人間の未来 AIの未来

  • 講談社
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レビュー : 63
  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062209724

作品紹介・あらすじ

10年後、100年後の世界と日本の未来を、ノーベル賞学者と国民栄誉賞棋士、最高の知性を持つ二人がとことん語り合う!
iPS細胞、将棋界とAIといった二人の専門分野に加えて、「ひらめき」「勘」の正体、世界で通用する人材をつくるにはどうするか、人間は不老不死になれるかといった、人類の普遍的なテーマについても熱く討論する。

感想・レビュー・書評

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  • この本は、このお二方の対談というだけでも非常に興味がそそられましたが、読んでみて、期待以上に面白い内容だったと思います。

    片やノーベル生理学・医学賞の受賞者、片や将棋界で永世七冠獲得の国民栄誉賞受賞者ということで、日本人の誇り代表のようなお二方の未来対談。内容もさることながら、お二方の人格も素晴らしく、読んでいて本当に楽しいひと時を過ごせました。

    羽生さんは本書以外にも将棋とAIに関する本を出されていますし、NTTの研究所でAIについての対談をされていたり、AIに対しての見識は高く、非常に詳しいと感じます。

    職業がら「AIに取って代わられるのではないか」というようなことも考えられるからでしょうか、非常に専門的な内容まで研究されているように思います。

    山中教授の研究などに関する裏話もとても興味深かったです。生理学や医学の分野は、非常に官僚的というか古風というか、新しい研究成果が受け入れられにくい土壌であったり、研究そのものが秘密主義の傾向があったりと、本来の期待とは逆の世界があることに驚きました。

    また、金儲け主義の企業による医療関係の特許申請が、医療の民間への浸透に悪影響を及ぼすので、そのために学術機関で特許申請に力を入れているなどの話も、予想外のいろいろな課題があるのだと知りました。

    最先端を走る者の苦労をされつつも、そのような課題を課題ととらえ、まずは実用化を第一優先に取り組まれている山中教授は、研究者の鏡のように感じますね。

    生理学・医学の分野が秘密主義な一方、将棋ソフトの開発はオープンに進められているという。この対比も面白かったです。どんどん勝手に強くなる将棋ソフトに関するFloodgateのことは、初めて知ってビックリです。

    その他、お二方のそれぞれの分野での「直感」に関するお話も興味深かったです。

    羽生さんが最後のほうで紹介されていたオックスフォードの人類未来研究所等のレポート「文明を脅かす12のリスク」の中に、気候変動や核戦争などとともに、AIがリスクとして挙げられている話をされていましたが、「AIが人間に取って代われるか」という誰もが思うこの疑問について、本書の中では少なくともお二方の考えは一致していると感じました。

    そもそも、この対談そのものがその答えであるようにも感じます。もし、山中教授のデータがインプットされた山中AIロボットと、羽生棋士のデータがインプットされた羽生AIロボットが対談したとしても、ある程度は面白いかもしれませんが、本書のようにほのぼのとした雰囲気の中で、互いに尊敬しあいながら、絶妙のタイミングで笑いがあったりと、こういう対談は人間山中・人間羽生でないと実現しないんだろうなと強く感じました。

  • 本著は偉業を成し遂げた、将棋の羽生善治氏とips細胞の山中伸弥氏が、斬新な発想やアイデアといった独創性を生み出す「『無知』の強み」と「直感力」について説く。

    山中氏は独創性を生み出す3つのパターンについて次のように述べている。1つ目はアインシュタインのようにもともと天才というパターン。2つ目は他の人も考えているようなことだが、一応自分で思いつく。実験等をしてみて予想していなかったことが起ったときに、それに食らいついていけるかどうか。3つ目は自分も他人も「これができたら素晴らしい」と考えているが、普通は「無理だろう」と諦めるところを誰もやっていないから敢えてチャレンジするというパターン。

