本のエンドロール

著者 :
  • 講談社
4.10
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本棚登録 : 1104
レビュー : 167
  • Amazon.co.jp ・本 (386ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062209885

作品紹介・あらすじ

印刷会社の営業・浦本は就職説明会で言う。「印刷会社はメーカーです」
営業、工場作業員、DTPオペレーター、デザイナー、電子書籍製作チーム。構想三年、印刷会社全面協力のもと、奥付には載らない本造りの裏方たちを描く、安藤祐介会心のお仕事小説。

感想・レビュー・書評

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  • 印刷会社はただ印刷するだけの会社だと思っていた、本を読む前の私をはたきたい。
    印刷会社のおかげで、素敵な装丁の本が読めて、素敵な世界に触れることができている。
    本には、出版社だけでない、むしろ印刷会社のこだわりがいっぱい詰まっている。
    そのこだわりと、印刷という魅力、印刷現場で働く人の情熱を教えてくれる作品。
    もはや職人である。本当に。

    今まで、本を「パケ買い」するなどありえないと思っていた。
    本は作家とあらすじ、あとぱらぱらと読んでみて購入を決めてきた。
    だけど、本の「パッケージ」には本当にこだわりがあることを知った。力が入っていたら、それは間違いなく「売りたい」の気持ちが強く入っている本だ。
    これからはデザインに惹かれたら内容問わずに「パケ買い」もしてみようと思った。


    ちょっと話は逸れるが、米津玄師さんのアルバム「STRAY SHEEP」の限定盤は「印刷屋泣かせ」だと聞いたことがある。
    米津玄師さんのアートの作品をじっくり見たくて発売当初に限定盤を買っているが、この本を読んだ後にじっくりと印刷屋の「作品」を「鑑賞」した。


    編集者や作家は確かに「花形」の職業だけれど、
    出版社にはほかの部署も魅力的だ。
    出版社で働くことに興味のある人や就活生にぜひ読んでもらいたい。
    電子書籍のことなどの「内情」も詳しく知ることができた。

    これが本屋大賞(2019年)の「11位」だなんて。
    ランクインした作品はもちろん素晴らしい作品だけれど、あと1歩のところでこの作品に注目を集められなかったのは、この本に携わった関係者の方々にとっては本当に…本当に、残念なことだっただろう。

  • 今までは本を読み終えると、一応奥付けまでは見るが、発行所と日付ぐらいにしか注意を払ってこなかった。一冊の本が生まれるまでに、作家さんだけでなく印刷所で働く諸々の人々の力が集結されていると、あらためて思い知った。営業、工場作業員、DTPオペレーター、デザイナーなど。映画と同じように「エンドロール」に書かれない人々の色んな思いが籠められていた。実際、本書にはページを割いて、刊行までに携わったスタッフ全員の名前が表記されているのだ。本作りにはこれだけの人々が携わっていたとは! 本書を読むと、いつか紙の本が消えなくとも廃れてゆくと予想される出版業界の人々の呻きが聞こえて来る。
    本書では電子書籍製作チームも出て来て、そこで働く人々の葛藤も描かれている。真に迫るものがあった。私も電子書籍はほとんど読んだことがない。紙の本を当たり前と思って来たが、読者の私でさえ紙の本が衰退の方向にあるのは漠然と分かっている。コロナをきっかけに、当地・市立図書館にも電子書籍の貸し出しが春から始まった。いよいよ地方都市にも波が押し寄せたと半分は喜ぶ気持ちもある。片や、ほとんどを図書館の本で間に合わせている私は、申し訳ない気持ちにもなった。本を読むだけでなく、金銭で売買される行為があって初めて書籍を支えていることにもなるのかもしれない。(本書にもあった豪華な装丁の本を購入する気はさらさら湧かないが)
    学生を前に、会社説明会で「豊澄印刷会社はメーカーだ」と思わず口走った営業部の浦本君、毎日ブルーベリーを飲んで目の衰えを防ごうとしている職人さん。
    『廃れゆくことは敗れることではない。廃れゆくものを守る人間もまた必要なのだ。そんな仕事だからこそ、好きでなければ続けていれないと思うのだ。そこにあるのは悲壮感ではなく、作り続けることへの誇りや日々の達成感。完成を待つ本が絶えない間は、本が消えてゆく恐怖に慄いている暇などない。自ら選び取った場所で縁を得た人たちと、これからも本を造っていくのだ』
    彼らの気概に感謝するしかない。
    機械は動き続ける。電子化の波が押し寄せ、斜陽産業と言われようとも、この世に本がある限り。作家が物語を紡ぐ。編集者が編み、印刷営業が伴走する。完成した作品はオペレーターにレイアウトされ、版に刷られ、紙に転写される。製本所が紙の束を綴じ、"本"となって書店に搬入され、ようやく私たちに届く。奥付に載らない本造りの裏方たちを描く安藤祐介さん会心のお仕事小説です。

