コンタミ 科学汚染

  • 講談社 (2018年3月21日発売)
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本 ・本 (306ページ) / ISBN・EAN: 9784062209649

作品紹介・あらすじ

「ニセ科学」――でたらめな科学用語をちりばめた、まがいもの。大学院生の圭と、指導教員の宇賀神は、ニセ科学批判派の蓮見教授から、信じ難い事実を耳にする。かつて宇賀神が愛した研究者の美冬が、ニセ科学商品の開発に手を貸した上、失踪した、というのだ。彼女は本当に悪魔の研究に手を染めたのか? 二人は、美冬の消息を追う。全ての真相が明らかになるとき、「理性」と「感情」のジレンマが、哀しい現実を突きつける――。


【注】 この本には、「信じたくない」真実が含まれています。

 「ニセ科学」――それは、根拠のないでたらめな科学用語をちりばめた、科学を装う「まがいもの」。
 大学院生の圭は、新進気鋭の生物学者・宇賀神と共に、ニセ科学批判の急先鋒である蓮見教授の元を訪ねる。そこで告げられたのは、宇賀神のライバルであり、想い人でもあった女性研究者の美冬に関する信じ難い事実だった。神秘の深海パワーで飲むだけでがんが治る、「万能深海酵母群」。「VEDY」と名付けられたニセ科学商品の開発に手を貸し、行方をくらませたのだ。
 ニセ科学を扱うことは、研究者にとって「死」に等しい。なぜ彼女は悪魔の研究に手を染めたのか? 圭は宇賀神に命じられ、美冬の消息を追うが……。
 すべての真相が明らかになったとき、「理性」と「感情」のジレンマが、哀しい現実を突きつける――。

 東京大学大学院出身の著者が放つ、私たちの身近に蔓延る「汚染された科学」に迫るサイエンス・サスペンス! 
 あなたは、真実を知る覚悟はありますか?

感想・レビュー・書評

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  • 伊与原新のコンタミ 科学汚染を読んだ。
    大学院生の圭は、指導教員に奴隷のように使われるが就職のために我慢。
    その指導教員を12回も振った研究者の美冬が行方知れず。
    ニセ科学を題材に話は進んでいくが、盛り上がりにかける。
    いつになったら面白くなるのかなと思いながら最後まで読んだがワタシ的にはいまいち。
    代替療法だが、癌を宣告されれば藁にも縋る思いはあると思う。
    私も大事な人を何人も癌で失っている。
    癌に効くサプリメントをネットで検索すると、知らないのがたくさん出て切る。
    私が知っているのはジェイソンウインターズティーで、お茶代わりに飲んでいる。
    全世界で飲まれているのでそれなりに効果はあるのだろう。
    ミキプルーンもテレビでコマーシャルしている。
    宗教のようなものからいろいろある
    小説は落ち着くところに落ち着いたという感じだ。

  • 『コンタミ』…科学汚染。

    気鋭の生物学者・宇賀神の研究室で雑用係(?)としてこき使われている大学院生・圭は、宇賀神に連れられて「ニセ科学批判」の急先鋒・蓮見教授の元を訪れる。
    宇賀神がフラれ続けている元同僚でライバル研究者・美冬が、こともあろうにニセ科学メーカーの研究室で働いているらしいと知った宇賀神の命令で、圭は行方不明になっている美冬を探すことに。
    【神秘の深海パワーでガンも治る、放射能も除去出来る】として水や健康食品を製造販売するニセ科学メーカー〈VEDY〉。
    美冬と〈VEDY〉の繋がりをたどるうちに、ニセ科学に翻弄される被害者、科学用語に騙されて善意で商品をPRしてしまう人々に出会い…


    優れた研究者で合コン好きの俺様キャラ・宇賀神はなかなか良かったが、肝心の主役である圭が流されるままに動いているだけで、ぼんやり。

    いかにしてうさんくさいニセ科学がはびこるのか、何故人は騙されるのか、という啓蒙小説のようだった。タイトルの『コンタミ』とは、内容が合っていない気がした。

  • [ニセ科学への道は善意で舗装されている]
    というTシャツの文字が象徴的 

    題名のコンタミとはコンタミネーション、
    科学実験の場における汚染のこと、、[
    共用の試薬や装置が汚染されている場合、メンバー全員の実験結果をだめにしてしまう恐れがある] 、、ニセ科学はコンタミネーション
    見たいものしか見ないから人はニセ科学に絡め取られ、善意に溢れたあなたも汚染源になるのだ

  • 非科学、ニセ科学。科学に明るい人からすると、チャンチャラおかしいものにこんなにも人は騙されるかと思うんでしょうが、病気で藁にもすがる思いの時は謎の液体とかを大枚はたいてでも飲ませたいと思うし、怪しい健康法も試してみたいもんです。実体験があるので分かりますし、その時は出来る事は何でもしてやりたいと思うんです。
    そんな所につけこむニセ科学。訳の分からないワードを組み合わせて荒稼ぎする。真っ当な企業でも色々ありますよね。
    真っ当な科学の中に、そういった非化学が混ざって人を惑わせることを科学が汚染されると表現しています。故にコンタミネーション。
    実際この中でがんの治療って色々な情報が有って、代替療法が山のように出てくるんです。それを頼りに医学的な治療をやめてしまう怖さ。これは本当に体験した当事者でないと分からないことだと思います。
    なのでこれを読むと騙される人の気持ちになって読んでしまって結構辛かった。科学に明るい人でもその時になったら分からないです本当に。これ読んでおくと予防線になるかもしれません。

