えた「お妻様」。鈴木さんと「家事力ゼロな大人の発達障害さん」だった「お妻様」が悪戦苦闘しつつ、「超動けるお妻様」になるまでの笑いあり、涙ありの日々をお届けします。

感想・レビュー・書評

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  • 一時間かけて書いた渾身レビューが消えてしまい、超ブルー。気を取り直して...。

    この本はルポライターの鈴木大介さんが書いた愛しき‘お妻様’に向けての今までの懺悔とラブレターの書ですね。
    お妻様の発達障害だからかもしれないからこその優しさやユニークさ、そして発達障害の影に隠れていたオトコマエさにメロメロです。

    書いてあることは壮絶なのに鈴木さんの軽妙な筆致と、いい意味で感傷的な文章で読みやすい。

    自分や周りに発達障害があっても無くても、どなたにも読んでほしい本です。こういう本がベストセラーにならないかな~。

  •  脳が壊れた著者と、その妻である大人の発達障害の彼女。
     簡単に言おう。誰彼かまわず読んで欲しい本だ。

     ライターの著者が発達障害を持つお妻様と出会い、ともに暮らすものの、障害のある彼女のペースに合わせることは出来ず、家事のほとんどをやりつつ、仕事を詰めに詰め、脳梗塞で障害が残る=脳が壊れるまで無理を続けることとなる。そして脳が壊れた著者は、初めて「やらないんじゃない、出来ないのだ」と気づく。そこで妻が言う「やっと私の気持ちが分かったか」と。
     そうして脳が壊れた著者と、お妻様でどうやって暮らしていくのかを試行錯誤しつつ、そして「一緒に生活するのが楽しい」とお妻様に言われるようになる。
     どうしようも無い奇跡の上に成り立った幸せ。

     私は「どうして出来ないの?」と言ったことがある。やれば出来ると思っていたから。また「なんで出来ないの? 馬鹿なの?」と言われたこともある。言われたときは(馬鹿って言って出来るようになれば楽だけど、言っても良くならないのに馬鹿だな)と思っていた。
     今まで、私はどれだけ人の成長する機会を奪ってきたのだろう。また、どれだけ奪われたのだろう。
     自分の不寛容さ拙速さについて、ほんとうに耳が痛い。けれども読んで良かったと思う。
     けれど、人はいつでも成長できる。そして生きることが出来ると力づけられる。すごい。

     この著者の本は「脳が壊れた」から読んでいるのだけれども、こちらの方が圧倒的に情緒に満ちあふれていて文章がみずみずしい。脳が回復したのだろうか。いや、むしろ成長しているのではないか。すごい。
     再読しよう。

  • 筆者が取材対象を社会的困窮者としていることもあって、ルポをよく読んでいた。そんな折、見覚えのある記者名で出版された『脳が壊れた』を見つけ、そんなまさかと驚いて早速読み、奥様のくだりを読んでさらに驚き、またまた筆者の記事を楽しみにするようになっていた私。ほどなくまた本書が出されたことを知って手にしてみた。
    自慢じゃないが、私はすぐに読んだ本の中身を忘れてしまう。なので自信がないのだけれど、ひょっとして三分の一くらいは『脳が壊れた』から引っ張ってきてるんじゃ?読んだことのある文章が結構あり、既読の本だったっけと戸惑ってしまった。どこかにコラムを書いていたのをまとめたということらしいので、元のコラムが同じってことなのか???ちゃんと確かめてないのでわかりませんが。
    そのようなこともあって、今回のテーマである奥様に関する成育歴やご実家については初めてだったが、それ以外ではどうもすでに知っている中身ばかりであり、期待していたほどの満足感はなかった。
    がしかし。発達障害そのものは、環境を整えるだけでかなりの部分をカバーでき、人並みに社会生活を営むことができる障害である、というか「障害」にしてしまうのは環境にその原因がある、と明記してくれているのは嬉しかった。
    そうなのですよ、皆さん。
    そして実は、発達障害を持つ人はとても魅力的な人が多いのです(とは筆者は書いてないけど私はそう思っているし、筆者もそう感じていると思う)。「障害」とは、受け入れる側、人とか社会とかにあるのであって、決してその当人の責に帰するものではない、ということを私もみんなにわかってほしい。だから、身近に障害のある人とかいないな~、関係ないな~と思う人にこそ読んでほしい。
    そして筆者と奥様の、深い愛に脱帽してください。

    蛇足。
    私は「定型発達」と覚えていたのだが、本書では「定形」となっている。誤植かなと思ったけれども、繰り返し使われているのでそうでもないらしい。ほんとはどっちが正解?

