リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ

  • 講談社
3.99
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本棚登録 : 273
レビュー : 33
  • Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062210805

作品紹介・あらすじ

ごはんからココナッツのにおいがしない。
「さーや、何やってるの」
 わたしが給食のクリーム色の器に鼻を近づけてひくつかせていると、朋香ちゃんは新種の生きものを見つけたみたいに、好奇心と不安の混ざった声できいてきた。
「え、何でもないよ! コシヒカリかなーとか思って」
 新種の生きものなんかになりたくないわたしは、あわてて器から顔を離した。
 やばいやばい。
 わたしは周りの給食班をキョロキョロと見まわした。
「マレーシアではココナッツミルクで炊いたごはんがあってね」なんて話し始めたら……。
 きっと「帰国子女ぶってる」とか、周りにコソコソ言われちゃうんだろうから。
 帰国子女として転入してきて二週間。まだまだ気が抜けない。
──本文より

目次
1(サトゥ)  督促女王 
2(ドゥア)  初めての歌
3(ティガ)  わたしは変わってしまったの?
4(ンパッ)  赤い下着
5(リマ)    タンカードNo.1
6(ンナム)  トナカイからのプレゼント
7(トゥジュ)  時計と寿司は回り続ける

感想・レビュー・書評

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  • この本は、日本では周りであまり見当たらないという理由だけで“ちょっと受け入れにくい”と考えられがちな「帰国子女」「短歌」「マレーシア」「イスラム教徒」etc.をミキサーに入れてガーと混ぜたら、とてもおいしいミックスジュースができました、というような作品。

    この本の主人公の名前は沙弥。日本語のサヤという読みはマレーシア語では「私」という意味のsayaにつながる。沙弥は自分の名前がマレーシア語でも意味をもつことを気に入っている。それはすなわち、マレーシアを気に入ったということ。

    マレーシアからの帰国によって沙弥は中2の2学期から日本の公立中学校に編入した。でもふと思う。-マレーシアにすっかり馴染んだ自分が、日本の学校に戻って周りに合わせられるのかな?そんな思いが日増しに膨らんでいたある日、成り行きから1学年上の女子の先輩に誘われ、短歌をいっしょに作るような流れになる。

    もちろん沙弥は短歌を作るのははじめて。しかも唐突。そのときほとんど口から出まかせみたいな感じで、マレーシア語とチャンポンにした短歌を書いて先輩に渡す。ところが意外にも先輩から「いいじゃん」と言われる。当の本人はデタラメだと思っていたのに…

    沙弥はどうやればうまく学校でやっていけるのかを考えるあまり、何をするにも「こうやっても大丈夫なのかな?」とささやくもう1人の自分がいた。だけど素のままの自分で作った短歌が先輩にほめられた。他人の目を気にしてばかりの沙弥が、他人の事なんか一切気にかけずに作ったものが評価された。
    そのことを裏付けるかのように、後日、図書館司書の先生が2人に、短歌は自分のなかの価値観を大事にしていて周りに流されないような人にこそ勧めたいと言う場面がある。

    短歌には“魔法の力”があって、それに気づけば自分だけでなくみんなをハッピーにもできる―青春小説のいわば王道パターンだけど、それだけじゃない。中学生では意外と少ない同学年以外の人とかかわり合う話とか、もちろん(?)気になる男子の話もブレンドされている。
    また友達の家族の一員となった女性がイスラム教徒で、沙弥がマレーシアで見聞きしたイスラム教徒の知識を生かす場面など、中学生受けしそうな題材以外にもチャレンジして中学生に伝えようとする著者の意欲も見られた。さらりとした書き方ながら山場も多く、ボリュームのある読み応えだった。

  • マレーシアから帰ってきて日本の地元の中学に編入したばかりの沙弥。クラスになじもうと必死の彼女だが、一年上のせんぱいにむりやり「ぎんこう」にひっぱりだされて、いつしかいっしょに短歌を詠むようになる。タイトルは、マレーシア語で五七五七七のこと。もうそれだけで勝利、という感じの楽しいひびき。

    ちょっとできすぎのところもあるけど、さわやかななかにも自分とちがうものを受け入れるということ(国籍とか文化以前に、短歌を詠むということだって、中学では浮くよね)がさらりと描かれていて気持ちのいいお話でした。