    重要なのは2つ目のパターンだが、iPS細胞を発見したのは、3つ目のパターンだそうだ。もしAIにips細胞が成功する確率は99.9%難しいと言われていたら、挑戦しなかっただろうと言っている。見えないからこそ人間は挑戦できるもののようだ。iPS細胞の研究に踏み込んだのも、整形外科医から研究に入ったため「無知さ」によって、ある意味怖いもの知らずでやっていたと振り返っている。

    そして、3万ほどある遺伝子から24個の遺伝子に絞る過程で重要だったのが、勘だったと言っている。それは、くじ引きのような勘ではなく、過去の経験に基づく何らかの判断がモヤーッとしたものであったという。それに対して羽生氏は人工知能専門の松尾豊氏に「生物は目を進化させるために、他の器官を敢えて鈍くしている。だから勘というのは、その進化の過程で鈍らせてきた機能をもう一度、活性化するようなものではないか。」と聞いたことがあると言っている。そうならば、アイデアや発想、ひらめきを得るとはものすごく考えて考えてそこから生み出されるものもあれば、あるいは熟考から離れてぼんやりとしているとしているときにパッと思いつくこともあり、それは鈍らせていた機能が活性化された瞬間かもしれないと分析している。だから、ひらめきを得るためには、インプットばかりではなく、それを整理したり無駄なものをそぎ落としたりする時間が必要なのだろうとまとめている。

    両氏の言っていることが凡人である私には本当かどうか分からない。しかし、そう考えて取り組めば斬新な発想やアイデアが必要なときに諦めず前向きに取り組めると思う。

  • トップランナー二人の対談、示唆に富むトピックばかり。印象に残ったのは、「人間にできてAIにできないこと」で、AIは数学的処理で言語を扱うためショートショートくらいの文章は書けても春樹の小説は書けないというところ。また、日本の教育は教科書に書いてあること、先生のいうことは正しくて、その通りに答えればマルをもらえる、ある意味子どもにとって「居心地のいい」環境で、それが危ない、といった山中氏の指摘。日本は直線型思考が主流で回旋型思考をしない、つまり回り道を恐れるし、失敗を貴重な経験と捉えない。たしかに。

    おふたりとも「ナイストライ」をし続けていこうと。気持ちの若いふたりに勇気づけられた。

  • 2018年2月発売とそんなに古い本ではないけど、マーカーの書き込みがあるからかブックオフで安くなっていたので買って読んでみた(ただし、藤井聡太四段と書いてあって、逆にそんな前かとも思った)。
    主に、iPS細胞等の最近の生命科学と将棋を含めたAIについての話だけれども、iPS細胞についてはちゃんと勉強したことがないので知らないことも多かった。
    ミニ肝臓ってなんだそれという感じ。iPS細胞から作った肝臓の原基と呼ばれるものだそうだけど、それを患者に移植して体内で臓器を育てることを目指しているらしい。それって、患者に肝臓があるの?無いの? あるとすればどこにそのミニ肝臓をいれてるのと、逆に無いすれば無くて大丈夫なもんなのかと。生命科学に関することはまるっきり分かってないので、そこからよく分からなかった。
    後、昔の生物は再生能力が強かったようで、原始的なプラナリアという生物は二等分すると二匹になって再生するらしい。なぜ人間にはそんな能力はないのかというと、がんが発生するリスクがあるからだとか。まあ、人間でも皮膚にケガをしてもいつのまにか再生していることはあるし、全くその能力が無くなったわけではないような気もする。
    ちなみに、iPS細胞を初めて発見したとき、何かの間違いじゃないかと思ったらしい。そんな簡単に見つかるはずもないし、どこかでES細胞が混じった可能性が高いと思ったのだとか。そういや、STAP細胞も実は、ES細胞が混じっていたとかなんとか言われてたっけ。そういうこともやっぱりあるということなんだろうか。
    それと、将棋のAIソフトはGitHubでソースが公開されているということを初めて知った。オープンソースになることでいろんな人がどんどん改良して強くなっているらしい。知らなかった。
    逆に、生命科学分野は論文を発表するまでは誰にも知られずに隠すようにして、学会発表しても本当に大事なところは分からないようにするとかで、かなりクローズドな世界だそう。例えば、ゲノム解析である配列がある病気と関係があると分かって発表したとしても、それまでにどういう試行錯誤をしたかはいわないので、他の研究者がもっといい方法があるんじゃないかと同じ試行錯誤をしてしまうこともあるらしい。この本を読んで、生命科学も思ったより進んでるんだなと思ったけど、この問題をうまく解決できるともっと進歩が速くなるのかもしれない。
    なお、山中先生によると、研究というのは今ある教科書を否定することだそう。確かに、教科書の内容って変わるそうだしね。数学はそうそう変わらないだろうけど、意外と歴史の内容が変わったりするそうだし。そういう意味では、今ある教科書は自分が習ってた時と違ったりするのだろうなと思う。
    それと、オレキシンという覚醒作用をもつ物質を抑制する睡眠薬の副作用に「悪夢」とあるという話はちょっと面白かった。しかも、ホラー映画のような夢じゃなくて、身近な人に怒られたり遅刻したりという現実的な夢らしい。睡眠薬は使ったことがないけど、ちょっとだけ試してみたいと思った。