    ※福原さんが言った言葉に深く深く頷いた。『他人の努力や悲しみを借りて涙することを好まない』。そうだよね、福原さん! 私もまったく同じです。

    • ゆうママさん
      初めまして!
      ゆうママと申します。
      突然に失礼致します。
      私は、電子書籍を嫌っている人間です。古いと言われるかも知れませんが、本は紙のページ...
      初めまして!
      ゆうママと申します。
      突然に失礼致します。
      私は、電子書籍を嫌っている人間です。古いと言われるかも知れませんが、本は紙のページをめくって読むのが本だと思うのです。「半分読んだかな、あと数ページで読み終わるな~」という感じは、やはり紙の本だと。
      私は、東京郊外で市内に図書館は4つありますが、電子書籍はまだのようです。
      大変失礼しました。
      しずくさん、またレビューを読ませて下さいね!
      m(__)m
      2021/05/30
    • しずくさん
      コメントをありがとうございます!
      電子書籍化は紙の本愛読者としてはとても辛いですよね。東京近郊にお住まいのゆうママさんの所では未だなのです...
      コメントをありがとうございます!
      電子書籍化は紙の本愛読者としてはとても辛いですよね。東京近郊にお住まいのゆうママさんの所では未だなのですか。。。いっぺんも利用していませんが、頭から決め込まずに取りあえず実践してみるのも手かなとも思っています。といいながら、紙の本の手触りが好きなので何時になることやらデス(笑)
      ありがとうございました(≧∇≦)
      2021/05/30
  • 印刷会社営業部で文芸書を担当している浦本は、印刷会社はメーカーだと言い、良い本を造る一員だと信じて仕事をしている。時にはその思いが強いあまり、タイトなスケジュールになるなど、周囲との軋轢を生むことも。しかしながらそんな浦本の想いに・・・
    作家や編集者を軸に、本をテーマにした小説は多くあるが、印刷会社の社員が主人公とは珍しい切り口では。新聞印刷の輪転機が新聞紙を刷っていく現場を思い出した。青臭くもあるが、本好きには楽しめるお仕事小説。

  • 本が好きなら、お勧めしたい本です。
    印刷会社の営業の視点で物語は進んでいきます。
    印刷会社がどんなことをしているのかがわかるお仕事の本の側面もありますが、主人公を含む人々の成長も当然描かれています。「本のメーカー」。言い得て妙だと思います。

    また、この本では、電子書籍も否定はしておらず、お互いの良いところを提案しています。
    2017年のアマゾンでの電子書籍読み放題の話題も盛り込んでいるあたり、本の転換点を示す良い本だと思います。

    すごいのは、奥付の前に本の制作に当たった人々の名前が載っている点。後書きで編集者の名前は出ることはあっても、印刷会社や製本会社の各々の役割の人の名前は出ないですね。映画だとエンドロールに沢山の人々の名前が出ることが普通なのに、本だと出ない。まさしく「本のエンドロール」です。
    本の制作に携わっていただいている全ての人々に感謝!

  • 来年の本屋大賞に選ばれる可能性が高いので、
    そういう本を読むのが好きな方は、今のうちに読んでおくといいかも。

    読みながら、小学生の時「大きくなったら本を作る会社で働きたい(特に講談社!)」と言ったことを思い出しました。
    たぶん、男の子が野球の選手になりたいとか、女の子がケーキ屋さんになりたいとか、そういうレベル。
    その後、数々の読書感想文にめっちゃ低い点数をつけられたことで、ちゃんと現実を知った自分。

    大人になって実際に出版社に勤めている人と話すことがあって
    「こういう仕事やるもんじゃない!」
    と言われて
    「いやいや、ご謙遜でしょう」
    と思っていましたが、この本を読んで「本当に大変なんだなあ」と思いました。