  • 最近、読んで、ついつい朝起きられないという点が触発されてしまっている本。

    大人の発達障害の妻を持ちつつ、自身も脳梗塞により高次脳機能障害になった鈴木大介氏の新刊。
    いわゆる大人の発達障害について主に書かれた本なのだが、それを描く著者が発達障害の疑似体験を高次脳機能障害によってすることにより、お妻様が過去繰り返してきた奇行とその裏側にあった苦しみをようやく身をもって理解でき、しかも、鈴木氏はどんどん障害が回復していってるもんだから、対処法を編み出してお妻様との関係がどんどん回復していくという「いやいやどんな魔法だよ」っつー話。

    個人的には「あ、普通の人って、この苦しみは感じないのか…」と、色々と学んだし、お妻様に共感する所もいっぱいあった。もちろん、働けている時点でお妻様よりずっと軽度の発達障害なのだと分かるが(お妻様の出版社バイト時代の記述があるが、さすがにお妻様レベルではなかった。最低限私は、会社員は出来ていた。…と思う。)

    鈴木氏は発達障害の家族、友人向けを意識して書かれているようだが、個人的には、①職場の管理職と②ボーダーライン上も含め、当事者が読むべき本ではないかと思った。

    ①は、結構マジに人材育成のヒントになる部分が多いと思う。発達障害の香りがしなくても、若者を育てる、教育するのは骨が折れるだろう。なんで常識が通じないのか?なんでやれと言ったことができないのか?思い悩むことはないだろうか?私はある。

    詳しくは本を読んでほしいが、「○○やっておいて」とざっくりつたえるのではなく、タスクを一つひとつ分解して、一度に1つ頼む。できたら順番にお願いをしていくというやり方。「子供じゃないんだから」と思われるかもしれないが、全体像が見えていない人間に「○○やっておいて」といっても難しいだろう。定形発達の人間であれば、もちろんそこまでクソ丁寧に教えてやらんでもいいかもしれないが、物を教えるということは、

    1)全体像を伝える
    2)全体像に至るまでの工程を1つずつ伝える
    3)工程の仕組みを伝える(なぜその順番である必要があるのか?)
    4)1つずつ達成させる

    ということが必要なのだと、教育者自身が自覚していれば、あとは、新人によって教授する段階を調節すればいいだけだろう。

    ②の当事者だが、これは、鈴木氏自身が定型発達者でありながら、後天的に発達障害を体験した上である程度の定型発達者に戻っているからだ。定型発達者と、発達障害者では、お互いの相互理解はたぶん永遠に無理だろう。と、この本を読んでよくわかった。

    著書の中で、レジでいくら出していいかわからなくなって、まるで店員さんや周りのお客さんが自分を急かしているような気になって、パニックになってどうして良いかわからなくなってしまった。という記述があった。

    私は、レジでお金をいくら出せばいいか、という経験をしたかどうかは忘れてしまったが、確かに、レジで、何かしらでまごついたときに、この世の終わりくらいテンパった記憶は確かにある。

    覚えているのは、どうしても欲しいゲームの商品名がどうしても覚えられなくて、店員さんにそのゲームソフトの予約をしたいのに、どうしても商品名が言えなくて、言えなくて…すごいテンパった記憶がある。
    マイナーなギャルゲーだったこともあり、もう恥ずかしくて、20年くらい前のことだが、あの時のことを思い出すと今でも喉の奥が乾く勢いの憔悴感を覚える。

    だから、世の中の多くの人は、レジでもたつくと誰しもパニックになると思っていた。が、どうも著書を読んでいると、人はそう簡単にパニックにならないらしい。私は今まで、店員さんや周りの人がパニックにならないように、目を合わせないように気を遣ったり、「ぜんぜーん、私あなたのこと全く待ってませーん、興味もありませーん」という空気を全開で出すように心がけていたのに…え、何、無駄な優しさだったんじゃねえの?と。(で、だいたいそういうのって伝わらなくて冷たいやつって思われて終わるんだけどね。ええ。ええ)

