本のエンドロール

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (386ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062209885

作品紹介・あらすじ

印刷会社の営業・浦本は就職説明会で言う。「印刷会社はメーカーです」
営業、工場作業員、DTPオペレーター、デザイナー、電子書籍製作チーム。構想三年、印刷会社全面協力のもと、奥付には載らない本造りの裏方たちを描く、安藤祐介会心のお仕事小説。

感想・レビュー・書評

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  • 仕事とは何か?何のために仕事をするのか?
    永遠のテーマだと思います。
    夢を持って入社してくる人もいれば、お金のためと割り切って仕事をする人もいる。好きなことを仕事にしたいと会社を辞める人もいれば、好きなことを仕事にするのは難しいと言って辞める人もいる。
    仕事をしていると、家にいるよりも職場にいる時間の方が長い、という人が大半ではないでしょうか?
    それだけ、仕事とはその人の人生や心の中の大部分を占めるものなのだと思います。
    それぞれの仕事への向き合い方の違いから、初めは衝突ばかりしていたこの物語の登場人物たち。
    しかし、良い本を造るという同じ目的に向かって進むうちに、自分の中での“仕事とは?“が確立されていく。とても爽やかなお仕事小説でした。
    私たちが大好きな“本“がどんな風に出来上がっていくのかがとてもよく分かったし、これからは読書する度に本のエンドロール(奥付け)をじっくり見てしまいそうです。
    そして、元々私は本を読みながら何度も表紙を見る人なのですが、これからはますますじっくり眺めてしまうと思います。

  • お仕事小説やっぱ( ・∀・)イイ!!

    特にニッチなところに突っ込んで頂いて、普段あまり馴染みの無いお仕事に触れられたりするとなお( ・∀・)イイ!!

    そんなワタクシの身勝手な希望に沿って頂いたばかりか、加えて本好きにはたまらない「本」の印刷会社のお話

    うーん、真新しいインクの臭いが香るような一冊です
    あの香り好きでしょう
    そうでしょう、そうでしょう

    そして題名の『本のエンドロール』とは奥付のことを指しているとのことなんですが、普段奥付って見ます?
    あ、奥付って一番最後にある出版社とか書いてあるあのページね
    正直自分は見るのが当たり前だったので、本作を読んで読まない人がほとんどってことに衝撃を受けました
    あれ読んだほうが1.07倍くらい楽しいのに(微妙だなおい)

    また、本作では「本」の印刷会社さんが絶対避けて通れない電子書籍問題も取り上げてましたね
    ところでみなさんは電子書籍派?紙の本派?それとも併用派?

    わたしはもう圧倒的に紙の本派です!もう電子書籍は「本」として認めないってくらいの極右です(え?そもそも紙の本派って右派なの?)
    なんならもう街宣車で出版社の玄関先に乗り込みたいくらいです
    紙の本3,000冊くらい人質にとってあさま山荘に立て籠もりたい(それは反対方向)

    などと少々物騒なことを申しましたが、ほんとはこんなこと言う資格ないんですよね
    ぜんぜん新しい本買ってないので…

    ほんとごめんなさいm(_ _;)m

    一番下の娘が大学卒業して、家のローンが終わったらたくさん買うので、それまで紙の本頑張って持ちこたえて!

