バルス

著者 :
  • 講談社
3.58
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本棚登録 : 216
レビュー : 30
  • Amazon.co.jp ・本 (386ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062209847

作品紹介・あらすじ

世界最大のネット通販会社《スロット》は、極度に発達した物流システムに支えられていた。その生命線の宅配便トラックがテロの標的になった時、日本中が機能不全に陥る。格差社会への不満を抱えた集団「バルス」により犯行声明がマスコミに届き、次の犯行予告が伝えられた。宅配会社は荷物の受け付けを中止、それに伴いネット通販会社の出荷も停止、あらゆる産業で事業が滞りはじめた。バルスは予想外の要求を突きつける!

感想・レビュー・書評

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  • アマゾンをモデルにした仮想小説。
    アマゾンが物流会社の犠牲の上に成長してきたが、物流の値上げの動きに対して自前の物流を持とうとしている。
    その過渡期として、大手物流会社がある程度までは配送した上で、ラストワンマイルは中小の物流会社が配送しているのが現在。なので家庭へのアマゾンの配達を担っているのが外国人配達員だったりする。
    この物流システムは様々な脆さを内包している。
    例えば、アスクルの火災のような事態がテロ行為として起こされるリスク。
    その辺りを巧みに織り込んだかそう小説だなかなかの読み応えあり。

  • ブクログのレビューに惹かれて、読んだ作品。
    大手ネット通販会社「スロット」。一流の大学の経済学部を卒業予定の主人公・百瀬陽一は、最終面接まで行った会社から内定をもらえず、就職浪人することに。そこで始めたのが、「スロット」で商品をピッキングする派遣の仕事。その内情は非常に厳しく、現場で働く派遣の人間を始め、親会社の社員の人間でさえも、簡単にクビにする会社へ不信感を募らせた陽一はある計画を思いつく…
    アマゾンをモデルとしていることは、容易に想像がつく。そして、現代社会がどれだけ流通に頼り切っているかを改めて知らされる。流通の一番下の組織と思われる宅配便を狙うだけで、これだけ社会が混乱するかと思うと、現実社会でも起きてもおかしくはない事態だけに、読んでいて、いろいろ考えさせらることも。
    今の社会情勢を良く表している良作だとは思うが、就職経験のない陽一の説明がかったセリフが多いことだけが、唯一引っかかった。ま、よほど頭のいい人間なんだろう、と思えば、スルー出来るけど…

  • 内定を取れず就職浪人することにした、大学生の百瀬陽一。世界最大手のネット通販会社の物流センターでアルバイトを始めるが、そこで派遣労働者の過酷な職場環境を目の当たりにする。そんな折、宅配便トラックを狙ったテロが発生。犯人は「バルス」と名乗り、格差是正などを訴えるが。。。
    モデルはアマゾンだろうが、商品でなく物流システムを狙う視点がよかった。あまりにも簡単に社会が不安定になる様子がよく描かれていた。

  • スパイもので知った著者だが、最近のビジネス系が面白かったので期待して読んだ。テロと社会問題の因果関係の描写がやや多くてスリルや騙しのような期待した展開にはならなかったのが残念。

  • バルスを名乗る犯人が宅配便の荷物を発火させる手口で物流をストップさせるテロを起こす。犯人は悲惨な境遇に置かれた非正規労働者。安価な製品やサービスを追い求める消費者、効率を追い求める企業、そして増え続ける非正規雇用者果ては格差社会の拡大…。バルスを生み出したのは我々だ。団塊の非正規雇用者が高齢化した日本の未来はどうなる?この問題は日本の大きな社会課題だ。

  • 大手通販の流通システム、非正規社員問題などを絡めて、一つの犯罪から社会的な動きへと拡大していく様子を描く。ウンチクの話が重なっていく感じではあるが、テンポよく読んでいけた。
    非正規社員の立場についての話など、ちょっと偏りすぎるかなと思うところや、企業も大企業がメインで必ずしもこういった視点だけではないんではと思うところ多かった。

  • 2018/06/08 046

  • 便利で快適な暮らしを支える裏側に、どきっとさせられる。鉄道、物流、ネット通販、世界では驚きの正確さで成り立つのは『派遣労働者』『非正規労働者』の過酷な労働のうえに成立している。当たり前だと思っていた仕組みが、当たり前でなくなれば何が起きるか。目を背けている現実問題のひとつ。

  •  格差社会、非正規雇用、ネット通販、宅配業界を題材にした経済小説(で、いいのかな?)
     著者の作品はお初。元々スパイものや犯罪小説を手掛け、近年、経済小説に舵を切っているようだが、現代の格差社会の問題に切り込んだにしては浅い。ピケティの経済理論に着想を得たか、ケン・ローチの映画でも触れられる格差問題についても、その問題の構造から登場人物の造形含め、深みに欠けイマイチ。
     
     会話による物語の進行も、読みやすいといえば読みやすいが、いかにも説明会話、解説会話で、ヘタな芝居を見せられているよう。また、前半のスロット社員同士だった百瀬と渡部との会話を、後半に週刊近代の記者内海による取材でも、まんま繰り返し語られるなど、字数稼ぎ?とも思えるほど素人っぽい。

     時間潰しにはなったかな、という程度。

  • 非正規労働者が大企業の業績の調整弁となっていることが根底にあることを解説。
    流通の根幹を揺るがすテロは、やがて非正規労働者の労働組合結成の後押しとなるか!
    相変わらず、安定感のある作者だと思う。今回のテーマは、非正規労働者の待遇改善。深く考えさせられる。星3つ。

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著者プロフィール

楡周平(にれ・しゅうへい)1957年生まれ。慶應義塾大学大学院修了。米国企業在職中の1996年に発表した初の国際謀略小説『Cの福音』がベストセラーに。翌年から作家業に専念、綿密な取材と圧倒的なスケールの作品で読者を魅了し続けている。主な著書に『象の墓場』『プラチナタウン』『ドッグファイト』『和僑』『レイク・クローバー』『サリエルの命題』などがある。

「2021年 『バルス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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