伴走者

著者 :
  • 講談社
4.02
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本棚登録 : 211
レビュー : 31
  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062209540

作品紹介・あらすじ

【伴走者(ばんそうしゃ)】=視覚障害のある選手が安心して全力を出せるように、選手の目の代わりとなって周囲の状況や方向を伝えたり、ペース配分やタイム管理をしたり、伴走(ガイド)をする存在。 資金はない。趣味ではない。福祉でもない。障害者スポーツの世界にあるのは、ひたすら真っ直ぐな「本気」だけ。選手を勝たせるためなら手段は選ばない。伴走者の熱くてひたむきな戦いを描く、新しいスポーツ小説!

感想・レビュー・書評

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  • 伴走者から見た、全盲の人のマラソンとスキーの世界。知らない事を知ることはいかに楽しい体験であるかを思い知らせてくれる、素晴らしい小説だった。続編強く希望

  • オリンピックと同じ年に開催されているので4年に一度は目にしている「パラリンピック」。
    でもあまりにもそのひとつひとつの競技に対して無知であったと改めて。
    「伴走者」というのは自分自身がトップレベルのアスリートでなければならない。よく考えたらそりゃそうなのだけど、ここまでその力を求められていたとは。
    夏と冬、マラソンとスキー。マラソンは紐でつながった伴走者を見たことがあったけど、スキーは初めて知った。こんなすごい競技があったとは、と驚き、思わず映像を検索してしまったほど。視覚障碍者が時速100キロ近いスピードで滑り降りて来る…晴眼者でも怖いのに…いや、無理無理。
    すごいなぁ、と思って読んでいたけど、でも本当に大切なのは、彼ら彼女らにとってその見えない状態が当たり前で、それを私たちが勝手に「大変だ」と思い込んでいるということ。そのことに気付かせてくれたこの小説を東京オリンピックの前に、ぜひ一人でも多くの人に読んでもらいたいと思う。

  • パラオリンピックマラソンとスキーアルペンの伴走者との話し。この二人みたいにオリンピック選手は障害者でも強いんだろうな。でも恵まれ過ぎだ。 2018.4.6

  • 障害者スポーツの話だが、人と人が信頼しあう事の難しさや、意志の疎通をはかる方法に、万人で違いはない事を思い出させてくれた。
    一瞬を争うスポーツの指示を、口頭だけで的確に出す難しさは、想像以上なんだろうと思った。

  • パラスポーツとしてよりは、人と人との人間模様として響いた。

  • ・「なぜ目の見えない者がここに来たのだ」
    「彼自身を変えるためです」
    「お前は何者だ」
    老人は怪訝そうな表情になった。
    「俺は伴走者です」淡島は胸を張った。「革命家にだって伴走者はいたでしょう」
    伴走者はレースを共に走るだけの存在ではない。誰かを応援し、その願いを叶えようと思う者は、みな伴走者なのだ。
     内田の願いを叶えるのが、ここにいる俺の役割だ。伴走者としての俺の役割なのだ。淡島の必死の願いを聞き、老人は静かに目を閉じた。目尻から涙がこぼれ落ちる。
    「儂が彼の伴走者だった。彼の革命をすぐ側で見つめてきたのだ」濁りのない瞳は淡島の遥か後ろを見つめているようだった。

    ・「怖がるのが不思議なんですよねー」
    「何で不思議なんだよ」
    「だって、それまで何でもできていた人が、急にダメ人間になるんだもん」
    「俺たちは視覚に頼っているからな。視覚がなくなると動けなくなる」
    そう。その瞬間、強者は弱者になり、弱者は強者となる。光のない世界に入り込めば、視覚障害者は圧倒的な力を持つことになる。
    「それなのに立川さんは弱さを見せない」
    「どうせ俺は偉そうだよ」
    「弱さのない人は強くなれないんですよ」晴は静かに言った。

  • 生業である対人援助職について、クライエントの「伴走者」と例えられることがある。
    「誰かを助けるのではなく、その誰かとともにあろうとする者、互いを信じ、世界を共にしようと願う者」
    自分はそんな風に伴走できているか。
    自分の弱さを恥じずに、ちゃんと誰かや何かに頼ることができているか。
    スポーツの話だけれど、そんなことを考えながら読んだ。

  • 夏・マラソン編と冬・スキー編からなる、
    二組の盲目のアスリートと伴走者の物語。
    どちらも気が合ってコンビを組んだというよりは、伴走者側が状況的に否が応でもなしにそうせざるを得ない所から始まっている。
    勝負の世界の駆け引き、障害者スポーツを取り巻く環境など、どれも綺麗事ではいかないし、
    努力に結果が必ずしもついてくるものではないけれど、
    それでも人を競技に向かわせるものはなんだろうか?
    スキー編のラストは、その答えの一つを提示していて爽やかな読後感。

