本のエンドロール

著者 :
  • 講談社
4.10
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本棚登録 : 782
レビュー : 114
  • Amazon.co.jp ・本 (386ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062209885

作品紹介・あらすじ

印刷会社の営業・浦本は就職説明会で言う。「印刷会社はメーカーです」
営業、工場作業員、DTPオペレーター、デザイナー、電子書籍製作チーム。構想三年、印刷会社全面協力のもと、奥付には載らない本造りの裏方たちを描く、安藤祐介会心のお仕事小説。

感想・レビュー・書評

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  • 印刷会社営業部で文芸書を担当している浦本は、印刷会社はメーカーだと言い、良い本を造る一員だと信じて仕事をしている。時にはその思いが強いあまり、タイトなスケジュールになるなど、周囲との軋轢を生むことも。しかしながらそんな浦本の想いに・・・
    作家や編集者を軸に、本をテーマにした小説は多くあるが、印刷会社の社員が主人公とは珍しい切り口では。新聞印刷の輪転機が新聞紙を刷っていく現場を思い出した。青臭くもあるが、本好きには楽しめるお仕事小説。

  • 本が好きなら、お勧めしたい本です。
    印刷会社の営業の視点で物語は進んでいきます。
    印刷会社がどんなことをしているのかがわかるお仕事の本の側面もありますが、主人公を含む人々の成長も当然描かれています。「本のメーカー」。言い得て妙だと思います。

    また、この本では、電子書籍も否定はしておらず、お互いの良いところを提案しています。
    2017年のアマゾンでの電子書籍読み放題の話題も盛り込んでいるあたり、本の転換点を示す良い本だと思います。

    すごいのは、奥付の前に本の制作に当たった人々の名前が載っている点。後書きで編集者の名前は出ることはあっても、印刷会社や製本会社の各々の役割の人の名前は出ないですね。映画だとエンドロールに沢山の人々の名前が出ることが普通なのに、本だと出ない。まさしく「本のエンドロール」です。
    本の制作に携わっていただいている全ての人々に感謝!

  • 来年の本屋大賞に選ばれる可能性が高いので、
    そういう本を読むのが好きな方は、今のうちに読んでおくといいかも。

    読みながら、小学生の時「大きくなったら本を作る会社で働きたい(特に講談社!)」と言ったことを思い出しました。
    たぶん、男の子が野球の選手になりたいとか、女の子がケーキ屋さんになりたいとか、そういうレベル。
    その後、数々の読書感想文にめっちゃ低い点数をつけられたことで、ちゃんと現実を知った自分。

    大人になって実際に出版社に勤めている人と話すことがあって
    「こういう仕事やるもんじゃない!」
    と言われて
    「いやいや、ご謙遜でしょう」
    と思っていましたが、この本を読んで「本当に大変なんだなあ」と思いました。

    でも一つの目標に向かって皆で頑張っていく姿は、
    自分にもあてはまることがあり、
    「よし、頑張ろう」と思えました。
    だから読んで良かった。

    「夢を追いかける」考えました。
    趣味と実益を兼ねるということですが、それは難しいと私は思う。
    好きなことを極めようと努力すればするほどゴールが遠くなっていくような気がする。
    好きなことは好きなことで仕事にはしない。
    仕事は好きで始めたことではなくても、やるべきことをきちんとこなしていくと、そのなかに楽しいこと嬉しいこと、そして夢が見つかると思う。
    ただ、それでも自分の好きなことでやっていく、と決めたら、
    ぜったいに周りに迷惑かけてはいけないとこの本を読んで思いました。

    また、どうして私が紙の本を読み続けるかというと、
    『美女と野獣』のベルが本を読んでいるからです。
    電子書籍を読む素敵な人が現れたら、私もそっちに行くかも?

