独り舞

著者 :
  • 講談社
3.14
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本棚登録 : 120
レビュー : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062209519

作品紹介・あらすじ

私は私。海を渡っても、異なる言語を操っても、何も変わらない。自分自身であること、それが生の苦難の根源なのだ――。心惹かれていた同級生との死別により、幼くして死への想いに取り憑かれ、一方で、性的マイノリティとして、内なる疎外感に苛まれていた迎梅。女子高での密やかな恋、そして運命を暗転させる「災難」の果てに、日本に半ば逃亡のような気持ちで渡った彼女の葛藤と孤独を描く、若き台湾人作家の鮮烈なデビュー作。

感想・レビュー・書評

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  • 終始漂う死の気配にヒヤヒヤしながら読み進めた。希死観念をもつ人の気持ちを覗き見た気持ち。世の中には自分の意思だけではどうしようもできないことがあるし、どこへ行っても自分自身であることからは逃げられない。その事実をただ淡々と当たり前に受け入れられない人も多くいるんだろうと思う。

    性被害に遭った直後までも「自分は悪くない、加害してきた方が悪いのだ」と考えることができた聡明な彼女が、周囲の人に影響されてしだいに自分自身を責めるようになっていく描写はほんとうにつらかった。
    だけどラストの希望が見えてきたところで物語が思い浮かび、それを書きたい、書ける、書こうと決意する場面には心を打たれた。

    台湾のカルチャーの固有名詞とともに日本の小説家の名前も多く登場して、世界は広いんだか狭いんだか。

  • 生きることと死ぬことに向き合っている。ああ、ちがうな。生きることと死ぬことに向き合わざるを得なかった人の物語だ。なんという苦しさ。でもこれは彼女が一歩を踏み出す本だ。踏み出してみて気づくことがある。生きることはつらくもあるけれど、やっぱり生きることは尊いのだと私は信じる。

  • 台湾出身の著者が日本語で書いて、群像新人文学賞優秀作を受賞している作品。だからこれは海外文学なのか、日本文学なのかわからない。でもわからないままでいいと思う。わたしはそういう「あいだ」の文学がすき。

    台湾ではクィア文学が割と広く読まれていて、作品も多く出版されている。本書もクィア文学のひとつ。レズビアンの女性が主人公。
    先に結論を言ってしまうと、この物語は主人公の女性が自身の性的指向とそれがもたらす社会とのズレや葛藤、そしてある事件によりもたらされてしまった傷を抱え、そのせいで大切な人を失い、苦しみながらも最期には「それでも人生は続く」と歩き続ける喪失と再生の物語だ。よくあるプロットだと思う。

    それにもかかわらず、この作品が私の胸を抉ったのは、ここに描かれている彼女(たち)の生活が私にとってはめちゃくちゃリアリティのあるものだったからかもしれない。レインボーパレードだったり、二丁目のバーだったり、そういう「わかりやすい」ゲイカルチャーのど真ん中で明るく生きているというよりかは、それを日常の支え、息抜きの場とはしながらもどこか日陰者の意識が拭えずにぼんやりと「死にたいなあ」と思い続けているような女の子。それでも実際自殺行為を繰り返したりは、しない。良くも悪くも中途半端。その中途半端さがすごくリアルだった。

    そのぼんやりした希死念慮から逃れるように文学に耽溺していくのも、まあ日陰者の通るありがちパターンで、もれなく私もそうだったわけだけれど。(希死念慮の理由付けとしてセクシャリティだったり性的暴行だったりっていうのはあんまり関係ない気がする、いやこの作品上は関係あるんだろうけど死にたさなんてそのへんの雑草くらい身近なものだから、なんかそこに絡めていくのは無粋な気もした)なんだか彼女の通る道がとても既視感があって、切ないとか哀しいとかよりも過去の自分と対峙するような面映さがあって、苦しかった。

    めちゃくちゃに傑作!!と大手を振って言い切れる作品では、私の中ではないけれど、著者のまっすぐな文学への愛が感じられた良作だと思う。
    ラストはご都合主義すぎという意見があったみたいで、それに対して著者自身が弁明?している文章も(noteにある)あるけれど、まあ、確かに都合いいよねとは思うがそうしないといけなかったってのもよくわかる。あそこで対峙させなかったら、このお話は先へ進めなかったんだろう。

    あと、人が恋に落ちる瞬間を描く作品て、もうこの世に何億とあるわけだけど、その描写が美しい作品は良い作品、というジンクスみたいなものが私にはある。この作品もまさしくそうだった。主人公と、その恋人・小雪との出会いの場面はもう本当に眩しくて目が潰れるかと思った。そこだけでも読めて良かったと思える作品。