    そう、定型発達の人は、発達障害系の人が思う葛藤なんて全然感じていないのだ。本を読んで「それも定形の人は感じないのか…」とガッツリ発達障害当事者気分で読んでしまった。

    自分と、自分以外の人はこんなにも違うのだと、知れるいい機会となるので、ぜひ当事者の人も読んだほうがいいだろう。ということで、おすすめっす。

    ☆を4にしたのは、タイトルが発達障害の人に届きにくい気がしたから。愛しいとかどうでも良くね?と。まあ、そういうエッセイなんだろうけど、当事者に届く方が大切な気がするし、文体も面白おかしく読めるから、このタイトルじゃあ、ちょっと刺さりにくいんじゃないかなーということで。

  • 「脳コワさん」の本と一緒に読みました。
    こちらはより私的な面に寄せて書かれていて、
    コミックエッセイのような、ユーモアのある文章でとても読みやすく感じました。

    前半は少し内容に重みがあり、病気を経て、後半からの考察がすごいなと感じました。

    考察の1つに、奥様が理由があってのことでも、お母様から生活技術等を学ぶ機会を奪われることで、自己否定や無力感、生きづらさを抱えてきただろう苦しい経緯についてが、とても共感できました。

    スキーマ療法の書籍で、できない自分にしかなれないこと、というような例があったような気がして、その事も思い出しました。

    これからは、今は、ひとつずつ出来たことや、大丈夫だったこと、受け入れられたことを、上書きしていけたらいいなとあらためて感じています。
    そんな時、自分の中の小さい子供は安心して笑っている。そんなイメージが浮かびました。

    大まかに概要をまとめた本ではなくて、当事者の、病識の深い方の良い本があることが、どんなにありがたいか、感謝しています。

  • 「現代ビジネス」Web連載の記事で関心を持ったので、読了。Web版で読んだ時は、変わり者の妻を愛するいい話というふんわりした印象だったのだが、本書全体で読むと多少印象が変わる。
    結婚前からの話も含めると、妻のエピソードはかなり強烈。しかも本人が楽しいなら良いが、相当に苦しんでいた様子が描かれる。それを描く筆者も単なる観察者ではなく、時に加害者になる。反省したからこそ書かれたものではあり、軽妙な文体で全体のトーンもかなり緩和されているものの、ほのぼの系とは程遠い。
    また筆者自身も、かなり偏りのある人ではある。たとえば妻が家事を苦手と分かっていながら、自身が倒れるまで炊飯ジャーを買わないのは自分から見ると異様(p119)。家の片付けに求めるレベルも高そうだし、バイクへの強いこだわり、激務にも関わらず空き時間や収入を趣味に注ぎ込むなど、パートナーの人柄に関わらず、もともと生活を負荷の高いものにする傾向がある人のように思えてしまう。
    ただそれは、筆者のこだわるポイントが自分に理解できないものだからに過ぎない。筆者が脳梗塞で倒れて初めて自身のこだわりや想像力の欠如に気づいたように、自分にもまた偏りがあり、見えていないものがあり、ひとから異様に見える部分があるのだろう。その程度が大きくて困るものは障害と呼ばれ、本人と周りが受入れ可能なら個性と呼ばれる。障害があるのはあなたか、わたしか、両者を囲む社会か。

  • Twitterで紹介されていたウェブのコラムを見て、その内容が詳しく書籍化されていることを知り、購入。

    発達障害の妻を持つ著者が高次脳機能障害を負い、回復段階を経て妻の感覚を理解、お互いの関係を修復していくまで――という流れが、ライトな語り口で大変読みやすく書かれている。
    発達障害に限らず、体感できない他者の感覚を多少なりとも知りたいと思っていたので、著者の経歴から、その架け橋になってくれるかと思って読んでみた。

    実際の内容ではそういったことよりも、人と人とが関わり合う中で大事になることに重点が置かれている。
    発達障害の方にとってはより大切な要素なのだろうが、定型発達の人同士であっても大切にした方がいいなと思うことがとても多かった。

    なお、「お妻様」の実家の話も頻繁に出てくるので、親との関係に問題を抱えている人が覚悟なしに読むと、ちょっと辛くなる話題もあるかも知れない。
    (私がそうでした)

  • 障害の当事者になってしまった元健常者が書いた、障害者として生きづらさを抱えてきた妻への行為を懺悔する本。でもじめじめした文ではなく、明るさに満ちていて読みやすい。

