地球にちりばめられて

著者 :
  • 講談社
4.08
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本棚登録 : 891
レビュー : 61
  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062210225

作品紹介・あらすじ

留学中に自分の国が消えて帰れなくなってしまった女性Hirukoは、独自の言語を作り出し、ヨーロッパ大陸で何とか生活しようと奮闘していた。Hirukoはテレビ番組に出演したことがきっかけで、言語学を研究する青年クヌートと出会い、自分と同じ母語を話す者を探す旅に出る――。

感想・レビュー・書評

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  • 国、民族、言語、性…どれも境界がある物。でも、その境界は、これからどんどん溶け出してしまうのかな。
    『アイデンティティが人を殺す』で気づいた、複数の帰属先を持つことの意義。それが薄らいで、それが懐かしいと思える時代が来るのかな。
    そんなことを思わせたこの小説の著者、多和田葉子さんはドイツに拠点を構える作家。境界を考えるには、やっぱりアメリカよりヨーロッパなのかな。
    この小説を読んで、いろいろな思いが頭を駆け巡った。そして、その思いを文字にしようと思ったら、いつもと違う散文(駄散文?)になってしまった。これも、この本の持つ力のせいなのかな。

  • 普段海外文学しか読まない自分に誰かオススメの日本人作家いない?と友人に聞いたところ、多和田葉子さんの名前があがった。

    読んでみて、なるほど確かに海外文学好きな人に勧めるにはぴったりの日本人作家だと納得する一方で、まぎれもなくこれは日本文学だ、とも感じた。何をもって“日本文学”とするのか、特に自分の中で基準があるわけではない。ただなんとなく、BADHOP言うところの『内なるJ』というやつを文章の端々に感じるのかもしれない。とはいえ、それは全く悪い意味ではなく、むしろ自分にとって新鮮な感覚として味わえて嬉しかった。

    こうの史代さんの漫画「ぼおるぺん古事記」には、イザナミ・イザナキの最初の子、水蛭子(ひるこ)が葦舟で流される際に釣竿を持たされる描写がある。これは、巡り巡って蛭子→ゑびす様として祀られることの示唆なのだと思う。この本のHirukoにおける唯一の武器は釣竿ではなく、パンスカという独自の言語だ。海の向こうからやってきた客人神は、様々な人間を巻き込みながら自分と同じ母語を話す者を探し続ける。。。貴種流離譚というか、あらすじ自体は神話めいている。けれど実際は異人種の若者たちによる青春群像劇で、読み味はとても爽やか。

    全編にわたりパンチラインに満ちているので、最初のうちは感心していちいちメモをとっていたが、そのたび読書が止まるので途中からメモやめて読み進めるのに集中することにした。それくらいハッとするような文章が多い。

    続編もある?といくつかの感想に書かれていたので、楽しみに待つことにします!

    • Kamoshidhaさん
      多和田葉子さんは、ドイツ在住でドイツ語でも書いている方と記憶してます。書店の洋書売り場で働いていた頃に、なぜか日本人作家の中で、特にドイツ語...
      多和田葉子さんは、ドイツ在住でドイツ語でも書いている方と記憶してます。書店の洋書売り場で働いていた頃に、なぜか日本人作家の中で、特にドイツ語訳がたくさん出ていたので、気になって調べてみたことがありました。この記事を読み、この小説を読んでみようと思った。
      2019/05/18
  • Hirukoはヨーロッパ留学中に母国が崩壊し、同じ母語を話す人を探している。その旅に同行することになる様々バックボーンを持つ人たちが、各章ごとの語り手で話が進む。

    すれ違う言葉、言葉にまつわる会話がとてもおもしろい。イメージだけの日本文化、アレンジされた和食の違和感と可笑しさ、そこに消滅した母国、失われた文化の喪失感が重なり、なんとも不思議な読み心地だった。

    やっと見つけた同国人Susanooの故郷の福井県は「原発銀座」で有名になった。引き換えに漁業も農業も衰退し、過去の産業を伝えるのは故郷PR センターのロボットだけ。
    これは近未来なのか?現実味があり恐くなる。

    Susanooが歳を取らなくなったのは、社会の時間の枠組から外れ、まわりの人を基準にして自分の時間を計ることをしなくなったからではないかという。母国から切り離され、どこにも所属していない孤独感の現れなのだろうか。

    Hirukoの名前は神話のヒルコの意味だ。イザナギとイザナミの最初の子だが祝福されずに葦の舟に乗せられ海に流された。Hirukoが日本から離れて、国を失ったのと同じだ。

    Hirukoが生みだした共通言語パンスカは、国や民族の境界を曖昧にし、バックボーンの異なる人と繋がる未来を感じる。
    彼らの旅の先にあるものは何か、続きが読みたい。