    • おびのりさん
      寡黙が美徳って葉隠にあったから(´ー`)
      寡黙が美徳って葉隠にあったから(´ー`)
      2023/06/07
    • ひまわりめろんさん
      ウォシュレット派か紙派かの話しになっとるやないか!(なってない)
      ウォシュレット派か紙派かの話しになっとるやないか!(なってない)
      2023/06/08
    • 1Q84O1さん
      それでも紙派!
      それでも紙派!
      2023/06/08
  •  いい本だった!!
     まず、この本の奥付の一つ手前のページを開いてみる。そこには映画のエンドロールのように、この本の制作に携わったスタッフ一人ひとりの役割と名前が記されている。名前の挙げられたスタッフのそれぞれ担当した仕事は次の仕事
    印刷営業、本文進行管理、装丁進行管理、色校正、組版進行管理、オペレーター、校正、本文面付、装幀下版、刷版、本文印刷機長、印刷オペレーター、装幀印刷機長、表面PP加工、製本進行管理、仮固め、三方断裁、背固め・くるみ、仕上げ、表紙貼り、断裁、スリップ・ハガキ印刷、束見本作成、配送、配本。
     本には奥付があり、そこには著者名、発行者・発行所名、印刷所名、製本所名は記されているが、印刷所、製本所で働く、営業マン、印刷オペレーター、インク調合職人、組版オペレーターなど、一つ一つの仕事に携わった人の名前は記されていない。
     この小説の主人公、浦本学は図書の印刷を主に行う印刷会社の営業マンで、「いい本を作りたい。」「印刷会社はメーカーだ。」と熱い思いを持って働いている。
     そんな浦本を冷ややかに見つめる同僚たち。浦本が出版社の編集者や著者からの無理難題を断れず、自社工場に持ち帰るたびに、工場の機械の稼働スケジュールを大幅変更せねばならず、印刷オペレーターをイライラさせ、「お前はただの伝書鳩か。」と罵られる。先輩には「印刷会社はクライアントか言われた仕事を間違いなく、滞りなく達成することが大事。」「印刷機の稼働を止めないことが大事。理想ばかり掲げるな。」と釘を刺される。
     だけど、浦本は作家や編集者の本に対する熱い思いを聞くと、「一緒に素晴らしい本を作りましょう」とついつい企画を膨らませ、あとで工場のほうで収集のつかないことになり、クライアントと自社の上司や工場スタッフの板挟みになり、頭を下げまくっている。
     初めて文芸書を担当することになった若手編集者の情熱にほだされて、著名な装幀家の無理な注文を受けてきたが、途中で編集者がストレスで逃げ出し、印刷会社の営業マンである浦本が直接、装丁家の注文を受けねばならない事態になったこともある。
     簡単に、全面企画変更を打ち出してくる横柄な装丁家に“歯車”呼ばわりされる、インク調合職人、ジロさんの次の言葉がかっこ良かった。
    「歯車がいなければ、アイデアは形にならない。絵に描いた餅と同じてをすわな。」
     色々な人が本造りに携わっている。金のためだけに働いている印刷オペレーター。「日々の仕事を卒なくこなすこと」が夢の営業の先輩。子供のころから本だけが友達で、今“天職”に付いていると自覚している組版オペレーター。そして、自分自身に技術はないが、良い本を作りたい思いを形にするため、日々、著者、編集者と工場との調整に追われる浦本のような営業マン。良い作家をこの世に出すために時には作家にも厳しく、印刷会社には横柄気味に無理難題を押し付ける編集者。そして、本がこの世に生まれた後、ポップを作ったりして販売に協力してくれる書店員。
     こんなにも数々の人々が、日々、葛藤し、ぶつかり、謝ったりしながら難問を一つ一つ解決し、新しい本を生み出している。今は「いつか、本がこの世から無くなるかもしれない。その時、自分たちはどうやって生きていこう」という不安に苛まれながらも、夢の本を作っている。
     モノ作りって本当にいい!一人でモノを作るのもいいけれど、多くの人が一丸となって…いや、一丸となれる前に右往左往しながら、最終的に一つの物を作っていくのって本当に感動的。
     浦本さん、あなたたちの日々の頑張りがある限り“紙の本”というモノはこの世から無くなりませんよ。応援してます。










  • 印刷会社はただ印刷するだけの会社だと思っていた、本を読む前の私をはたきたい。
    印刷会社のおかげで、素敵な装丁の本が読めて、素敵な世界に触れることができている。
    本には、出版社だけでない、むしろ印刷会社のこだわりがいっぱい詰まっている。
    そのこだわりと、印刷という魅力、印刷現場で働く人の情熱を教えてくれる作品。
    もはや職人である。本当に。

    今まで、本を「パケ買い」するなどありえないと思っていた。
    本は作家とあらすじ、あとぱらぱらと読んでみて購入を決めてきた。
    だけど、本の「パッケージ」には本当にこだわりがあることを知った。力が入っていたら、それは間違いなく「売りたい」の気持ちが強く入っている本だ。
    これからはデザインに惹かれたら内容問わずに「パケ買い」もしてみようと思った。


