知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ (講談社+アルファ文庫 G 74-1)

  • 講談社
3.80
  • (269)
  • (399)
  • (359)
  • (39)
  • (15)
本棚登録 : 5268
感想 : 340
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062566100

作品紹介・あらすじ

常識にとらわれた単眼思考を行っていては、いつまでたっても「自分の頭で考える」ことはできない。自分自身の視点からものごとを多角的に捉えて考え抜く-それが知的複眼思考法だ。情報を正確に読みとる力。ものごとの筋道を追う力。受け取った情報をもとに自分の論理をきちんと組み立てられる力。こうした基本的な考える力を基礎にしてこそ、自分の頭で考えていくことができる。全国3万人の大学生が選んだ日本のベストティーチャーによる思考法の真髄。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 物事の考え方を分かりやすく整理した良書。約20年前の著作なので例示が古いのはやむを得ない。言葉の変換も多少は必要。ただ、今だから過去の事象を捉え直す、考え直すいい機会となった。ベースにシステム論的思考が定着していると、より理解が進みそう。
    「本でなければ得られないものは何か。(中略)考える力を養うための情報や知識との格闘の時間を与えてくれるということだと私は思います」

  • 良書:本書は「考える力をつけるにはどうすればいいのか。ものの見かたを変えるにはどうしたらいいのか」をできるだけわかりやすく解説するのが目的としています。
    常識にたっぷりとつかった単眼思考から、自分の頭で考える複眼思考をするための方法論を詳しく解説したものと著書はいっています。
    長い思考のプロセスを階段のように並べていて、一歩づつ登れるように導いてくれます。

    気になったことは、次の通りです。

    知的複眼思考の前提となっているもの
     ①情報を正確に読み取る力
     ②ものごとの論理の筋道を追う力
     ③受け取った情報をもとに自分の論理をきちんと組み立てられる力
     ④それらをもとに隠された問題を探っていくことができる

    世の問いには、正解はない。学生は問題が与えられた時、ないはずの正解を探しにいく人が多い。

    複眼思考の出発点
     ①批判的に読書を通じてものごとに疑問を感じること
     ②ものごとを簡単に納得しないこと
     ③「常識」に飲み込まれないこと
    すなわち、自分で考える姿勢ができていること

    知識の受容だけでは、本当に自分で考えるようにはならない
    非難をするかどうか、攻撃的であるかどうはではなく、著者の思考の過程をきちんと吟味しながら読もうとすること

    批判的な読書とは

    ステップ1
     ①読んだことをそのまま信じない態度
     ②おかしいと思うところを見つける
     ③意味不明なわからない部分を見つける ⇒ 著者に問題がある場合も多い
     ④あくまでも、論旨に照らして理解する、文章を流れで理解しようとする
    ステップ2
     ⑤著者のねらいを理解する 著書はかならず目的をもっています
    ステップ3
     ⑥著者の論理を丹念に追う。論理の飛躍、過度に攻撃的な主張がないか確認しながら読み進む
    ステップ4
     ⑦著者の前提を探りだし、それを疑ってかかる、隠されている暗黙のメッセージはなにか

    批判的読書とは、単なる相手の欠点や欠陥をさがすことではない
    考える力をつけるためには、もう一歩踏み込んで代案をだす
    考えるという行為は、何らかのかたちで表現されて初めて意味をもつ、それは、話すことであり、書くことである
    文と文を適切な接続詞でつなぐ
    反論を書く、それは、相手に立場になったり、自分の立場になって、それぞれ賛成、反対を考える、それを話すことで行うのがディベードである
    ディベートとは、いろいろな立場になってかわるがわる考えることで多面的なアプローチが可能となる。一人ディベートでも気づきは大きい

    ものごとに疑問をもつことがはじまりである
    そのままにしておいては、考えることにはつながらない
    疑問を、問いにかえることが次のステップになる
    次に、問いを分解して、いろいろな面から眺めてみる。それを、分解と展開という
    各問いに、なぜを繰り返しぶつけていく、ただ展開したものは、見込みや予想であって事実によって確認されたものではない
    なぜは、因果関係を問うもの
     ①原因は結果より時間的に先行している
     ②原因と見なされている現象も、結果と見なされている現象も、ともに変化しているのが確認できている(共変関係)
     ③原因以外に重要と思われる他の要因が影響していない(他条件の同一性)
     ④偽物の相関:疑似相関を見破るには、同時に変化している要因の影響を取り除いてみればよい

    思考とは、抽象+一般性と、具象+個別性のとの間を行ったり来たりする
    ひとつ上のレベルである概念化を行い、同一なもの、相違しているものなどを整理して再び思考する
    概念は言葉によってはっきり定義される、個別性はケースといわれる、概念をもって事象を別の角度からながめている

