母性社会日本の病理 (講談社+α文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 380
レビュー : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062562195

作品紹介・あらすじ

心理療法をしていて、最近とみに心理的な少年、心理的な老人がふえてきた、と著者はいう。本書は、対人恐怖症や登校拒否症がなぜ急増しているのか、中年クライシスに直面したときどうすればいいのか等、日本人に起こりがちな心の問題を説きながら、これからの日本人の生き方を探る格好の一冊。「大人の精神」に成熟できない日本人の精神病理がくっきり映しだされる。

感想・レビュー・書評

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  • 全ての子どもを愛する絶対平等観の母性原理。
    切り離す、序列をつける父性原理。

    母性原理的な社会の代表例はインド。階級が始めから「与えられたもの」として存在する社会。たとえ、下層のカーストにある人でも「与えられた」ところに一生留まるものとして、競争に破れたという惨めさを味わうことはない。これに対して、父性原理に基づくのは欧米社会。上昇は許すが、能力差、個人差を前提としており、各人は自分の能力の程度を知り、自らの責任においてその地位を獲得していかなければならない厳しい社会。

    では日本社会は...?
    読めば、なるほどと膝を打つはずです。

  • 父性社会の物事を「切断する」ことと違い、母性社会は全てを「包含する」。西洋は父性社会であり、日本は母性社会である。それで日本の社会現象を説明できる。もちろんどの社会にも父性と母性の両方は存在するが、どちらが優位を持った社会であるかで違いがでる。「個」の倫理と「場」の倫理。「場」から疎外される孤独か。なるほどな〜と思える。またフロイトと違ったユングの夢分析の話も、興味深い。

  • 表題どおりの「母性社会日本」をめぐる第一章は現在でも通用する議論でなかなかおもしろくあったのだが、その後がいかんせん。方々に書いたエッセイを集めたというから繰り返しも多く統一性に欠ける。文字数の制限を理由に論が深まらぬところもあって、「ココんとこもっと」とおねだりしたい箇所も多く痒いところに手が届かない。

    父性原理の特徴は「切断」にある。極端ではあるが良い子は我が子で悪い子はよその子という風に。キリスト教というのはまさにこういう考え。
    母性原理としてユングは三つあげている。すなわち「慈しみ育てる」「狂宴的な情動性」「暗黒の深さ」。

    日本では母性の「慈しみ育てる」面だけを称揚し、「暗黒の深さ」という一面にフォーカスをあてることが少なかったのではないか筆者は考える。「暗黒の深さ」というのは「呑みこみ、しがみつきして、死に到らしめる」という言葉で表されている。

    母性原理が顕著にあらわれているのが日本の学校だ。
    誰もが平等に扱われるため、欧米のような飛び級や留年は存在しない。
    この本が書かれた90年代から、さらにその傾向は増しているようにも思える。(学芸会の演劇で女の子はみんなお姫様役とか)

    ただし留年したからといってそれが即コンプレックスになるわけではないという。むしろ欧米のような個人主義では、勉強ができないなら諦めて他の道を探すというように、「人それぞれ能力の差異があるのは当たり前」を前提に考える国々では能力が劣ることも個性のひとつとして考えることができる。

    しかし平等という考えを前提にすると、「平等であるはずなのに自分は何故皆と同じようにできないのか」と考え悩むという。

    ――ひとつの文化がひとつの原理のみで成立するはずがなく、何らかの方法で対立原理をそのなかに取り入れ補償をはかっている。わが国の場合は、母性原理に基づく文化を、父権の確立という社会的構造によって補償し、その平衡性を保ってきたと思われる。

    父権制度や総理大臣が今もって男であるのは、女性の代理としての機能を果たすのであって実際に権力を握っているのは女性であった。GHQはそれを男尊女卑と見てこの解体を急いだことで今の家庭の混乱がある、と。

    ――西洋における個の倫理が言語による契約によって行われるのに対して、場の倫理は非言語的な羞恥の感情機能に支えられているのである。われわれ日本人は子供のときから、この羞恥の感情に基づく自己規制の方法を学習させられている。

    欧米は「個の倫理」、日本は「場の倫理」と言われる。
    「場の倫理」ではとにかく何を置いても場の内側にいることが求められる。内側にいさえすれば、その人の人柄や人格など多少の問題は看過され、場を共有する人間は彼の人に対して責任を負う。
    しかし場の外にいる人間に対しては何ら責任を負わなくていい、極端にいえば何をしたってかまわない……そういった酷薄な面を持つ。

    しかし……読めば読むほど、自分は本当に日本人なのかと考えざるを得ないのであった。

  • 母性原理と父性原理の違い。
    能力主義と平等主義。
    日本人の自我構造。
    夜の意識とイメージ、、等々興味深かった。

    個人的には、相手の母性原理から来ることで、
    あたしを責めているようなことがあっても、
    気にしなくていいってことがわかった。

  • 駄作

  • 今は全集が出てるので、そちらの方がまとまりが良い

  • 心理療法をしていて、最近とみに心理的な少年、心理的な老人がふえてきた、と著者はいう。本書は、対人恐怖症や登校拒否症がなぜ急増しているのか、中年クライシスに直面したときどうすればいいのか等、日本人に起こりがちな心の問題を説きながら、これからの日本人の生き方を探る格好の一冊。「大人の精神」に成熟できない日本人の精神病理がくっきり映しだされる。

  • 「こころの処方箋」の著者である河合隼雄さんのユング心理学をベースとした評論本.連載モノを文庫化したもの.
    注意として,本書は新書ではよくあるような「どうすべき」ということを明確に示すようなものではない.しかし "対人恐怖" でなくとも,日本人が日本社会で少なからず感じていそうなことを指摘し,どのようなことが心のなかで起こっているかについて分析しているという意味で意義深いと考える.

    第一章「日本人の精神病理」では,日本社会の母性原理について主に述べられており,日本独特の「場の倫理」という観点が興味深い.また,ユング心理学で重要な「グレートマザー」が守るだけでなく飲み込んでしまうような母性を反映したある種無意識下の普遍的な存在として紹介されている.
    第二章ではユング心理学や夢分析について紹介されており,夢における自身の「無意識」との関連性について述べられている.
    確かに日本人の自我が西洋におけるそれとは異質,ないしは西洋から見ると"無い"ように見えるのだが,必ずしも欧米と同じような自我の獲得が良いということを表明しているのではない.第三章ではこのような日本的(東洋的)な"意識"とはどのようなものかを説明しており,心の中心としての"自己"の概念について述べていた.
    全体にわたって様々な症例における"相関性"や"グレートマザーの存在",またはグレートマザーから抜け出し自我を獲得するといった内容が様々な形で述べられているので,若干食傷の感はあるが,日本および西洋における意識・無意識,父性・母性,自我・自己などについて統一的な見解を得られる点は「こころの処方箋」を読んだ感じとやはり似通っていると感じた.

  •  
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4062562197
    ── 河合 隼雄《母性社会日本の病理 197601‥中公叢書 19970919 講談社プラスアルファ文庫》
     

  • 意外とリーダブル。河合隼雄さんが日本に帰って来てから10年後に出版された40年前の本。

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著者プロフィール

東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。メーカー勤務を経て、現在フリーランスの翻訳者。

「2020年 『パリジャンが教える ヒゲの教科書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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