  • 友人からの頂き物。
    読み終えて、この本を渡してくれる友人がいるのは幸せなことだなと思った。
    あちこち渡り歩いて来た中で出会った人というのも、今作と重なるところがあってより嬉しい。
    国がなくなったらしいHirukoが、移り行く先で人と出会い、出会った人もまた他の人と出会っていたりして、段々と共に行く人が増えながら旅をする。
    そして割と唐突に終わる。
    唐突なのだけど、充足した読後感だった。
    一つ一つのエピソードがとても良く、私の中に降り積もっていく。
    苦しいものも悲しいものも含まれているし、現実の大きな問題と結びついているもので単に心温まったで終われるような安易な作品では決してないのだけど、愛おしい。
    繰り返し再読したい作品だった。

  • おそらく未来の話。人間はどんなに進化しても、相変わらず自分の進路に悩み、性のあり方に偏見があり、母親の呪縛から逃れられない。

    ヒルコが誰だったか思い出したくて、古事記も読み返した。神話では「なかった」ことにされる存在が、この物語では強い光を放っている。

    終わり方がやや物足りなかったので、続編があると知ってうれしい。

  • 全米図書賞受賞作でブクログユーザーの評価が高く、期待して手にとりました。

    残念ながら、私には理解することが出来ませんでした。

    敢えて感想を記すとすれば、よく最後まで読みきったと言う事でしょうか...^^;

    いやぁ、まだまだ己の読解力の無さをただただ痛感させられた作品でした。

    説明
    内容紹介
    留学中に故郷の島国が消滅してしまった女性Hirukoは、大陸で生き抜くため、独自の言語〈パンスカ〉をつくり出した。Hirukoはテレビ番組に出演したことがきっかけで、言語学を研究する青年クヌートと出会う。彼女はクヌートと共に、この世界のどこかにいるはずの、自分と同じ母語を話す者を捜す旅に出る――。誰もが移民になり得る時代、言語を手がかりに人と出会い、言葉のきらめきを発見していく彼女たちの越境譚。


    留学中に故郷の島国が消滅してしまった女性Hirukoは、ヨーロッパ大陸で生き抜くため、独自の言語〈パンスカ〉をつくり出した。Hirukoはテレビ番組に出演したことがきっかけで、言語学を研究する青年クヌートと出会う。彼女はクヌートと共に、この世界のどこかにいるはずの、自分と同じ母語を話す者を捜す旅に出る――。

    誰もが移民になりえる時代に、言語を手がかりに人と出会い、言葉のきらめきを発見していく彼女たちの越境譚。
    内容(「BOOK」データベースより)
    留学中に故郷の島国が消滅してしまった女性Hirukoは、ヨーロッパ大陸で生き抜くため、独自の言語“パンスカ”をつくり出した。Hirukoはテレビ番組に出演したことがきっかけで、言語学を研究する青年クヌートと出会う。彼女はクヌートと共に、この世界のどこかにいるはずの、自分と同じ母語を話す者を捜す旅に出る―。言語を手がかりに人と出会い、言葉のきらめきを発見していく彼女たちの越境譚。
    著者について
    多和田 葉子
    多和田葉子(たわだ・ようこ)
    小説家、詩人。1960年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。ハンブルク大学大学院修士課程修了。文学博士(チューリッヒ大学)。1982年よりドイツに在住し、日本語とドイツ語で作品を手がける。1991年『かかとを失くして』で群像新人文学賞、1993年『犬婿入り』で芥川賞を受賞。2000年『ヒナギクのお茶の場合』で泉鏡花文学賞、2002年『球形時間』でBunkamuraドゥマゴ文学賞、2003年『容疑者の夜行列車』で伊藤整文学賞、谷崎潤一郎賞、2005年にゲーテ・メダル、2009年に早稲田大学坪内逍遙大賞、2011年『尼僧とキューピッドの弓』で紫式部文学賞、『雪の練習生』で野間文芸賞、2013年『雲をつかむ話』で読売文学賞、芸術選奨文部科学大臣賞など受賞多数。2016年にドイツのクライスト賞を日本人で初めて受賞。著書に『ゴットハルト鉄道』『飛魂』『エクソフォニー 母語の外へ出る旅』『旅をする裸の眼』『ボルドーの義兄』『献灯使』『百年の散歩』などがある。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    多和田/葉子
    小説家、詩人。1960年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。ハンブルク大学大学院修士課程修了。文学博士(チューリッヒ大学)。1982年よりドイツに在住し、日本語とドイツ語で作品を手がける。1991年『かかとを失くして』で群像新人文学賞、1993年『犬婿入り』で芥川賞、2000年『ヒナギクのお茶の場合』で泉鏡花文学賞、2002年『球形時間』でBunkamuraドゥマゴ文学賞、2003年『容疑者の夜行列車』で伊藤整文学賞、谷崎潤一郎賞、2005年にゲーテ・メダル、2009年に早稲田大学坪内逍遙大賞、2011年『尼僧とキューピッドの弓』で紫式部文学賞、『雪の練習生』で野間文芸賞、2013年『雲をつかむ話』で読売文学賞、芸術選奨文部科学大臣賞など受賞多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 多和田さん2作品目。
    やっぱり多和田さんの文章好きだな、としみじみ思い、夢中になって読み進める。
    多和田さんの言葉遊びに何度もクスッとなる。