  • 「届け。本を愛するすべての人に。」この帯を見て、本好きなら読まずにいられようか。本を“作る”人、“造る”人。本が私たち読者の手に届くまでに、たくさんの人たちが関わっている。知っているようで知らなかったことばかり。それぞれの立場からそれぞれの矜持をもって本の誕生に立ち会う人たちの物語。この本には巻末にエンドロールが付いている。いつもは奥付の向こうにいる人たちの名前を見て、じんわり胸が熱くなる。本を愛するすべての人にお勧めです。

  • お仕事小説である。
    主人公は中堅印刷会社の営業職を務める浦本学。
    彼が関わった本、1冊1冊が出版されるまでのドラマを追う。

    本を書くのはもちろん著者だが、「本」という形になって世に送り出されるまでには、多くの工程がある。
    著者が書きたいものを具体的に練り上げる手助けをする編集。
    書きあがったものに誤字・脱字、意味の通らない箇所はないかチェックする校正。
    版を組み上げ、印刷できる形にするDTP。
    実際に紙に刷っていく印刷。
    刷りあがったものを本の形にする製本。
    そして各書店に運ぶ流通、書店等での販売となる。

    浦本の仕事は、いわば出版社と印刷会社との間の調整役で、著者の原稿を受け取り、スケジュールを組んで刊行日までに滞りなく本を作り上げる役割を担う。
    何ということはないようにも聞こえるが、多くの本を担当する印刷営業はてんてこ舞いである。ときには原稿が遅れ、ときには機械が故障し、ときには特殊な印刷技術が要求され、ときには著者の希望で体裁ががらりと変わり、そのたびに右往左往しなくてはならない。あちらに頭を下げ、こちらを少し遅らせてもらい、別のところには原稿を催促し、板挟みになりつつ、何とか日々の業務を回していく。

    浦本は元々、「本が作りたい」という希望で大手から中堅に移ってきている。夢を持ち、反面、危なっかしさもあるが、熱意と希望を持って本を送り出していく。
    その彼が牽引役となって、読み心地のよい作品である。
    浦本を軸に、さまざまな職業人が描き出される。職人気質のベテラン印刷オペレーター。前のめり過ぎる出版社編集者。重版がかからないことに苛立っている著者。「本の虫」でDTPが天職と感じているDTPオペレーター。家庭生活がぎくしゃくしている浦本と同期の印刷担当。
    彼らが仕事に向かう姿勢にもそれぞれ「温度差」がある。夢がなくては気持ちがくすむが、往々にして夢では食べていけない。そんなジレンマもある。
    章ごとに、タイトルに示された本が出版されるまでを描く、連作短篇としても読めるが、全体として、「紙の本」を作り出すということはどういうことかがよくわかる作りになっている。さまざまな人の人間模様も盛り込み、そのままドラマにもなりそうな1作である。

    本ができるまでの工程というのは意外に知られていないという。本作は各部署の仕事内容をかなり突っ込んで描いており、ドキュメンタリーのようにも読める。終盤の印刷工場シーンは、読む「工場見学」のようでなかなか興味深い。
    一方で、「紙の本」が直面する問題にも触れている。ジリ貧になりつつある現状を、どうやって乗り切っていくのか。電子書籍もシェアを伸ばしつつある昨今、「紙の本」は本当に消えてしまうのか。「本」の未来はどうなっていくのか。
    そしてあがき、奮闘する浦本たちを見ているうち、ひいては、働くということそのものにも思いはつながっていく。どんな仕事であれ、迷いや苛立ちや焦りはある。自分は何のために働いているのか、そう思うときはあるはずだ。
    浦本のたどり着く結論は、すべてを解決するわけではないけれども、読者の胸にほんのりと灯りをともす。

    「本のエンドロール」とは奥付のことを指す。映画のエンドロールであれば、キャストやスタッフが延々と流れるところだが、本の場合は通常、著者・発行者・発行所・印刷所・製本所の形で記載される。だがその陰には、多くの人の血と汗と熱意がこもっている。
    本書では奥付の手前に、1つ仕掛けがある。本文を読み通し、著者による謝辞も読んだ後、このページを目にすると胸が熱くなる。

  • みんなこの本読もうぜ。本好きなら読むべきだ。
    出版不況と言われて久しいですが、これからは隆盛になることはまず無く、どんどん衰退していく事でしょう。悲しいけれど、この本も本好きにしか届かずに終わる本です。
    電車の中で見回すと自分以外誰も本を読んでいない事が有ります。ずっと本を読んできた身からするとちょっとしたホラーです。
    紙だ電子だと本の形態で色々言っていますが、そもそも小説を書く人も読む人も将来いなくなるのではないかととても怖いです。商売にならなければやる人もいないわけで、小説よりも漫画やアニメの方がまだ続いて行きそうですからね。
    この本相当な熱量で印刷会社について書かれています。本をずっと愛してきた僕らも出版小説どまりで、印刷製本に目を向けたことは無かったのではないでしょうか。
    どんな本も色々な工程、手を経て僕らの元に届きます。そんな単純な事に思い至らなかった僕自身に呆れました。この本を読むと本そのものへの愛情がふつふつと湧いてくるのを感じます。
    それにしても図書館や本屋に行くと読書好きが沢山居て、ブクログにもこんなに沢山本読む人が居るのに、何でこんなに周囲に本読む人が居ないんだろうか。うちは夫婦で本読みなので本当に幸せ。あとは本が無くならず残ってくれさえすれば。。。