  • 羽生先生は将棋とAIの専門家として、山中教授はiPS細胞の専門家としての対談。

    どちらもそうなんだけど、相手が語っているの時にする質問が鋭く、例えがとてもわかりやすい。

    「失敗を怖れずに」「なんでも挑戦を」とはよく言われ、実際間違いを恐れず新しいことに挑戦してきたから羽生さんは48歳でもトップ棋士なんだけど、本当に実践してきたことはすごく困難が伴うことだったと思います。

    将棋の棋戦はほとんどトーナメントで、一回負ければもうタイトルには届かない中で、うまくいくかわからないけど試してみようと決断し続けるのは並大抵ではできないのではないでしょうか。


  • 山中教授と羽生さんが、IPS細胞や人工知能や、人類の今後について対談してる。

    その2人である必要性はあまり感じなかったけど(特に羽生さん)、2人とも安易な言葉で説明していて、読みやすく面白かった。

    人間の寿命は、心臓や関節などは代替できるようになるだろうから、結局は脳の寿命に帰着するだろうって話はなるほどなって思った。

    こういう凄い方の話を読むと、自堕落な自分がホント嫌になる、、

  • ノーベル医学・生理学賞を受賞された山中先生と、将棋の永世七冠の羽生善治さんによる対談。
    AIが将棋や研究に与える影響から始まり、未来社会の絵姿まで、話題は多方面に及びます。
    羽生さんが、藤井聡太七段のことをどう捉えているのかも披露されて、興味深くよみました。

    ▼羽生さんのAI観。
    人間は、連続性・一貫性に美しさを感じるけれど、AIはその場の最適解を求めることしかしない。それが違和感につながっているが、AIの指した手が将棋の戦法を変えた例もある。人間の美意識が将棋の可能性を狭めているのかもしれない。一方で、AIを絶対視するのは危険。AIは人間に比べて間違える可能性が少ないというだけ。ディープラーニングで何層にもわたって検討する結果、思考プロセスがブラックボックス化している。プロセスを説明できるようにならないと、人間社会に完全に受け入れられる可能性は低いのではないか。

    ▼山中先生の独創を生み出す3つの方法
    いいアイデアだと思っても大概は他の人がすでに考えていることが多い。人と違うことをやろうと思ったら、3つの方法しかない。
    一つ目はアインシュタインのようにすごい天才。二つ目は、人がそう考えるだろうことを自分も思いついたとき、まず実験してみる。予想通りの結果がでればそれはうれしいけれど、結果が予想と違うときが問題。自然は考えているよりはるかに複雑で、実験という形で問いかけると、思いもよらない答えを返してくれる。この時がチャンス。三つ目は、他人も自分も、あったらいいけど無理だろうと考えていることに挑戦する。私は天才じゃないので、二つ目と三つ目にしぼってやってきた。特に二つ目を重視してきた。