    複眼思考法を身につけるための3つの視点
     ①関係論的なものの見かた そのものだけではなく、プロセスを考えてみる、背後にある関係を確認してみる
     ②逆説の発見:意外性を見つける、パラドクス 抜け道の発見 全く意図せぬ結果となってしまう施策など
     ③ものごとの前提を疑う、メタを問うものの見かた 問題を問うこと自体を問う 視点を変えてみる メタとはギリシア語で後ろを表す接頭辞 後ろに下がって眺めることをいう
    ここまでできたら、問題を流れとして捉えて、その問題を解くことができたらどうなるかを考えてみる。

    目次

    文庫版まえがき

    序章 知識複眼思考法とは何か
     1 知識複眼思考への正体
     2 「常識」にしばられたものの見かた
     3 知ることと考えること

    第1章 創造的読書で思考力を鍛える
     1 著者の立場、読者の立場
     2 知識の受容から知識の創造へ

    第2章 考えるための作文技法
     1 論理的に文章を書く
     2 批判的に書く

    第3章 問いの立て方と展開のしかた 考える筋道としての<問い>
     1 問いを立てる
     2 <なぜ>という問いからの展開
     3 概念レベルで考える

    第4章 複眼思考を身につける
     1 関係論的なものの見かた
     2 逆説の発見
     3 <問題を問うこと>を問う

     コラム

    あとがき

    リーディング・ガイド

  • 本を読むときに、「誰がその本を書いたのか?」は重要だと思いますが、本作の著者は、東大卒でオックスフォード大教授であり、新聞の「大学のベストティーチャーズ」に選ばれるなど、教わるには申し分ない、すごい方です。

    様々な情報にあるれる今、周りに流されないで自分で考える力は、とても重要だと思います。

    ぜひぜひ読んでみてください

  • ◯問い
    自分の頭で考えるとは何か

    ◯答え
    物事を鵜呑み(思考停止)にせず、自分の言葉で説明すること

    ◯根拠
    自分の言葉で説明しようとすることで、知識や経験からくるオリジナルの考えが形作られるから。

    ◯やること
    ・あら探しだけでなく代案を出す。
    ・反論や批判は頭の中ではなく必ず文章にする。
    ・何が問題か、だけでなくなぜ問題として取り上げられたか、文脈を押さえる。
    ・詰まったら「〇〇はどうなっているのか」と細かく切り分けて考える。
    ・概念(共通すること)と具体を行き来する。とにかく具体化。イメージはフォルダ分け。

  • 目を通しておきたかった一冊。
    「複眼思考」って漢字で見るとイメージが湧きやすいけど、自分の見方や考え方の枠組みを柔軟に変えていくことは、実は結構難しいことなんじゃないかと思う、今日この頃です。

    以下、印象に残った部分の引用。
    特に、何を問うかという所のレベル設定(具体⇄抽象)と、キーワード、概念を安易に用いることへの注意は、よくやってしまう。気をつけたい。

    「はやりことばの多用も要注意です。流行のいい回しというのは、何となくそのことばの響きだけで、わかったつもりになってしまうものだからです。たとえば、「グローバル化」とか「IT革命」「構造改革」「生きる力」といった決まり文句などです」

    「問題点を探し出すことで止まってしまっては、「批判的読書」は思考力を鍛える半分までの仕事しかできません。考える力をつけるためには、もう一歩進んで、「代案を出す」ところまで行く必要があるのです」

    「要するに、疑問と問いとの決定的な違いは、疑問が感じるだけで終わる場合が多いのに対して、問いの場合には、自分でその答えを探し出そうという行動につながっていくという点にあります」

    「そこで問題となるのが、問いを立てるときの、抽象度や一般性、あるいは具体性、個別性のレベルということです。どの程度一般的なことがらとして問いを立てるのか。どのくらい具体的な問題の中で、「なぜ」を問うのか。抽象性や具体性のレベルということを意識しておくと、今度はそれが問いを展開するうえでの重要な手がかりとなります」

  • 物事を深く考えていくには「常識」などに捕らわれた一面的な思考から脱却し、様々な問いや視点を駆使して多面的にとらえることが必要不可欠である。
    では、そのような多面的な物事のとらえかた――すなわち「知的複眼思考法」ができるようになるにはどうすればいいかを懇切丁寧に解説する本。

    第一に読書の効用を説き、読書をする姿勢においても「批判的読書」「創造的読書」が大切であることを解説する。
    その後、読書で培った複眼的思考を議論や時事問題へ適用し物事の理解において「問い」を立てることの重要性とどのような「問い」が求められるのかを述べている。
    最後は「問い」に対してもメタ的な思考を養い、多面的にとらえるために立てた「問い」そのものが新たな硬直や偏見を生み出してはいないか、それを考えていく方法について書かれていく。

  • 考えるためのツールを具体的に提供してくれる。
    問いを立てる、で終わらずどのように立てるかの道標があってわかりやすい。
    クリシンに似ている。互いの理解を補完できていい。

    ①知的複眼思考とは?
    ②複眼思考を身につけるには?
    ③問いの立て方とは?