    ちょっと話は逸れるが、米津玄師さんのアルバム「STRAY SHEEP」の限定盤は「印刷屋泣かせ」だと聞いたことがある。
    米津玄師さんのアートの作品をじっくり見たくて発売当初に限定盤を買っているが、この本を読んだ後にじっくりと印刷屋の「作品」を「鑑賞」した。


    編集者や作家は確かに「花形」の職業だけれど、
    出版社にはほかの部署も魅力的だ。
    出版社で働くことに興味のある人や就活生にぜひ読んでもらいたい。
    電子書籍のことなどの「内情」も詳しく知ることができた。

    これが本屋大賞(2019年)の「11位」だなんて。
    ランクインした作品はもちろん素晴らしい作品だけれど、あと1歩のところでこの作品に注目を集められなかったのは、この本に携わった関係者の方々にとっては本当に…本当に、残念なことだっただろう。

  • 今までは本を読み終えると、一応奥付けまでは見るが、発行所と日付ぐらいにしか注意を払ってこなかった。一冊の本が生まれるまでに、作家さんだけでなく印刷所で働く諸々の人々の力が集結されていると、あらためて思い知った。営業、工場作業員、DTPオペレーター、デザイナーなど。映画と同じように「エンドロール」に書かれない人々の色んな思いが籠められていた。実際、本書にはページを割いて、刊行までに携わったスタッフ全員の名前が表記されているのだ。本作りにはこれだけの人々が携わっていたとは! 本書を読むと、いつか紙の本が消えなくとも廃れてゆくと予想される出版業界の人々の呻きが聞こえて来る。
    本書では電子書籍製作チームも出て来て、そこで働く人々の葛藤も描かれている。真に迫るものがあった。私も電子書籍はほとんど読んだことがない。紙の本を当たり前と思って来たが、読者の私でさえ紙の本が衰退の方向にあるのは漠然と分かっている。コロナをきっかけに、当地・市立図書館にも電子書籍の貸し出しが春から始まった。いよいよ地方都市にも波が押し寄せたと半分は喜ぶ気持ちもある。片や、ほとんどを図書館の本で間に合わせている私は、申し訳ない気持ちにもなった。本を読むだけでなく、金銭で売買される行為があって初めて書籍を支えていることにもなるのかもしれない。(本書にもあった豪華な装丁の本を購入する気はさらさら湧かないが)
    学生を前に、会社説明会で「豊澄印刷会社はメーカーだ」と思わず口走った営業部の浦本君、毎日ブルーベリーを飲んで目の衰えを防ごうとしている職人さん。
    『廃れゆくことは敗れることではない。廃れゆくものを守る人間もまた必要なのだ。そんな仕事だからこそ、好きでなければ続けていれないと思うのだ。そこにあるのは悲壮感ではなく、作り続けることへの誇りや日々の達成感。完成を待つ本が絶えない間は、本が消えてゆく恐怖に慄いている暇などない。自ら選び取った場所で縁を得た人たちと、これからも本を造っていくのだ』
    彼らの気概に感謝するしかない。
    機械は動き続ける。電子化の波が押し寄せ、斜陽産業と言われようとも、この世に本がある限り。作家が物語を紡ぐ。編集者が編み、印刷営業が伴走する。完成した作品はオペレーターにレイアウトされ、版に刷られ、紙に転写される。製本所が紙の束を綴じ、"本"となって書店に搬入され、ようやく私たちに届く。奥付に載らない本造りの裏方たちを描く安藤祐介さん会心のお仕事小説です。

