心は量子で語れるか―21世紀物理の進むべき道をさぐる (ブルーバックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062572514

作品紹介・あらすじ

天才ペンローズの考え方が浮き彫りになるスティーヴン・ホーキングらとの論争。

心はいかにして生まれるか──人間にとって最大にして最後の謎をめぐって現代科学界最高の知性が集う

人の心が脳という物質から生まれるのなら、物理学で解明できるはずではないか!
「宇宙・量子・人間の心」の謎を一挙に解く量子重力理論の完成をめざして天才ペンローズが果敢に挑戦。A.シモニー、N.カーライト、S.ホーキングが批判を加え、それにペンローズが回答する。

感想・レビュー・書評

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  • 「今世界で最も頭の良い数学者」という噂を聞いていたので、内容が難しすぎてついていけなかったらどうしようと心配していたが、数学・物理学などかなり基本的なところから丁寧に説明してあって、本文の箇所についてはほとんど難解さは感じること無く読み進めることができた。

    もともとグレッグ・イーガンのSF小説の影響で「シナプスの構造を完全にアルゴリズム化したコンピュータは人間と同じ意識を持ちうる」という「強いAI」に対する憧れが強くあったが、この本のなかで「アルゴリズムでは記述することのできない論理的思考がある」という氏の意見を見て、うーん、そうなのか、と考えさせられた。

    しかし「人間は数学のような抽象的な理解が可能である。」→「従って人間が意識(=アウェアネス)を持つことはほぼ自明なのではないか。」という点については、まったく説明が無く、賛同できないと思った。その点についてはホーキングの言う「明日もし知性を持った異星人が地球にやってきたとして、我々にはその異星人が意識を持つのかどうか証明することは不可能だろう」という意見の方が納得できるなと思った。

    本文については前述のとおり理解しやすかったが、後半の氏の意見に対する反論の箇所については専門的(特に哲学的な)記述が多く、理解が難しかった。

    「ニューロンの中の微小管構造で保持される量子的効果が意識を生むのではないか」というのは、現段階ではよく言えば大胆、悪く言えばトンデモに近い意見だとは思うが、とにかく意識という人間がずっと興味を持ち続けながらもまったく科学の手が入れられなかった領域になんとかアプローチしていこうという氏の意見は非常に夢があると感じた。

  • 物性研の所内者、柏地区共通事務センター職員の方のみ借りることができます。
    東大OPACには登録されていません。

    貸出:物性研図書室にある借用証へ記入してください
    返却:物性研図書室へ返却してください

  • ブラックホールの理論でノーベル物理学賞を受賞した数理物理学者ペンローズの著書。
    この本は、ブラックホール理論とは全く異なり、「心を科学的にきちんと理解するためには、物理学の大革命がどうしても必要なのです」という著者の言葉の通りの内容。
    『人の心は特別なもので、人工知能からは心は生まれない。何故なら、心は「量子」と深く関係していて、「量子重量理論」が完成しない限り人工的に心や意識を作ることは不可能である』(竹内薫のwebマガジンより引用)と述べている。

    以下その説明。
    ・物理学には、マクロ(宇宙や日常の物の動き)の世界で用いられる一般相対論(古典物理学の1つ。重力場理論とも呼ばれる)とミクロ(量子など)の世界で用いる量子力学論(量子場の理論)が存在する。ミクロの世界とマクロの世界で用いることのできる式が全く異なる。
    ・この2つを同時に説明する理論は確立されていない。(ニュートン理論などが一部だけ共通するのみ)ペンローズは量子論に重力場の考え方を含めた量子重力論の確立が必要と考えている。
    ・人の意識を理解するには量子論が不可欠。しかし、現状量子論で理解が進んでいないのは、計算できていない要素があるからなのではないか。量子重力論があれば計算できるのではないか。
    ・量子重量理論が適応できそうな場所としてマイクロチューブルが挙げられる。すでにマイクロチューブルが神経反応に関係していることは証明されている。