    でも一つの目標に向かって皆で頑張っていく姿は、
    自分にもあてはまることがあり、
    「よし、頑張ろう」と思えました。
    だから読んで良かった。

    「夢を追いかける」考えました。
    趣味と実益を兼ねるということですが、それは難しいと私は思う。
    好きなことを極めようと努力すればするほどゴールが遠くなっていくような気がする。
    好きなことは好きなことで仕事にはしない。
    仕事は好きで始めたことではなくても、やるべきことをきちんとこなしていくと、そのなかに楽しいこと嬉しいこと、そして夢が見つかると思う。
    ただ、それでも自分の好きなことでやっていく、と決めたら、
    ぜったいに周りに迷惑かけてはいけないとこの本を読んで思いました。

    また、どうして私が紙の本を読み続けるかというと、
    『美女と野獣』のベルが本を読んでいるからです。
    電子書籍を読む素敵な人が現れたら、私もそっちに行くかも?

  • 「届け。本を愛するすべての人に。」この帯を見て、本好きなら読まずにいられようか。本を“作る”人、“造る”人。本が私たち読者の手に届くまでに、たくさんの人たちが関わっている。知っているようで知らなかったことばかり。それぞれの立場からそれぞれの矜持をもって本の誕生に立ち会う人たちの物語。この本には巻末にエンドロールが付いている。いつもは奥付の向こうにいる人たちの名前を見て、じんわり胸が熱くなる。本を愛するすべての人にお勧めです。

  • お仕事小説である。
    主人公は中堅印刷会社の営業職を務める浦本学。
    彼が関わった本、1冊1冊が出版されるまでのドラマを追う。

    本を書くのはもちろん著者だが、「本」という形になって世に送り出されるまでには、多くの工程がある。
    著者が書きたいものを具体的に練り上げる手助けをする編集。
    書きあがったものに誤字・脱字、意味の通らない箇所はないかチェックする校正。
    版を組み上げ、印刷できる形にするDTP。
    実際に紙に刷っていく印刷。
    刷りあがったものを本の形にする製本。
    そして各書店に運ぶ流通、書店等での販売となる。

    浦本の仕事は、いわば出版社と印刷会社との間の調整役で、著者の原稿を受け取り、スケジュールを組んで刊行日までに滞りなく本を作り上げる役割を担う。
    何ということはないようにも聞こえるが、多くの本を担当する印刷営業はてんてこ舞いである。ときには原稿が遅れ、ときには機械が故障し、ときには特殊な印刷技術が要求され、ときには著者の希望で体裁ががらりと変わり、そのたびに右往左往しなくてはならない。あちらに頭を下げ、こちらを少し遅らせてもらい、別のところには原稿を催促し、板挟みになりつつ、何とか日々の業務を回していく。

    浦本は元々、「本が作りたい」という希望で大手から中堅に移ってきている。夢を持ち、反面、危なっかしさもあるが、熱意と希望を持って本を送り出していく。
    その彼が牽引役となって、読み心地のよい作品である。
    浦本を軸に、さまざまな職業人が描き出される。職人気質のベテラン印刷オペレーター。前のめり過ぎる出版社編集者。重版がかからないことに苛立っている著者。「本の虫」でDTPが天職と感じているDTPオペレーター。家庭生活がぎくしゃくしている浦本と同期の印刷担当。
    彼らが仕事に向かう姿勢にもそれぞれ「温度差」がある。夢がなくては気持ちがくすむが、往々にして夢では食べていけない。そんなジレンマもある。
    章ごとに、タイトルに示された本が出版されるまでを描く、連作短篇としても読めるが、全体として、「紙の本」を作り出すということはどういうことかがよくわかる作りになっている。さまざまな人の人間模様も盛り込み、そのままドラマにもなりそうな1作である。

    本ができるまでの工程というのは意外に知られていないという。本作は各部署の仕事内容をかなり突っ込んで描いており、ドキュメンタリーのようにも読める。終盤の印刷工場シーンは、読む「工場見学」のようでなかなか興味深い。
    一方で、「紙の本」が直面する問題にも触れている。ジリ貧になりつつある現状を、どうやって乗り切っていくのか。電子書籍もシェアを伸ばしつつある昨今、「紙の本」は本当に消えてしまうのか。「本」の未来はどうなっていくのか。
    そしてあがき、奮闘する浦本たちを見ているうち、ひいては、働くということそのものにも思いはつながっていく。どんな仕事であれ、迷いや苛立ちや焦りはある。自分は何のために働いているのか、そう思うときはあるはずだ。
    浦本のたどり着く結論は、すべてを解決するわけではないけれども、読者の胸にほんのりと灯りをともす。

