超常現象をなぜ信じるのか―思い込みを生む「体験」のあやうさ (ブルーバックス)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062572293

作品紹介・あらすじ

UFO、虫の知らせ、星占い…。科学的には証明できないことも、実際の体験をとおして信じてしまう。しかしその「体験」は、本当のできごととは限らない!超常現象の実在を信じてしまうのは、人の思考システムの本質がかかわっている。

感想・レビュー・書評

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  • 「私は超常現象なんて信じない」・・・そう思っている人は、多いと思う。しかし本書を読むと、そのような思い込みだけでは超常現象を語る輩に取り込まれてしまうかもしれない、という気になってくる。というのも、人間が超常現象を信じるのは、認知のシステムによるもので、「気が強い」とか「疑り深い」とかそういう性格的な問題だけではないからだ。私たちの体験を構成する知覚や記憶、思考といった認知情報処理はエラーに対してもろく、簡単に情報の変容を引き起してしまうのだから、超常現象を「体験」した気になってしまうのである。

     だから、おそらく、この本を読んで超常現象を信じる人間の認知の仕組みについて理解しても、騙されてしまうことはあると思う。結局超常現象に騙されないようにするためには、ハウツー的なものでは対抗できない。自らの中にある論理性を鍛え、仮説に対し反証を定置できる力を養い、可能性を評価できるようになるしかないのである。しかしそれは容易なことではない。教育の現場とかで、もっとクリティカル・シンキングを「騙されないための実践的知識」として取り入れる必要があるのかもしれない。

  • 良書。この一言につきる。
    唯一気に入らないのは、なぜこんなタイトルにしたんだろうってこと。
    これだと超常現象に興味のある人しか手に取らないと思うなあ。
    内容はもっと広い範囲をカバーしてて、いわゆる「クリティカルシンキング」の基礎的な態度や技術が、平易な記述で語られている。
    そうだなあ。大学1年生くらいの人たちが、ちゃんと考えるための教科書として精読するのに、最適の本だと思う。

    それにしても、ここ数年で
    「こんなことが脳科学的に明らかになりました!」
    と叫ばれてきたもののほとんどが、ずっと前に「心理学的に明らか」になっているのだなあと感慨。
    「脳科学」の権威を相対化するにもよい本なのかもしれないなあ、と思う。

  • <概要>
    「だましの心理学」に続き、認知バイアスについて解説した本。

    だましの心理学よりももう少し広い範囲の認知バイアスについて解説。

    ・現代科学では解明できない超常現象は人間の認知バイアスによって
    起こされている可能性が高い。
    ・人間の頭にはスキーマ(ものを認識するための基本的な枠組み)があり、
    それにより全く同じものでも別のものに見える。
    (例:Bにも13にも見える文字をABCと121314の両方の文脈でみせる)
    ・認知バイアスというのは写真とはことなり、人間がモノをパターン化して
    とらえる適応能力から生じる。

    記憶はあてにならない→人間は記憶を保存・復元する際に、
    解釈が働くため、事前情報によって加工されることが多い
    (聞き方により、回答がかわる傾向があるアンケートやあてにならない目撃証言)
    不確かな情報であっても時間がたつと信憑性があがってしまう。

    確率をみやまることや確証バイアスについて
    例:大地震の前に動物がおかしな動きをする
    →反証できるケースを考えていない&確率の問題を無視している
    上記のようなことが起こるのは人間がもつ認知を節約しようとするこころみ。
    人間の認知的傾向について
    ・ランダム的な現象を嫌う
    ・平均への回帰を無視する
    などがあげられる

    <感想>
    「たましの心理学」と同一著者の認知バイアスについて書かれた本。

    知っていることは多かったけれど人間の認知機能についていろいろと
    しることができた。
    人間の認知機能が有効なのはパターンがはっきりしていて比較的結果が
    安定しているケースであろう。

    そのような場合は、日常生活で養われた認知機能により素早く物事を判断できる。
    逆にパターンがはっきりせず、結果の予測が非常に難しいものや
    不確かなものについては認知機能が誤作動し、誤ったケースを信じてしまう傾向がある。

  • 脳は不思議。一旦深呼吸して立ち止まってみること

  • 若かりしころ、時々お世話になっていた懐かしのブルーバックスシリーズ。
    お借りした本です。もう20年以上前の本、読んでいてそれなりにちょっとレトロ!?に感じられる部分もありましたが、全体を通して、今の私たちにも十分示唆をくれるものでした。

    タイトルに「超常現象」とあるので、もっとオカルト的な部分がクローズアップされるのかと思いながら読み始めました。UFOや予知能力などについて紹介されてはいるものの、それらを例に、実は事実として立証されていないのだということを具体的に明示。人間の認知の仕組み、特に、認知のエラー、錯覚、記憶の仕組み、確率論などをベースに、体験したと思っても実際には事実とは異なるようなケースがあることを示し、それをしっかりと理解したうえで、事実をしっかり見極めよう、という説明でした。