    ヨーロッパ留学中に故郷の島国(日本)が消滅してしまった女性Hirukoの物語。
    永遠にあるはずの祖国が無くなるなんて…考えたこともなかった設定にただただ驚く。
    地球規模で見た「日本」を改めて見ると、なんと不思議でちっぽけな島国だったのか、と複雑な心境になった。
    (そんな風貌の人達が暮らしていたことを歴史地理の授業で習った…のインド人の発言にはショック)

    自分の祖国も母語も無くなったHirukoは大陸で生き抜くために新しい独自の言語を作る。
    その逞しさと自由さが清々しい。
    そして世界の何処かにいるはずの同郷人を探す旅に出る。
    移民として大陸を渡り歩き、自分の求めるものを探し続けるHirukoの強さに感動した。
    旅の途中で出逢った、国も言語も異なる仲間達との交流もまた素晴らしい。
    仲間の一人のセリフ「僕らはみんな、一つのボールの上で暮らしている。遠い場所なんてないさ。いつでも会える。何度でも会える」がとても印象的。
    これからも何処へでも並んでボールの上を歩く仲間のいることが羨ましい。
    他の多和田作品も読みたくなる一冊だった。

  • 元々全く別の人生を送っていた登場人物たちがいつのまにかひとつの同じ旅路に誘われて、点と点が線で結ばれていく感じが面白い。
    相変わらず多和田さんの言語感覚、言葉遊びは、日本のみに住んでいるひとにはない感覚で楽しい。
    多和田さんの作品は総じて好みながら、センスのない私には難しく冗長に感じることもあるが、今回の作品はテンポも良いし、一章ごとに語り手が変わったり、SF的な設定も面白く、飽きない。
    多和田さんがインタビューで語っているように、「越えていく」ことの面白さが爽快な作品。わたしも柔軟性を持って、言語や世代をときには超えることを恐れずに楽しみたい。

  • ストーリーは「はぁ?」と言いたくなるようなものなのだけれど、本書を読みやめられないのは、作者が書きながら思考しているその痕跡が伝わってくるから。ストーリー展開は口実で、書きながら哲学している。

  • 面白かった!早く続編『星に仄めかされて』が読みたい!

    グローバリゼーションが国民国家を解体し終えるかし終えないか、くらいの近未来が舞台なのかな。気候変動のせいか、それとも原発のせいなのか、日本はもう国の形を失っているらしい。
    ボーダレスな背景を持つ登場人物たちがボーダレスにヨーロッパ中を移動し、さまざまな言語で会話する(ことになっている。書いてあるのは日本語だけ)。読んでいるとだんだん言語や国家、文化を覆う堅い殻がペリペリと剥がされていくように感じられてくる。多文化の中で多言語生活を送る作者だから描ける世界なのだろう。

    ーー母語を話す人は母国の人ではない。ネイティブは日常、非ネイティブはユートピア。(p.220)

    この言葉にハッとさせられる。
    母語で話すことが自由に話すことだという思い込みが自分の中にあったこと、それが思い込みに過ぎないことが物語が進むにつれて身体に染みてくる。
    さらには「母語」に貼り付く「母」の字が呪いの一字でもあることも語られている。いかに「母語」や「母国」や「母」というものが私たちを粘着質に絡め取ってしまうものなのか、ということが作品テーマ、なのかな?
    その中で、いかなる「母」ももたない「パンスカ」は爽快に響く。
    そうか。「パンスカ」においてはHIRUKO以外のあらゆる人が「非ネイティブ」。この囚われの無さが「ユートピア」なのか。
    根無草の不幸は、裏返って、国民国家という「母」からの解呪を意味するらしい。それが本当に幸せなことなのかは、事後的にしか決まらない。だから、HIRUKOたちの旅は続くんだな、と納得。

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著者プロフィール

多和田葉子(たわだ・ようこ)
小説家、詩人。1960年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。ハンブルク大学大学院修士課程修了。文学博士(チューリッヒ大学)。
1982年よりドイツに在住し、日本語とドイツ語で作品を手がける。1991年『かかとを失くして』で群像新人文学賞、1993年『犬婿入り』で芥川賞を受賞。2000年『ヒナギクのお茶の場合』で泉鏡花文学賞、2002年『球形時間』でBunkamuraドゥマゴ文学賞、2003年『容疑者の夜行列車』で伊藤整文学賞、谷崎潤一郎賞、2005年にゲーテ・メダル、2009年に早稲田大学坪内逍遙大賞、2011年『尼僧とキューピッドの弓』で紫式部文学賞、『雪の練習生』で野間文芸賞、2013年『雲をつかむ話』で読売文学賞、芸術選奨文部科学大臣賞など受賞多数。2016年にドイツのクライスト賞を日本人で初めて受賞。
著書に『ゴットハルト鉄道』『飛魂』『エクソフォニー 母語の外へ出る旅』『旅をする裸の眼』『ボルドーの義兄』『献灯使』『百年の散歩』などがある。
本書の続編『星に仄めかされて』は2020年に刊行された。


「2021年 『地球にちりばめられて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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