    1、ありきたりの常識や紋切り型の考え方に捉われずに、物事を考えていく方法
    2、「常識」に捉われないためには、何よりも、ステレオタイプから抜け出して、それを相対化する視点を持つことが重要
    3、知識も大切だが、「正解」がどこかにあるという発想からは複眼思考は生まれない


    1、多面性に注目・分解し、その要素間の関係を考える
    実体論→関係論
    2、意図せざる結果を見つける(「にもかかわらず」を探す)
    √副産物、副作用への視線
    √抜け道の誘発ー裏をかく人々への視線
    √小さな出来事大きな意味
    √当たる予言、外れる予言
    3、問題を問うことを問う(問題の捉え方をずらす)
    メタの視点に立つ
    「何が問題か?」ではなく、「なぜ問題になったか?」を探ることで、その問題が問われる文脈に目を向ける
    ex.パソコンを使いこなすにはどうしたらいいだろう?→なぜ今、パソコンを使いこなす必要があるのか?
    √「ある問題を立てることで、誰が得をし誰が損をするのか?」問題を取り巻く利害関係を捉える
    √「問題が解けたらどうなるか?」考える


    ・6つのなぜ
    →よく言われること。だが、最初のなぜに対する答えの方向がずれていると、どんどん変な方向へ深掘ってしまう
    ・なぜという問いからの展開
    1、因果関係を問う
    〈原因と結果の関係を確定する原則〉
    √原因は結果より先行しなくてはならない
    √原因の現象も結果の現象も変化している
    √原因以外の他の要因が影響しない
    2、疑似相関を見破る(=重要だと思っていたことを疑似相関と見抜く)
    同じ原因、違う結果/違う原因、同じ結果の事象を探す
    「なぜ?」という問いを「◯◯はどうなっているか?」に置き換える
    ビッグワードを禁止する

  • 思考力、判断力を鍛えるには?ステレオタイプの単眼思考を避け、複眼思考を身につける。複眼思考を身につけるには?情報を正確に読み取り、論理をきちんと組み立てる。1章、批判的読書の効用。2章、文章を書くことで論理的表現を身につける。3章、考える筋道としての問い「なぜ」。4章、物事の二面性、多面性を捉えるための方法。要再読。

  • 教育学を教え大学教育について考えてきた教授は、論文を執筆するだけでなく講義でもその考えを実践してきた。常識やハウツー的マニュアルに頼るのでなく、自ら考える能力はどうすれば形成できるのか?ありきたりなステレオタイプから抜け出し、知識や情報に振り回されない視点とはどのように身に付けられるのだろうか?そのアプローチを、学生に伝えるために丁寧に、丁寧に解説していく良書。

    いや、正直そんな新しい発見は無かったんですよ。「書く事で考える」「問いの立て方を掘り下げる」「逆説や関係論的な見方をする」そういった思考法ってこれまで無意識にやってたりするんで。でも、その個々の要素をこれだけ体系的に、きちんとその理由も説明していくことでいままで点で理解した事が面で見えてくる感じ。そして身に付け方についても、基礎から発展の流れできちんと教えてくれる。

    最後に。本書では複眼的思考を身に着けるための方法として「批判的読書」を薦めている。それは、手に取った本を初めから非難するような気持ちで接するのではなく、著者と対等な立場になって考える道筋を追体験し、その上で自分だったらどうするかという代案を出す行為だ。そう、この本に対していかに批判的読書を行えるのか?これが、読了者に対する卒業試験だ。

  • 複眼思考を持ちたい、自ら問いを立てるようになりたいと思い読もうとした。事例を文章にあちこち無数に埋め込んでいて、主張にたどり着くまで時間がかかり過ぎる。読んでいて疲れた。読書に体力がいる本。読み切りはしたけど、組み取ることができなかった。

    • nyanko105さん
      みんないい評価していていたから自分の読解力のなさにがっかりしましたが、笑王さんの感想見て「ほんとそれ!」と、同感しかなくて嬉しかったです。あ...
      みんないい評価していていたから自分の読解力のなさにがっかりしましたが、笑王さんの感想見て「ほんとそれ!」と、同感しかなくて嬉しかったです。ありがとうございます。最後の一文、ほんとそれです。ありがとうございます。
      2022/05/18
全340件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

オックスフォード大学教授

「2023年 『新・教育の社会学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

苅谷剛彦の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×