    ▼羽生さんの将棋に臨む姿勢
    将棋も何度かイノベーションを経てきた。棋譜のデータベース化、将棋ソフト、今回のAI。技術の流れに取り残されないためには、これまで得た知識を捨てる勇気がいる。ベテランになるとなかなか捨てられないが、若手は先入観なしに新手を考案できる。これまでの知識が思考の邪魔になりうるということを肝に銘じないといけない。

    比類ない実績をあげながら、今なお最前線で走り続けるお二人のお話には説得力がありました。
    羽生さんには、棋士どうしが局面検討をしているとき、たちどころに過去の同一局面の実戦例をいくつも指摘したという伝説があります。それほどの勉強量、記憶量があってなお、「捨てる」ことを強調される。学び続けること、謙虚であることの大切さを教えていただきました。

  • 2018.12.19読了
     AIと人間を話題とした、山中教授と将棋の羽生さんの対談。

     どちらの本も読んだことがあるが、本書はそのよいところが両方表れていて参考になる。

     羽生さんは「大局観」の話が特に参考になった。対局で最初に使うのは「直感」。
    それに基づいて「読み」つまり未来をシミュレーションする。さらに「大局観」を用いて、最初から最後までの流れを読む。

     将棋の世界もネットで様々な定石が見られ、「情報」が重要になってくるが、情報が多すぎるために「いかに捨てるか」が重要であることは同じであるようだ。インプットばかりでなく、それを整理する作業等が将棋では「ひらめき」につながる側面もあるようだ。
     そうして得られた情報の「量」がたまってくると「質」に転化する。自分なりに取捨選択して、情報を栄養素のように吸収するということだ。

     一方、山中教授はiPS細胞の説明がとても分かりやすいが、他に印象に残ったのは「教育」「研究」に関する意見。日本の教育はいわば「大学入試」が目標に置かれていて、そこからどうはみ出さないようにするか(はみ出さず高得点が出せる子がいい子、と評価されがち)という点に重点が置かれている。そのため、日本の研究者は「教科書を理解しなさい」という道を通ってきて、突然研究の世界で「教科書に書いていないことをやりなさい」と方向転換を強いられる。
     アメリカは高校生まではスポーツなど様々な経験を積んで、大学で一生懸命勉強をする。なので、アメリカでは創造的な意見が生まれやすい素地があるという。
     この違いあってか、「阿倍野の犬実験」すなわち、アメリカで行われた研究が日本でも通用するか、また日本の中の阿倍野でも通用するかといった、「アメリカ人のマネ」の研究が多くなってしまう(短期間で成果を上げないといけないシステムがこれに拍車をかける)。
     なるほど。自分は科学分野ではないが、そういう研究が日本では多いように思える。

     他にも、話はAI管理社会、永遠の生命やゲノム編集、AIによって死んだ人と話ができる「バーチャルおじいちゃんに相談」など、様々な話題に広がる。

     読んでいても面白いし、お二人の本を一括で読んだように、沢山の教訓が得られる良書である。

  •  羽生さんは人工知能の専門家としての立場。
    これまで、人工知能などの分野の専門家の研究素材としても対応されて、取材する側でも名だたる型と接点があり知識も豊富。

  • 進化は目。

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著者プロフィール

山中伸弥 1962年、大阪市生まれ。神戸大学医学部卒業、大阪市立大学大学院医学研究科修了(博士)。米国グラッドストーン研究所博士研究員、京都大学再生医科学研究所教授などを経て、2010年4月から京都大学iPS細胞研究所所長。2012年、ノーベル生理学・医学賞を受賞。2020年4月から公益財団法人京都大学iPS細胞研究財団の理事長を兼務。

「2021年 『友情 平尾誠二と山中伸弥「最後の約束」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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