  • 記録

  • 淡々と物語が進んでいっているように思えるのは主人公が「わたし」ではなく「彼女」だからか。いつものように主人公に入り込むのでなく、俯瞰して彼女の人生を眺めるように読み進めていった。

  • 台湾人の作者による、自らのセクシュアリティに葛藤しながらも、もがきつづける魅力的な女性の半世記。もちろん全編日本語。
    作者の熱量がビシビシ伝わってきて、一気に読めた。
    時々、言語感覚に違和感もあったが(この言葉、今は使わないよなー、とか。主人公を一貫して「彼女」と表すのも、意図的なのだろうが、馴染まなかった)日本語が母語ではない若者がここまで美しく日本語を操っていることに感嘆。若干文章が硬いのは、これから磨かれていくだろう。

    台湾におけるレズビアンの扱いに、前から思うところはあった。ドキュメンタリー映画「母と私」を見ていたからだ。
    日本よりレズビアンは顕在化していて、だからこそ露骨な嫌がらせもあるが、少なくともこの国より市民権を得ていると感じる。
    レズビアンの存在は「いるもの」として了解されている。
    日本では、ゲイが話題に登ることはあっても、レズビアンは身近には「いないもの」として扱われているように思う。だからこそ、この小説のようにフォビアも起きにくいが…それは果たして、日本の方が女性同性愛者にとって生きやすい、ということなのか?違うだろう。
    これは、日本におけるセクマイの扱いというよりむしろ、日本における女性の扱いの問題に大きく起因しているのだ。
    台湾の女性はパワフルで、凛としていて、主張ができる。この小説における主人公とエリカの描き方が(クレバーだが控えめ)、うまい対比になっている。

    折しも、最近、ロンドンのレズビアンカップルが「レズビアンである」という理由で暴力を受け、その姿をFacebookで公開したというニュースが流れた。
    この小説の主人公の姿と重なる。
    レズビアンが社会で存在を認められ、迫害を受けない社会へ。自らのセクシュアリティゆえに自死を選ばなくてもよい社会へ。
    ダイバーシティと声高に叫びながら、個々のセクシュアリティには「性の問題」として目を瞑る傾向のある今の日本は、果たしてそんな社会を作っていけるのだろうか。
    ラストの、解放感のあるオーストラリアの山岳景色は希望を感じさせてくれた。
    現実の社会もよい未来になりますよう。

  • 2018/9/24

  • LGBTの人にとっての自由が全て恋愛や結婚に集約されていることが少し気になったので手にとってみた。

    それは彼ら、彼女らが
    ノンケの人々ができていることが
    私達にはできていないという不完全さからだろう。
    (相手がいたとしても、隠さなければいけない、親や友達にカミングアウトするまでの過程など)

    ただ本作も台湾から渡ってきたセクマイ(セックスマイノリティの略?)の彼女は自分が日本に渡ってきたのは台湾に居場所がなかったから、もしくは元カノ達とうまくいかなかったからと言ってるけど、元カノじゃん!とも思う。
    前の恋愛を引きずるのは当たり前でそれだけが日本に逃げてきたというべき理由か??となるが
    (日本で働いている会社では、日本的な振る舞いで寧ろ会社では頼られたり、必要とされたりしているポジションにいるのだが、そこに対してもみんなは本当の私を知らないとか思ったりして、それはある目線からは奢りじゃないか?とも思う)

    そこはちゃんと主人公に最後に
    気づきを与えてくれているところが
    モヤモヤしたものを晴らしてくれる読後感になっている。

  • 本を読むのって楽しいんだったと久々に思い出させてくれた。
    彼女と小雪の蜜月な時間に交わされる会話が文学少女らしくて痺れた。文学好きな人たちの会話ってこんなかんじなの???
    後半、たたみかけるように彼女が再生に向かうが、こんなに簡単に深淵から再生へに迎えるものなのかと少し疑問。でも案外そんなものなのかな?と思ったり。駆け足で読み終えてしまったので、もう一回読んでみる!また感想が変わるかもしれない。最後の一文、空がとても綺麗なんだよなぁ。

  • 書籍についてこういった公開の場に書くと、身近なところからクレームが入るので、読後記は控えさせていただきます。

    http://www.rockfield.net/wordpress/?p=11639

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著者プロフィール

1989年台湾生まれ、台湾籍の小説家・日中翻訳者。15歳から日本語を学び、中国語で小説創作に入った。2013年来日、2015年早稲田大学大学院日本語教育研究科修士課程を修了し、2016年民間企業に就職。2017年、初めて日本語で書いた小説『独舞』で第60回群像新人文学賞優秀作を受賞し、『独り舞』に改題し単行本デビュー。2018年末に勤務先を退職。2019年、『五つ数えれば三日月が』で第161回芥川賞候補作となった。2021年『彼岸花が咲く島』で第165回芥川賞受賞。

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