子どもの本を読む (講談社プラスアルファ文庫)

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  • 講談社
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本棚登録 : 161
感想 : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062561297

感想・レビュー・書評

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  • 河合隼雄さんでこのタイトルだからと、優しい内容を期待してはいけない。
    使用されている言葉は確かに優しい(易しい)が、その内容は驚くほど深遠だ。
    比較的よく知られた児童書が14冊登場し、懇切丁寧に解説されている。
    しかし決して書評本ではない。

    では何のためにこの本を書いたかということが「まえがき」と長めの「序章」で語られる。
    大人も子どももこれらの本を読むといいよ、読まないと損だよ。
    何故なら「たましい」について書いてあるから。
    読んだ後親と子が、教師と生徒が、それについて語り合うことが出来るから。
    というものである。

    「たましい」という言葉に違和感を抱く方もさぞ多いだろうことは、河合さんご自身が十分理解した上でのことだ。
    アカデミズムの分野では近代の自然科学の威力が強く、心理学の分野でも「心」などという実体のないものについて語るのは非科学的と考えられてきた。
    人間存在を考える上で、心と身体の両方に関わり、なおかつそれを超える第三領域というものを「たましい」とあえて河合さんは名付けている。
    それによってこそ、人間の本質は成立するのでは、と言われる。
    「たましい」などは危険で曖昧であり、経済至上主義の反対の道をゆくものであり、自然科学の体系がぐらついてしまうからと、大人は見ない・考えないようにしている。
    ここに、子どもの本の大きな存在意義があると、そう言われるのだ。
    文学でも哲学でもなく、わざわざ児童書にしたのは、そこに人生の本質が書かれているから。
    「子どもの眼の輝きを失うことのない大人の書いた本であり、大人にとっても子どもにとっても意味のある本なのである」。

    とは言え、河合さんのような読み方は、誰にでも出来るわけではない。
    臨床心理士としての訓練を受けた方だからこそ可能なのだ。
    今読んでいる「この一冊」に全力を傾け、そこで自分の心に生じたことを書く。
    ただ、その内容に則して語る。
    作者のことや他の作品との比較などは出てこない。
    非常に主観的であるとも言えるが、実はこれが、心理療法をするのとほぼ同じ方法だそうだ。
    相手の主観の世界に出来る限り入りつつ、決して溺れない。
    これは凄いことだ。素人に出来るものではない。
    心理療法士から見た子どもの本の世界が、これほど濃密で矛盾をはらみ、時に葛藤を生み、美しいどころか苦しいものでさえあるということを、私も初めて知ることになった。
    読みながら何度、天を仰ぎため息をついたことだろう。

    私たちは河合さんのように読み込めないまでも、子どもたちの「たましいの導師」となるべく児童書を読めないものだろうか。
    それとも、先ずは自身の中の不完全さを認めて、子どもの眼で世界を見ることからスタートできないだろうか。
    児童書を読んで「とても良かった」ともし感動するものがあるなら、他ならぬ「たましい」の呼応だと思うのだがどうだろう。
    河合さんは、むちゃくちゃに生きる子どもの時代を決して否定しない。
    ときにその暴力性も肯定する。
    常識にとらわれていると単層的にしか見えない世界を、根底からひっくり返す力を持つ子どもの本。
    さて、皆さんはどの本から読まれるだろう。
    そんな私は、「飛ぶ教室」に出てくるふたりの大人のようになりたいと、長年思い続けている。

    「飛ぶ教室」ケストナー
    「まぼろしの小さい犬」ピアス
    「想い出のマーニー」ロビンソン
    「ぼんぼん」「兄貴」「おれたちのおふくろ」今江祥智
    「ヒルベルという子がいた」ヘルトリング
    「長くつ下のピッピ」リンドグレン
    「ねずみ女房」ゴッデン
    「ふたりのひみつ」ボーゲル
    「つみつみニャー」長新太
    「首のないキューピッド」スナイダー
    「砦」ハンター
    「わたしが妹だったとき」佐野洋子

  • すばらしい本です。
    河合隼雄さんによる児童文学の解説。

    心理学には詳しくないですが、とても読みやすかったです。
    それから、読んでいてどきどきしていました。
    「きれいごと」だけではない子どもの世界に、確かにわたしもそこを通り抜けてきたなぁと。

    紹介されてる本をどれも読みたくなりました。今からでも遅くない!

    年を重ねたいま読むからこそ、なにか取り返すことができる気がします。


    紹介してある本…

    「飛ぶ教室」
    「まぼろしの小さい犬」
    「思い出のマーニー」
    「ぼんぼん」「兄貴」「おれたちのおふくろ」
    「ヒルベルという子がいた」
    「長くつ下のピッピ」「ピッピ船にのる」「ピッピ南の島へ」
    「ねずみ女房」
    「ふたりのひみつ」
    「つみつみニャー」
    「首のないキューピッド」
    「砦」
    「わたしが妹だったとき」

    • だいさん
      読者の対象は 大人向けの本 なのですか
      読者の対象は 大人向けの本 なのですか
      2016/03/15
    • e_c_o_nさん
      だいさま、こんばんは。
      たぶん大人向けです。ただ、かた苦しい言葉を使っているわけではないので中学生から楽しめると思います!
      だいさま、こんばんは。
      たぶん大人向けです。ただ、かた苦しい言葉を使っているわけではないので中学生から楽しめると思います!
      2016/03/19
  • 映画化を前に『思い出のマーニー』を読み終えた、そういえば河合隼雄さんがとりあげていたのだったと思いだして久々再読。
    紹介されている作品:ケストナー『飛ぶ教室』、ピアス『まぼろしの小さい犬』、ロビンソン『思い出のマーニー』、今江祥智『ぼんぼん』『兄貴』『おれたちのおふくろ』、ヘルトリング『ヒルベルという子がいた』、リンドグレーン『長くつ下のピッピ』『ピッピ船にのる』『ピッピ南の島へ』、ゴッデン『ねずみ女房』、ボーゲル『ふたりのひみつ』、長新太『つみつみニャー』他、スナイダー『首のないキューピッド』、ハンター『砦』、佐野洋子『わたしが妹だったとき』

  • 児童文学の良さ、必要性がわかった。
    子供の視点でしか見えない部分がある。
    本書で紹介されている児童文学書は読んでみたい。 5

  • 河合先生は言わずと知れた心理学者です。

    児童書の専門家ではない、(子どもの)心の?専門家である先生の切り口が新鮮。
    しっかりした構成と、読み易い文章、人生の光も影も承知した深い人間性が、文章のあちこちに滲み出ています。温かい…

    この本で紹介されているケストナーの「飛ぶ教室」を手に入れたので、これから読む予定です。
    寮生活を送る少年たちのドラマ。ちょっとハリポを思い起こさせる?でも、舞台はドイツ。

  • 目に見えない世界の事を語るのに、児童文学が非常に適しているなんて!!河合さんの目を通して、「子供の本」の奥深さを、とても新鮮にまた興味深く知る事ができました。

  • 河合はやおさんの本は読みやすいよね 難しいことを難しく書かないってホントーに難しいのにね

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著者プロフィール

東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。メーカー勤務を経て、現在フリーランスの翻訳者。

「2020年 『パリジャンが教える ヒゲの教科書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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