  • 名前も知らない作家さんでしたが(失礼な事言ってすみません)読んでよかった。この出会いに感謝します。また読んでみたい作家さんです。
    私は本が好きです。活字中毒と言ってもいいくらい。でも本作りのことは知らなかったのでとても面白く読みました。基本的に本は買わずに図書館で借りることが多いので、出版業界には貢献してなくて申し訳ないです。でも本は紙ベースで読みたい!紙ベースの本は無くならないでもらいたいです。

  • 印刷会社の営業・浦本学。本が売れなくなり、電子書籍が増え、斜陽産業だと言われても、浦本は働く、職人たちも働く、必要とされる人がいる限り。本ができるまでの苦難・ドラマを描く。
    私は本を読むことが好きです。作家さんがいて、出版社さんがいて、そして一番本のことで足しげく通うのは本屋さん。本屋さんの売る努力をお店にて感じるが、この本は今まで知る機会がなかった印刷会社さんの働きのワンシーン、苦労を見て、本を作ることへの熱い熱い思いをガツンと受け取りました。目立たぬところで非常に熱かった。電子書籍に馴染めない私としては、紙の書籍を作り上げてくださる方々に大いに感謝したい。そういった印刷所の舞台を知るだけでなく、営業・浦本の成長や、社員の人間ドラマも見所です。仕事小説みたいだけれど、仕事とか生き方とかメッセージが込められて。読んでいて付箋を貼り線を引っ張りたくなるフレーズがたくさんありました。何度も読み返したい。本を手に取るときに重みが変わったわ。

  • プロローグ
    『スロウスタート』
    『長篠の風』
    『ペーパーバック・ライター』
    『サイバー・ドラック』
    『本の宝箱』
    エピローグ

    帯に本書が出来るまでの動画QRコードあり。

    心がじーん…と、熱くなるお仕事小説。
    浦本(営業)、野末(ムツゴロウ・工場)、仲井戸(営業トップ)、福原(笑美りん)、ジロさん、臼田(デザイナー)、奥平(オウヘイ)、キュウさん、デクノ(デクノボー)


    わからないこと、ピンとこないことは検索して調べながら読みました。『ブックデザイナー・名久井直子が訪ねる 紙ものづくりの現場から』とか『装丁道場』とかと一緒に読むと分かりやすいと思う。特に名久井さんの本とセットで読むと面白さは増すと思います。

    一日目で面白い!と気がつき、二日目で200ページくらい一気に読んで、『本の宝箱』は勿体ないので、ゆっくりと。

    登場人物がみな素敵ですが、仲井戸、笑美りんとキュウさんとデクノ、ジロさんが好き。仲井戸の昔とか、毛利部長物語、ジロさんキュウさん時代も読みたい。あと製本会社の話を、もっと知りたいと思った。シリーズ化でもないけど、そういうのを読んでみたい。

    そしてこうして出来上がった本が、一人一人の読者の元に届くまでに、たくさんの人々がかかわって一冊の本という形になっているということに、あらためて感謝する気持ちが強くなりました。

    本造りの裏側で何が起きているのか? 『本のエンドロール』安藤祐介が考える本の在り方→ https://xn--nckg3oobb0816d2bri62bhg0c.com/interview53-anndouyuusuke/

  • 本が好きで、本に携わる仕事をしていたので、とってもとっても楽しめました。今は離れてしまっているけど、いずれどんな形になるかわからないけれど、また本に関わる仕事がしたいと改めて思いました。

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著者プロフィール

安藤 祐介(あんどう ゆうすけ)
1977年生まれ、福岡県出身。早稲田大学政治経済学部卒業。2007年『被取締役新入社員』でTBS・講談社第一回ドラマ原作大賞を受賞。2018年9月から『不惑のスクラム』がNHKでドラマ化される。
その他の主著に『営業零課接待班』『本のエンドロール』などがある。

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