    ただ、アスリート側がどちらも天才型なので
    できたら努力の人同士の話も読みたい気がした。

  •  思いの他、良い作品だった(特に「冬・スキー編」)。
     元NHK職員(広報担当)による作品。浅生鴨、お初。近著『どこでもない場所』を新聞書評で見かけ、図書館に検索をかけたら蔵書に本書があった(『どこでもない・・・』はなかった)。読んでみて良かった。

    「夏・マラソン編」と、「冬・~」の中編2つで1冊。

     「夏」は元サッカー選手のブラインドランナー内田と、正確無比な走りは出来るが実績が伴わないエリートランナー淡島の物語。
     「冬」は大学時代、競技スキーで最速選手だったが社会人となり引退していた企業エリート涼介が、会社の方針で全盲の女子高生晴(はる)のスキー伴走者となる。

     どちらの作品も、盲人にも伴走者にもそれぞれ欠点があり、一筋縄ではいかない物語としているが、後篇を読むと良く分かるが、障碍の有無を除けば、誰もが同じ人間で、誰もが普通の悩みを持っているということを強く訴えている作品と取れる。
     一般に、盲人と伴走者のペアの物語となると美談を想像しがちだが、そうではなく、普通の軋轢、衝突、諍いがあり、それぞれが普通の人間だということを言いたいのだなということがとても良く分かる。

     スキー編の涼介がこうつぶやく;

    「できないこともできることもたくさんある。それは晴だけではない。俺だって同じだ。誰だってそうなんだよ。だから俺たちは助け合うんだ。」

     盲人だから、晴眼者だからという違いは、とっぱらって、お互い人として接していくようになる様が清々しい。 さらには、完全無欠の勝利の物語としないところも、リアルでよかった。
     前篇「夏」を雑誌に発表のあと、後篇「冬」を書き下ろしたようだが、後篇のほうが、そのあたり人物造形、メッセージ性が浮き彫りになっていて良かった。

     「夏」編のブラインドランナー内田の、横柄極まりない態度は、もちろん、小説としての面白さのための脚色であろうとは思うが、自分がつき合ってきたブラインドランナーの面々は、おしなべて人間が出来ていた。ここまで失礼な態度は取らないと思う。 己がハンデを抱えていることで、彼らは健常者以上に、気配りができ、人には優しいものだ。

     後篇の涼介の言葉に、また戻るが、

    「弱さが俺たちを強くする。弱さを知る者だけが、その弱さを克服できる。たった一つの感覚の代わりに、多くの感覚に頼る力が晴の強さだ。頼れること。それが本当の強さなのだ。」

     ブラインドランナーの方は、そんな強さを持っている。内田のように虚勢は張らない、と思うのだ。

     夏のマラソンの舞台、南国の島国、革命家の家、ということで、キューバっぽいなと思い読んでいたが(一切、具体的な地名は登場しない)、どうやら当たり。
     著者が、執筆前にテレビ番組撮影で訪れていたそうだ。実際にコースを撮影し、リアリティーを重視したという。そう思って改めて読んでみるのもいいかもしれない。

     ブラインドスキーヤー晴のキャラが可愛くて良い。
     「お?」って口癖も良い。

  • 2018/11/12

    913.6||アソ (3階日本の小説類)

    全盲の人がマラソン?
    全盲の人がスキー?
    それを支えるのが伴走者です。
    視覚障害者が安心して競技ができるように選手の眼の代わりになる伴走者。
     自分のためではなく他人が心地よく競技できるように尽くすが、人と人のつながりでお互いが競技の喜びを味わえる極上のスポーツ小説。
    マラソン編とスキー編があります。

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著者プロフィール

浅生鴨(あそう・かも)
1971年、兵庫県生まれ。作家、広告プランナー。NHK職員時代の2009年に開設した広報局ツイッター「@NHK_PR」が、公式アカウントらしからぬ「ユルい」ツイートで人気を呼び、中の人1号として大きな話題になる。2013年に「群像」で発表した初の短編小説「エビくん」は注目を集め、日本文藝家協会編『文学2014』に収録された。2014年にNHKを退職し、現在は執筆活動を中心に広告やテレビ番組の企画・制作・演出などを手がけている。著書に『中の人などいない』『アグニオン』『猫たちの色メガネ』がある。2018年9月、『どこでもない場所』を刊行。

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