  • 良かった!
    マレーシアから帰国した中学生の主人公。
    周囲から浮かないか、びくびくしながら過ごしていたけれど、「督促の女王」先輩から突然吟行に連れ出されて毎日が変わっていく。
    心理も日常描写もとても丁寧に描かれていて、自然と入っていくことができた。
    終盤の展開も、甘いだけじゃなくて良かったなぁ…。
    そして、マレー語の混じった短歌が最高。

    『寝る前に頭につめた公式も夢の出口に着くころにルパ』
    『年号を覚えなくてはダメですか キラキラ百年前の出来事』

    ずっと口ずさみたくなった。

  • 変わったタイトルに惹かれて借りてみた。
    マレーシア語で五七五七七の意味。

    マレーシアから帰ってきた沙弥と、先に音楽学校から転校してきた佐藤先輩、お父さんがマレーシア人と再婚してイスラム教徒になった藤枝君。

    マレーシアと吟行が引き合わせた中学生の友情物語。

    マレーシア語って可愛らしい響きの言葉が多いのね。

  • タイトルはマレーシアの言葉で「五七五七七」。話の軸は短歌。
    読後感が爽やかな作品。話題が次々展開していくので、一気に読みました。イマドキ中学生の誰もが持つ悩みをよく描いているし、かといって閉塞感のある苦しい空気感ではなく、いろんな人間関係もよく考えられていて、不自然感がない。
    短歌、図書室、異文化、自分らしさ、そして、恋。たくさんのキーワードがケンカすることなく、うまく繋がって、流れるように読みきりました。
    登場人物の個性がわかりやすく、小さなドキドキも散りばめられていて、本当に面白かった!
    短歌、やってみたいなーと思っちゃいました。

  • マレーシア語を混ぜて詠まれる
    短歌がものすごくよかった。

    テストにたくさん使われた文章だそうです。
    小中学生におすすめしたい、
    さわやかなお話でした。
    もっともっと、日本でもいろんな文化と生き方に
    寛容になっていけるといいよね。

  • 「2019年度中学入試でよく出題された一冊」ということで読んでみました。
    クラスメイトの目を気にして周りから浮かないように過ごしていた主人公が、先輩との出会いや、自分を表現する短歌という手段を得てじょじょに変化していく。
    多様性を認め、自分の個性を自己肯定し、人とは比べないこと。そして、図書館や習い事など、学校以外の居場所を持つことの重要性もあらためて感じました。今、学校生活で悩みをかかえている子どもたちにぜひ読んでほしい一冊です。
    大人のわたしたちも「右へ倣え」ではなく、人からどう思われるかを気にするのではなく、自分の考えを持ち、違う考えを持つ他人を「へぇ~、そういう考え方もあるのね」と受け入れるやわらかい心を持つ人でありたいと思いました。

  • マレーシアからの帰国子女である沙弥は、図書室の本の督促をされたことから、督促女王と呼ばれている先輩の莉々子と短歌の吟行に行くことになる。吟行を重ねるうちに、怖いと思っていた先輩のやさしさに気づき、帰国子女であることをわらわれないようビクビクしていた自分も変わっていく。

    タイトルはマレーシア語で、五七五七七なのだそう。度々出てくるマレーシア語、そしてイスラム教のきまり。帰国子女や国際結婚など、今時の子どもにとっても身近な問題を取り上げているかれど、重い訳ではない。
    お互いの理解が普通にできるようになってほしいね。

  • 謎なタイトル、と思ったら、マレーシアからで過ごした二年半を忘れられない帰国子女の女の子が、短歌に出会う話だった。現代日本の学校で、帰国子女であることは、なかなかに居心地悪そうなところを、考えを変えていく話でした。よかった。

  • 2018年度の中学入試の国語で多く出題された物語のうち、某塾の先生が最もおすすめする本として挙げていた本。
    中学生が主人公のお話なので、おっさんが読んでも爽やかだったーって感じなんですが、こどもにも読ませたいですね。
    父親の仕事の都合で一年半マレーシア生活し、中2の9月という中途半端な時期に帰国子女となった主人公さや。中学生という目立ったら負けみたいな時期に、自分と周りの違いを気にしすぎて悩む姿、周りとの関係から徐々に変わっていく姿、本書のベースになっている短歌をまじえて面白かったと思います。

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著者プロフィール

一九八五年生まれ。三十二歳。東京都中野区在住。
清泉女子大学文学部日本語日本文学科卒業。公共図書館にて司書として勤務した後、私立中高一貫校に司書として勤務。2017年『 リマ・トュジュ・リマ・トュジュ・トュジュ』で講談社児童文学新人賞受賞。

「2020年 『ハジメテヒラク』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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