アースダイバー 東京の聖地

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 64
レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062209441

作品紹介・あらすじ

2020年の東京オリンピックを錦の御旗に東京は大改造をされようとしています。レガシーを作ると言って、本物のレガシーを破壊していいのでしょうか?
築地市場の豊洲への移転が、決定しました。しかしアースダイバーは言っておきたいいことがあります。なぜ、築地でなくてはならないのか? 日本人と海の関係、古代から連綿と続く、市場の特別な機能、江戸時代から紆余曲折を経て現代に繋がる歴史……。築地という場所が孕んでいる聖地性が見えてきます。仲卸の果たす重要な役割、博物館に匹敵する海産物に対する深い知の体系。効率だけを考えた豊洲市場への移転はこの国の文化の大切な暗黙知を消滅させてしまいます。
2014年には新国立競技場のデザインと費用について、大論争が巻き起こり、最終的にはザハ・ハデッィド案は廃案に追い込まれました。
独創的なデザインの新国立競技場に、無意識的になんかおかしいぞと感じたのはなぜでしょうか? アースダイバー的視点から、その理由をあらためて解き明かしてみると、外苑と明治神宮との不可分な関係があったことに気づかされます。
アースダイバーの号外として、静かだが重要な提言をします。

感想・レビュー・書評

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  • 社会 213.61-NA

  • ブラタモリの学術版。時間、空間、人間の移動を書物から解明した労作。楽しい想像ができた。

  •  東京の「築地市場」と「明治神宮」という、近代になって造られた人工物をあえて「聖地」と見立て、そこに込められた日本人の精神性を掘り下げていく。

     市場で魚を売るいなせな仲卸売人のきっぷのよさは、もともとは江戸開拓にあたって移住してきた大坂の魚河岸商人たちが備えていたものであるとする考察とその歴史が面白い。粋でいなせな江戸っ子気質というのはもともとは海民のもので、自然と人間の仲立ち役とし連綿と生き長らえてきたものだという。
     江戸時代から日本橋を本拠地としていた魚河岸は、「自然と人間の大分離」を目指す明治新政府の要請と関東大震災のどさくさにより、築地(計画当時は箱崎、芝、深川の三ヶ所)へ追いやられることとなる。この時も移転賛成派と反対派が長らく対立し、なんと三十年以上も膠着していたというから、つくづく歴史は繰り返すものだ。

     現代では、問屋や仲卸のような中間機構は非合理の根源のように言われているが、新たな築地市場の仲卸たちは、魚の目利き役となりまた職人技を磨いて、単なる物流センターにとどまらない築地のブランドを確立させていった。あの扇のような独特な形も、仲卸たちと買い出し人をつながく絶妙な動線になっており、豊洲市場ではそれが分断されていることを著者は問題視している。

     もうひとつの聖地である明治神宮については、日本独特の古墳である前方後円墳になぞらえ、「閉じる」世界である内苑と、「顕われ」を表現する外苑の両極を一体でとらえる。その場合、外苑に建設される新国立競技場が現代風のデザインばかりが重視されることを著者は懸念している。

     冒頭だけを読んだかぎりでは、単純に「豊洲市場」と「新国立競技場」という新しい建造物に目くじらを立てているだけのように感じたが、読み終えてみると日本人の精神に訴えかける大切な何かを感じ取ることができた。
     それにしもこのような精神性は日本人の誰の心にも今もあるはずなのに、合理的な経済主義の前には登場せず、文字で書いても叫びが伝わってこない。せめて記録として残しておくことにしよう。


  • 築地市場と明治神宮の歴史や場所性を紐解く

    築地市場の再開発は聖地となれるのか
    今の市場も歴史とシステムの検討の上で作られた
    市場機能は無くとも聖地として息づく計画を考えたい


    以下読書メモ

    築地市場 海民二千年の知恵
    明治神宮 太古の無意識が現出

    聖地の条件
    1 聖地の周りに結界
    2 自然と通路を成している
    3 生きた人間が活動 いないと遺産

    築地市場や明治神宮は聖地性を備える

    築地市場
    1 市場内で健全な資本主義と高度な味覚文化
    2 東京にとって海に開かれた通路
    3 数百人もの仲卸の存在

    市場の歴史

    魚河岸文化
    弥生時代からの新鮮な魚介類の欲求
    生魚を扱う人々と朝廷との関わり
    大阪今宮で供御人が力を持つ
    上納した残りを六角市場錦市場あたりへ
    荒々しく気風の良い文化が生まれる

    戦国時代の大阪 京橋や天満に市場が開設
    川魚市場から自由な楽市楽座が広がる
    その後海魚市場が中之島西の雑魚場に
    その中で佃村を拠点とした見一一族が台頭
    その後江戸へ進出し白魚を江戸城に献上

    江戸っ子の文化は佃島日本橋から
    佃島の海洋文化は弥生から二千年堆積
    入れ墨が多いのは皮膚が自然の一部だから

    仲買人
    できるだけ良質な魚介類を贔屓に売りたい
    深い生物知識や味覚と料理法が蓄積する
    いわば博物館兼料理法ワークショップ

    日本橋から築地へ
    明治政府による移転誘導
    関東大震災で移転が促進

    築地の魚河岸文化
    近代市場を参考にしたモダン建築
    聖路加のおかげで空襲を免れる


    東京の二つの森
    皇居 吹上御殿 昭和天皇による全国から移植
    明治神宮 民間の力による新しく作られた森

    明治神宮
    古代の古墳がモデル
    内苑と外苑の二部構成

    内苑と繋がりながら外部に開く外苑
    純粋な祖型としての建築が必要

    お金による資産の流動化で根を失う世の中
    明治神宮は根を生やした空間の再生を意図

  • 18/03/02。

  • 大阪、築地、神宮外苑。水と街、建築、そして自然。サスティナブルな社会とは何かを考えさせられます。

  • ‪歴史的な意味のある東京の聖地として築地市場と明治神宮の2か所を取り上げている。奇しくもその価値と意味を無視して強引かつ様々な利潤のしがらみによって、それぞれの地は変貌を遂げようとしている。それぞれの地が担ってきた意味を追求する。‬

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著者プロフィール

中沢新一(なかざわ・しんいち)
1950年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。現在、明治大学野生の科学研究所所長。思想家。
著書に『アースダイバー』(桑原武夫学芸賞)、『大阪アースダイバー』、『カイエ・ソバージュ』(小林秀雄賞)、『チベットのモーツァルト』(サントリー学芸賞)、『森のバロック』(読売文学賞)『哲学の東北』(斎藤緑雨賞)など多数ある。

「2018年 『精霊の王』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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