    パートナーも私も、脳神経に関係する病を患っている。
    最近症状が良くなって、やれることが増えた結果、お互いに「まだ患っている」という感覚が抜け落ちていたことに気づかされた。
    パートナーのできないこと、私のできないことを、精神論や「できて当然、できないのは甘え」で片づけていた。
    私もパートナーを責めていたし、逆も割とあったと思う。
    「努力ではどうにもならないことがある」。
    そのことを肝に銘じつつ、お互いを支えあい、より心地よい関係を築いていけたらなと思った。

  • 障がい当事者同士のご夫婦の愛のストーリーであり、発達支援の超具体的事例集としても読める名著。社会を概念ではなく「参加するコミュニティ」と捉えた場合、そこでの障がいを小さくする無くすことは可能ではないか。そしてその取り組みの集合体こそが共生社会の実現になるのではないか。というメッセージには完全に同意する。なぜならぼくは障がい当事者と自分の間に障がいがない瞬間を何度だって経験してきているから。

    会社を辞めフリーランスになる決意をする著者に向けた「どんだけ貧乏でも一緒にいれる時間があった方がいいから私は嬉しいよ」というセリフをはじめ、お妻様のあふれる愛と美しいパーソナリティに涙が止まりませんでした。

    笑えるように面白く描かれてるんだけど感動が上回って涙でページが進まないシーンが多かったです。

  • 貧困問題等のルポを何冊か読んだ鈴木大介さんの本です。

    鈴木さんは脳梗塞由来の高次脳機能障害をもち、そのお妻様は大人の発達障害さんでした。そんな二人の出会いから今までの記録です。

    発達障害、最近よく聞くようになりました。ですが、いまいちわからない。高次脳機能障害については全く知識がありませんでした。

    お妻様は、いわば毒親育ち(その後お義母ちゃんもでてきます)で、リストカッターで、朝は全然起きてこなくて家事も全くしない…という方でした。
    それにいら立つ作者との日々も描かれています。なるほどこれは、いらだつな。と最初は思っていたのですが、後半になり作者が高次脳機能障害をもってから気づくお妻様の今までのできない理由(発達障害由来)などを見ていくと「苛だってしまって申し訳ない。」と思うのです。

    とっても共感したの作者が脳梗塞からの高次脳機能障害になってから、感情を抑えられないようになったところの描写と、病院の売店でお会計がうまくできずパニックになったところです。私もお会計といういつも何気なくしている行動が注意力、脳のワーキングメモリが落ちる体調不良の時はとても辛いものになるのです。混乱するし、冷や汗もかくしパニックにもなる。お会計だけではなく、純粋に数を数えられない状態にまでなることも私はあります。

    その時のことをお妻様に話すとき「情緒の抑制が利かず、呂律回らない癖に早口で噛み噛みにどもりながら話す僕」と表現されてますが、まさしく!!体調の悪い時の私そのまま!!早口だし、どもるし、噛みまくります。
    この辺を知ってからちょっとだけ高次脳機能障害を身近に感じました。

    高次脳機能障害が少しずつ良くなっていっても「当事者意識」を忘れないでいたいという作者に「ありがてぇ。」と思いました。私も体調のいい時もあの何もできなかった時期を忘れないでいたいと思います。

    作者が配偶者を「彼女様」「お妻様」と呼ぶのがかわいらしくて愛情あふれててとてもほっこりしました。

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著者プロフィール

1973年千葉県生まれ。文筆業。子どもや女性、若者の貧困問題をテーマにした取材活動をし、代表作として『最貧困女子』(幻冬社新書)などのあるルポライターだったが、2015年、41歳のときに脳梗塞を発症し高次脳機能障害が残る。当事者としての自身を取材した闘病記『脳が壊れた』『脳は回復する』(ともに新潮新書)が話題に。他にも、夫婦での障害受容を描いた『されど愛しきお妻様』(講談社)『発達系女子とモラハラ男』(漫画いのうえさきこ。晶文社)、当事者視点からの実践的な援助ガイドを試みた『「脳コワさん」支援ガイド』(日本医学ジャーナリスト協会賞受賞。医学書院)、当事者と臨床心理士との対話を記録した『不自由な脳』(山口加代子氏との共著。金剛出版)などの著書がある。

「2021年 『壊れた脳と生きる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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