    押し付けがましくなく感じて、素直に読めたのは、著者が繰り返し、超常現象は存在しないと真向から否定するつもりはない。なぜなら、存在しないことを証明できないから。でも、超常現象は直接体験した人がいるのだから確かにあるのだだとか、めったにありえないような奇跡が起きたんだ、ということのほとんどが、それが事実であると証明できていないんだ、ということを知っておくべきだ、と述べられていたからかもしれません。

    ロシアのウクライナ侵略に関する情報に触れる毎日の中で、目を覆いたくなるような爆撃もさることながら、世論を操作しようとする情報戦のすさまじさ(分かりやすいのはロシアがロシア国内向けに流す報道の内容ですが、多かれ少なかれ西側も“都合のよい真実”を流しているはず)も感じています。テレビ中継で流れているもの、ネット動画で流れているもののいったいどれが真実なんだろう?と思うこともしばしば。自分が目にしているものを疑ったり確認したりしながら、自分なりの考えを持たなければならないと思っていたタイミングだったので、「認知バイアス」の話をとてもすんなりと受け入れられました。いい勉強になりました。

  • 人の認知機能にはバイアスがあり、誤りを起こすようにできている。このことに意識的でないと、正常な判断ができないので注意すべきである。当然、ビジネスの場でも気をつけなければならない。
    この原因は、省エネルギーの認知情報処理をしているためで、人の能力が低いからではない。同様の誤りは、自分自身が体験、記憶したことにも起こる。さらに、自分の予期に合致するような情報が選択的に知覚されるバイアスがかかり、認知が歪められる。
    これを防ぐためには、自分の見つめる上位のメタ視点を持つことが大事であり、自分と反対の視点に立ち、4分割表などで確率を論理的に議論すべきである。

  • 人は目から入ってくる情報を写真やビデオのように全て正確に捉えられるわけではない。
    そして、反証を考えることがなかなか難しい。ゆえに、自分の思うものと合致するものばかりを探してしまう癖がある。

  • 認知心理学の紹介。
    百聞は一見に如かずは、間違えることがある。
    菊池聡と谷岡一郎は、誰もが読むべき一冊だと思う。

  • 「自分で見たものしか信じないという人」って,結構いますよね。でも、自分が見たものってほんとに存在していたのでしょうか?幽霊やUFOとかいわゆる超常現象を信じている人の中には,自分で見たからという人がいます。彼らが嘘をつけていたかと言えば、そうともいえない。
    なぜなら、人間の脳と言うのは、目に入ってきた情報だけではなく、その人の記憶も使って、周りの環境を“解釈”するので、あなたが本当に見たと思ったものが実は違うものだったと言うこともあるのです。この本は、そういう身の回りにある不思議な出来事をなぜ人間が信じてしまうのかを教えてくれます。(先生推薦)  

    ↓利用状況はこちらから↓
    https://mlib3.nit.ac.jp/webopac/NP09834053

  • UFO、心霊現象、血液型性格診断、予知夢(虫の知らせ)。そういう、オカルト・疑似科学的な現象をひっくるめて、ここでは「不思議現象」と呼ぶ。本書で繰り返し述べられていることであるが、著者は、こういった不思議現象の存在を否定しているのではない。その可能性を否定することは、原理的にできない。そのため、不思議現象について議論しようとすると、たいてい水掛け論に陥る。

    不思議現象が科学的に認められない訳は、それが科学的知識に反しているからではない。そうではなく、信頼性と妥当性が欠けているからである。(信頼性と妥当性が何か分からない人は、本書を読んで欲しい。)まずはそのことを認めた上で、では、人々はなぜ不思議現象を信じるのかを考えましょう、というのが本書のスタンスである。

    「信じる心」がなぜ生まれるのか?それは、一言で言えば、「認知のバイアス」によるものである。本書では、認知のプロセスを「知覚」「記憶」「思考」に分け、各段階で起きるバイアスがどのようにして誤った信念を生みだすかを分析している。

    人は、自分が体験したことは、一番信頼できると思っている。ところが、ヒトの知覚システムは、しばしば誤りを犯すようにできているのだ。実在しないUFOや心霊現象が「見える」のは、多くの場合、単純に「知覚のエラー」(見間違え)によって説明できる。また、体験していないことを体験したかのように思い込むことがよくある(「記憶のエラー」)。誘導尋問が可能であることが示すように、記憶は容易に変容されうる。目撃者の証言なんか、あてにならないのだ。そのことを示す、数多くの心理学的な実験がある。

    3番目は、思考の段階で入り込む「確証バイアス」である。周りを見渡してみれば、なるほど「A型で几帳面」な人を何人も挙げることができる。そのため、血液型性格診断(や、すべての占いの類)は当たるような気がする。しかしそれでは、「A型」と「几帳面」の間の関連性を示したことにはならない。実際には、「A型だけど几帳面ではない」「A型じゃないけど几帳面」「A型じゃなくて几帳面でない」の数も調べなければならない。要は、統計学を勉強しなさいということだ。ただ、この確証バイアスに関しては、統計学的な思考法を身につければ防ぐことができる。それに対し、知覚と記憶のエラーはヒトの生理的システムに依存するため、避けることは難しい。

    本書は平易な日本語で書かれており、とても読み易い。1998年の出版だからもう15年も前になるが、古さを感じさせない。この手の本としては、かなりのロングセラーと言える。

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