    かなり難解。物理の知識がないと深い理解はできないけど大筋は理解できたかな。。。人間の理解に物理学の視点が必要というのは言われて見れば当然なのだけど盲点で衝撃的な内容だった。(現状あまり推奨される理論ではないみたいだけど、、、)より広い視点で人間を考える気づきになったし、物理学を勉強し直す機会になって良かった。

  • 物理学を突き詰めていき未だ解明されていな古典物理学と相対性理論と量子力学が変換可能な理論が見つかれば心の問題も物理学の範疇となり得るというような話(と解釈したが、この解釈があっているかは不明)。はじめの数十ページは物理学の基本を平易に解説していて理解をしやすいが、その後の現代物理学から先の数々の変換式が出てくるあたりから全く理解不能。素養がある人でないとついていけないと思う。

  • (特集:「NOBEL PRIZES 2020」)

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  • 心理学や生物学を持ち出さず、物理学と数学で知能を説明しようという発想が天才的。こんな自由な発想をしていいんだなと感心した。SFのネタにしたら面白いかもしれない。

  • 特に量子論辺りから、僕自身の勉強不足のせいであまり深く理解できなかった。
    しかし、神経細胞にある微小管内の構造が寄与して心が生じるというアイデアは(もしかしたら主流ではないのかもしれないが)面白いと思った。というのは、僕が、脳と心の繋がりをそれほど突き詰めて考えてこなかったことに思い至らせてくれたから。
    ペンローズは、人間の心はコンピュータで再現できないとの考えを示していたが、微小管の構造を解明し、コンピュータ上で再現できても、それは心を模倣したとは言えないのだろうか?

  • 原書名:The large, the small and the human mind

    宇宙と量子と人間の心と(宇宙の未完成交響曲;量子力学の神秘;心の神秘)
    ペンローズと三人の科学者(精神、量子力学、潜在的可能性の実現について;なぜ物理学か?;恥知らずな還元主義者の反論;それでも地球は回る)

    著者:ロジャー・ペンローズ(Penrose, Roger, 1931-、イギリス、数理物理学者)
    論争者:アブナー・シモニー(Shimony, Abner, 1928-、アメリカ・オハイオ州、物理学者)、ナンシー・カートライト(Cartwright, Nancy, 1957-、アメリカ・オハイオ州、女優)、スティーヴン・ホーキング(Hawking, Stephen William, 1942-、イギリス、理論物理学者)
    訳者:中村和幸(翻訳家)

  • 難しい量子力学を説明され、量子力学よって心を明らかにできるかと議論されている。難しい言葉が色々と出てきて、理解できないことが多いので、☆3。

  • 心、意識を量子で語れるか?という問いから、量子力学の欠陥、限界を明らかにする。大きな世界でも、小さな世界でも心の世界でも、ペンローズの切り口は興味深い。

    学習の過程で、状態ベクトルの収縮は、受け入れるしかなかったが、考えれば考えるほど、受け入れがたい。

    本書の理解には、量子もつれを含めた量子力学の知識が要請される。

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著者プロフィール

1931年、英国サセックス州コルチェスターに、遺伝学者ライオネル・ペンローズの子として生まれる。ロンドン大学、ケンブリッジ大学セント・ジョンズ・カレッジで数学を学ぶ。ロンドン、ケンブリッジ、プリンストン、シラキューズ、テキサス、コーネル、ライスなど英米の諸大学で教鞭を執ったのち、1973年以降、オクスフォード大学ラウズ・ボール記念数学教授職にある。1972年、王立協会会員に選出される。宇宙論におけるペンローズの定理をはじめとして、物理学・数学の多くの業績があり、王立協会メダル、アインシュタイン・メダル、イギリス物理学学会ディラック賞などを受けたほか、スティーヴン・ホーキングと共同でエディントン・メダル、ウルフ物理学賞を受賞している。

「2016年 『心の影 2 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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