    ※福原さんが言った言葉に深く深く頷いた。『他人の努力や悲しみを借りて涙することを好まない』。そうだよね、福原さん! 私もまったく同じです。

    • アールグレイさん
      初めまして!
      ゆうママと申します。
      突然に失礼致します。
      私は、電子書籍を嫌っている人間です。古いと言われるかも知れませんが、本は紙のページ...
      初めまして!
      ゆうママと申します。
      突然に失礼致します。
      私は、電子書籍を嫌っている人間です。古いと言われるかも知れませんが、本は紙のページをめくって読むのが本だと思うのです。「半分読んだかな、あと数ページで読み終わるな~」という感じは、やはり紙の本だと。
      私は、東京郊外で市内に図書館は4つありますが、電子書籍はまだのようです。
      大変失礼しました。
      しずくさん、またレビューを読ませて下さいね!
      m(__)m
      2021/05/30
    • しずくさん
      コメントをありがとうございます!
      電子書籍化は紙の本愛読者としてはとても辛いですよね。東京近郊にお住まいのゆうママさんの所では未だなのです...
      コメントをありがとうございます!
      電子書籍化は紙の本愛読者としてはとても辛いですよね。東京近郊にお住まいのゆうママさんの所では未だなのですか。。。いっぺんも利用していませんが、頭から決め込まずに取りあえず実践してみるのも手かなとも思っています。といいながら、紙の本の手触りが好きなので何時になることやらデス(笑)
      ありがとうございました(≧∇≦)
      2021/05/30
  • 印刷会社営業部で文芸書を担当している浦本は、印刷会社はメーカーだと言い、良い本を造る一員だと信じて仕事をしている。時にはその思いが強いあまり、タイトなスケジュールになるなど、周囲との軋轢を生むことも。しかしながらそんな浦本の想いに・・・
    作家や編集者を軸に、本をテーマにした小説は多くあるが、印刷会社の社員が主人公とは珍しい切り口では。新聞印刷の輪転機が新聞紙を刷っていく現場を思い出した。青臭くもあるが、本好きには楽しめるお仕事小説。

  • たくさんの人がいろんな工程を経て思いをのせた本。普段は図書館で借りることが多いけれど、読書の日にでも、とっておきの本を一冊考えて購入しようと思った。「本の宝箱」のような。

  • 奥付
    本の誕生に関わる人達
    見えないものを繋ぐ

    お仕事小説です。
    時間とお金と労力と想いが、ギリギリのところで折り合う。
    読みごたえありました。
    図書館から借りた本。

  • 「届け。本を愛するすべての人に。」この帯を見て、本好きなら読まずにいられようか。本を“作る”人、“造る”人。本が私たち読者の手に届くまでに、たくさんの人たちが関わっている。知っているようで知らなかったことばかり。それぞれの立場からそれぞれの矜持をもって本の誕生に立ち会う人たちの物語。この本には巻末にエンドロールが付いている。いつもは奥付の向こうにいる人たちの名前を見て、じんわり胸が熱くなる。本を愛するすべての人にお勧めです。

  • 表紙が写真だったので、ノンフィクションだと思って買いました。「営業零課」の作者さんだと読了後に知りました。
    骨太でした。こっちの方が好きだわ。
    印刷って…写す仕事でしょ?
    いやいや、全然違う!指示の通りやる、のにも門外漢には分からない問題が山のようにあるし、その指示が直前でひっくり返る!!わがまま言うな!なんて言わない。フラフラになりながらあっちと折衝、こっちを説得。退社後にトラブルで呼び出され、業界全体は右肩下がりで先行き不安。
    でも、やる。本を届けたいから。
    数えきれないぐらいの人の手を経て、届けられる本。を、ブックオフで買うわたし。
    アカンやろ!!!!!!
    本買おう。ごめんなさい。
    奥付けに、たくさん人の名前があります。読み終わってから見ると、込み上げてくるものがあります。
    本買おう。
    いや、でも、全部定価で買うと破産しちゃうので、ほんとごめんなさい。ボーナス月に買うとか、誕生日に買うとか、なんか、そんな感じで。
    みんなびんぼがわるいんや…

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著者プロフィール

安藤祐介
一九七七年生まれ。福岡県出身。二〇〇七年『被取締役新入社員』でTBS・講談社第一回ドラマ原作大賞を受賞。同書は森山未來主演でドラマ化もされ、話題を呼んだ。近著に『本のエンドロール』『六畳間のピアノマン』『就活ザムライの大誤算』などがある。

「2023年 『崖っぷち芸人、会社を救う』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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