  • 科学の専門的な用語や理論的な言葉遣いに、読みにくさを感じる部分もありましたが、後半からは謎や疑問だった部分が徐々に明らかになっていき、ミステリーとしても先が気になり一気に読んでしまいました。
    出てくる様々な疑似科学とされるものの中で、水に含まれた成分に人が心の拠り所を求めて購入し、実際に身体の調子が良くなったと効果を実感しているという話には、今村夏子さん著の『星の子』を思い出しました。
    コロナなどの菌や、地震により原発が事故を起こしたときの被爆への恐怖など、目に見えない物質については、結局人が発信する情報しか判断できるものがなく、だからこそ情報の発信元や発言の根拠などを自分で確認することを心がけたいと改めて思った。

    科学は良くも悪くも事実や真実を誰に対しても平等に示してくれるものであり、人間は不安になったとき理性より感情に訴えてくるものにすがりたくなるということを色々考えさせられました。

  • ニセ科学、深海酵母VEDYの開発に手を染めた女性研究者が謎の失踪。彼女の行方と真実を追う科学者と助手。
    途中、専門的な内容に何度か立ち止まりながらも何とか読了。後味が...あまりすっきりしない、けど、これが現実なんだろうと思う。世の中、VEDYのような商品(商売)がたくさんありますもんね。
    ただ、きっちり成敗されて終わって欲しいタイプの私には物足りなかった。

  • 伊与原さんは3作目だけれど、今回が一番読み応えがあって面白かった。
    マイペースな理系大学准教授・宇賀神と彼に振り回される大学院生・圭のコンビのやり取りもとても楽しいので、ぜひシリーズ化してほしい。

    非科学の中に存在する、科学を装ったニセ科学。
    でたらめな科学用語をちりばめ、あたかも科学的であるかのように見せかけ人々を騙す。
    人の善意に付け込む汚染(コンタミ)された科学を暴く長編サスペンスは、私のようなアンチ科学の人間にも分かりやすくてとても面白かった。

    我々の身近に潜むニセ科学。
    アンチ科学側からすると、それがインチキかもしれないと頭では分かっていても、つい心が欲する方を選んでしまう。
    人は理性と感情の間を揺れ動き惑う弱い生き物なのだとつくづく思った。

    「科学はこの世のすべての人間に等しく同じものを見せる」
    「どれだけ教育を受けようとも、ほとんどの人間は、自分の見たいものしか見ず、信じたいことしか信じないだろう。そうでもしなければ、この世はあまりにも生きづらい。でも、そのかたわらで、科学はただ淡々と、万人に同じものを見せ続ける」
    考えれば考える程、科学と非科学の間に広がるグラデーションの海で、私も溺れそうになる。
    科学の奥深さにますますハマりそうだ。

  • 謎解きというよりは「科学」のニセモノについて知る小説だった。
    登場人物が特徴的なのでドラマ化できそう。
    …テレビ放映するには、ニセ科学商品を扱ってるスポンサーがつかないから難しいか?笑
    ---
    怖いのは、愛する家族との別れです。(p.261)

  • ニセ科学…科学を装うまがいもの、の研究に手を染めた女性研究者の失踪。
    謎を追う大学院生の圭と指導教員の宇賀神。
    世の中には、ニセ科学と言えるものが溢れているんだなぁと感じる。
    自分自身は、理性と感情、どちらに傾いて色々な物事を見たり判断したりしているか、考えさせられる。だが、文体は軽めでさらさら読める。
    このコンビがシリーズ化したら楽しみ。

  • 科学ミステリーでしょうね。
    ちょっと変わったキャラを立てて、それはそれで楽しいのですが、成功しているとまでは言えないし、ミステリーとしてもさほど良い出来でもない。そんな中で疑似科学 非科学や癌の代替療法の説明などは流石、伊与原さんと思わせます。
    そうそう、助教・羽鳥が次々繰り出す啓蒙Tシャツも受けました。「ニセ化学への道は善意で舗装されている」。ウン、深い!

    ミステリー色を弱め新境地を開きつつある伊与原さん、今後に期待しましょう(遡って旧作は読まなくて良いかな)

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著者プロフィール

1972年、大阪府生まれ。神戸大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻し、博士課程修了。2010年、『お台場アイランドベイビー』で第30回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、デビュー。19年、『月まで三キロ』で第38回新田次郎文学賞を受賞。20年刊の『八月の銀の雪』が第164回直木三十五賞候補、第34回山本周五郎賞候補となり、2021年本屋大賞で6位に入賞する。近著に『オオルリ流星群』がある。

「2023年 『東大に名探偵はいない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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