    「本のエンドロール」とは奥付のことを指す。映画のエンドロールであれば、キャストやスタッフが延々と流れるところだが、本の場合は通常、著者・発行者・発行所・印刷所・製本所の形で記載される。だがその陰には、多くの人の血と汗と熱意がこもっている。
    本書では奥付の手前に、1つ仕掛けがある。本文を読み通し、著者による謝辞も読んだ後、このページを目にすると胸が熱くなる。

  • みんなこの本読もうぜ。本好きなら読むべきだ。
    出版不況と言われて久しいですが、これからは隆盛になることはまず無く、どんどん衰退していく事でしょう。悲しいけれど、この本も本好きにしか届かずに終わる本です。
    電車の中で見回すと自分以外誰も本を読んでいない事が有ります。ずっと本を読んできた身からするとちょっとしたホラーです。
    紙だ電子だと本の形態で色々言っていますが、そもそも小説を書く人も読む人も将来いなくなるのではないかととても怖いです。商売にならなければやる人もいないわけで、小説よりも漫画やアニメの方がまだ続いて行きそうですからね。
    この本相当な熱量で印刷会社について書かれています。本をずっと愛してきた僕らも出版小説どまりで、印刷製本に目を向けたことは無かったのではないでしょうか。
    どんな本も色々な工程、手を経て僕らの元に届きます。そんな単純な事に思い至らなかった僕自身に呆れました。この本を読むと本そのものへの愛情がふつふつと湧いてくるのを感じます。
    それにしても図書館や本屋に行くと読書好きが沢山居て、ブクログにもこんなに沢山本読む人が居るのに、何でこんなに周囲に本読む人が居ないんだろうか。うちは夫婦で本読みなので本当に幸せ。あとは本が無くならず残ってくれさえすれば。。。

  • 名前も知らない作家さんでしたが(失礼な事言ってすみません)読んでよかった。この出会いに感謝します。また読んでみたい作家さんです。
    私は本が好きです。活字中毒と言ってもいいくらい。でも本作りのことは知らなかったのでとても面白く読みました。基本的に本は買わずに図書館で借りることが多いので、出版業界には貢献してなくて申し訳ないです。でも本は紙ベースで読みたい!紙ベースの本は無くならないでもらいたいです。

  • 印刷会社の営業・浦本学。本が売れなくなり、電子書籍が増え、斜陽産業だと言われても、浦本は働く、職人たちも働く、必要とされる人がいる限り。本ができるまでの苦難・ドラマを描く。
    私は本を読むことが好きです。作家さんがいて、出版社さんがいて、そして一番本のことで足しげく通うのは本屋さん。本屋さんの売る努力をお店にて感じるが、この本は今まで知る機会がなかった印刷会社さんの働きのワンシーン、苦労を見て、本を作ることへの熱い熱い思いをガツンと受け取りました。目立たぬところで非常に熱かった。電子書籍に馴染めない私としては、紙の書籍を作り上げてくださる方々に大いに感謝したい。そういった印刷所の舞台を知るだけでなく、営業・浦本の成長や、社員の人間ドラマも見所です。仕事小説みたいだけれど、仕事とか生き方とかメッセージが込められて。読んでいて付箋を貼り線を引っ張りたくなるフレーズがたくさんありました。何度も読み返したい。本を手に取るときに重みが変わったわ。

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著者プロフィール

1977年生まれ、福岡県出身。早稲田大学政治経済学部卒業。2007年、『被取締役新入社員』でTBS・講談社第一回ドラマ原作大賞を受賞しデビュー。その他の著書に『六畳間のピアノマン』『夢は捨てたと言わないで』『不惑のスクラム』『テノヒラ幕府株式会社』『一〇〇〇ヘクトパスカル』『宝くじが当たったら』『大翔製菓広報宣伝部 おい! 山田』『営業零課接待班』などがある。


「2021年 『本のエンドロール』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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