おびただしい数のファンタジー翻訳や解説書、幻想的な短歌などを紡ぎ出している井辻朱美さん☆ 特に1990年代に書かれた彼女のファンタジー小説に、特殊な愛着を感じています✧
その後小説はあまり書かれなくなり、多くが入手困難となったのが残念★ 貴重な創作作品は心ひかれるものばかりです★
とりわけ私がお気に入りの一冊が『幽霊屋敷のコトン』(1992)なのです☆
幽霊屋敷、なんて呼ばれている古い古いアーカンソウ家。コトンはこの家屋敷を管理して、日記をつけながら過ごしている女の子です☆ 実際に一族の幽霊たちが住んでいて、末裔にあたるコトンは彼らと会話をしたり、彼らのために買い物をしたりします☆
コトンと幽霊たちのゆるやかな時間は、新聞の取材を受けた日から、微妙に変わり始めます。幽霊屋敷を取り上げたいという青年記者ハートランドや、屋敷の管理に手を貸そうと申し出る占い師デオンとの出逢いなど、外の世界からの刺激に、コトンの心は揺れ始めますーー
幽霊屋敷と言っても、シャイニングみたいなホラーものではなく、おとぎ話のような雰囲気で、ふんわりほわほわ、そう、綿花のようなのですよ~☆ ホワイトハートという少女小説の文庫シリーズから出されているし、女の子が可愛くて好ましい★ この著者ならではの、夢を編み込んで書くような、美しい文章にも魅了されました☆
静かな生活と、水滴を落としたみたいにゆっくりと生じていく波紋を、ゆるりと楽しんで……。事件のあとは少しだけ新しい風をとりいれて、でもやっぱりこれまで通り、おだやかに暮らしていきそうなコトン。
ハートランドときどきヨールキップ日和を楽しめそうな予感を残す、優しく捩れた、不思議なハッピーエンドです♡
幽霊ドナンの性格やものの言い方にも、捨てがたい魅力が♪ じつは、ドナンに強い口調でものを言われて、半泣きになっているコトンを想像するのが好きだったりします★