プリオン説はほんとうか?―タンパク質病原体説をめぐるミステリー (ブルーバックス)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 349
レビュー : 46
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062575041

作品紹介・あらすじ

遺伝子を持たないタンパク質が感染・増殖するという新しい発病機構を提唱し、ノーベル賞を受賞したプルシナー。彼の唱えるプリオン説は、狂牛病対策など公衆衛生にも、重大な影響を持ち、科学的真実として受け入れられている。しかし、プリオン説はいまだに不完全な仮説であり、説明できない不可解な実験データも数多い。はたして、プリオン説は、ほんとうに正しいのか?ノーベル賞評価への再審請求。

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりに読み直しました。基礎医学者の方が書いたものって読みごたえがあってぼくは好きです。

  •  科学的興味、に対して「もう牛を食べても安心か」を書き直した、(どっちが先かはホントは知らないけど)そういう印象。ぼくは、こっちの方が面白かった。もう古い本ですね。ブログに書きました。
    https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/201906160001/
    https://www.freeml.com/bl/12798349/1071615/

  • <プリオン説は本当か>

     羊のスクレイピー、牛の狂牛病、人間のヤコブ病・・・これらはすべて「伝達性スポンジ脳症」と呼ばれる感染性の脳に起こる疾患である。
     長らく感染源が見つからなかったが、これらは「プリオン」というタンパク質が原因であるとされ、この「発見」をしたプルジナーはノーベル賞を受賞している。
     だが、この説には支持する論拠も多いが、弱点も厳然として残っている。

    <支持する根拠>
     プリオン、それ自身は正常な状態ではどんな人間の体にもある。しかし、悪さをするのはそこから変異した”異常”プリオンである。
     彼は、感染源である異常プリオンを”分離”した。
     そして、これが疾病にかかった時に、必ず見つかることや、遺伝性のヤコブ病の家系では遺伝上の突然変異がみられ、これが正常プリオンを異常プリオンに変化させやすいという論証等を積み重ねることによって、同賞の受賞に至った。

    <不支持の根拠>
     しかし、正常プリオンかあら異常プリオンへの構造の変化のプロセスは未だ完全に解明されたわけではない。
     さらには、疾病に罹患時にたしかに異常プリオンは見つかるが、異常プリオンのコア部分には感染性はない。
     関係しているのは事実だが、犯人かどうかは疑わしい点もある。
     著者は、まだ見つかっていないが、真の病原体はほかにいるとしてさらなる探求を続けいている。

    <感想>
     ほかのプリオン説の本もいくつか読んだが、どれもプルジナー礼賛で、この本がいちばんマトモな印象である。
     たしかに、プリオンの話は羊や牛、はては食人というダイナミックでドラマチックなエピソードが多い。が、異常プリオンの感染性がいまだ不明というのはどうなんだろう・・・。
     プリオン説が覆れば、いったんは収まっている狂牛病騒ぎが再燃しないとも限らず影響は甚大である。

  • bookloversで本人から紹介
    狂牛病のプリオン説に真っ向から挑む書
    読み物として非常に面白い。内容は本当に専門的で、流し読みするのはつらい。じっくり読めばわかるように構成されている。次はじっくり再読したい。
    流し読みした中でも、衝撃を受けた事実は以下
    ・プリオン説には、疑義がある。
    ・ウィルス説のほうが、説明がうまくできる実験データがある。
    ・過去25年狂牛病を出していないのは、オーストラリアとニュージーランドで、水際の感染対策がかなり徹底している。
    ・アメリカは、狂牛病の牛を、豚、鶏、魚、ペット用の餌として使っている。

  • どうも世間的にプリオン説優勢はゆるがないみたいだが、それはそれとして読んでみる。

    その道のプロが自説、しかも異端の説をディテール含めて展開するのは、読んでいて大変に面白い。少数意見を唱えるものほど丁寧に語らなければならない、という訳だ。しかも著者は文章の達人である。

    たしかにプルシナーによる「プリオン説の最終証明」とされる実験(第5章)の条件は妙にこみいっており、素人判断だがいかにも選びぬかれたデータでないかと思わせる。だがそれも変性プリオンを増殖させる難しさゆえのやむを得ぬ不自然さかもしれず、これだけでは何とも言えず。

    後半のウイルス説を展開する所は非常に面白い。だが遺伝性のプリオン病の原因をウイルスに求める部分はさすがに無理筋に見える。

    それにしても福岡ハカセの説は面白い。こちらこそtoo good to be trueなのかもしれないが。

  • 説の中身もさる事ながら、立証するためのアプローチ法も勉強になる本。

  • ノーベル賞も受賞しているプリオン説に対して、真っ向からケンカを売っている本。
    とはいえ、前半部ではプリオン説そのものについてもかなり詳しく説明されており、しかも後半部でこれを否定する関係上、プリオン説が登場し認められるに至るまでのプロセスやロジックが丁寧に書かれています。
    プリオン説そのものについてだけ知りたい!というときは、この前半部を読めばそれなりの基礎知識は得られると思うし、それだけでもかなり楽しめると思います。

    前半部を読み終えた段階では、自分自身、プリオン説は確かにBSEなどの原因を完璧には解明できていないけれど、それでもほぼ真実と言えるような仮説ではないか?と思っていました。
    示されたデータは、どれもプリオン説が正しいことを示しているように見えて、これを崩すことが果たしてできるのか?と思った。
    でも、後半部ではこれが気持ちいいほど見事に崩されて、読み終えた今では、自分もプリオン説は正しくないのではないか?と思うに至ってます。
    それに、科学者の考え方みたいなのも見えておもしろかった。
    御一読をお勧めします。

  • 生物学系シントピ。フォトリーディング&高速リーディング。

  • 読み逃していた1冊。この本の後に大ヒットを出すので、それまで著者のことは知らなかった。狂牛病(BSE)あるいは羊のスクレイピー、人ではヤコブ病という病気の病原体を探すというのがテーマです。ウイルスではなくプリオンというタンパク質が病原体であるということを突き止めてノーベル賞を取ったのがプルシナー。それに異議を唱えているのが本書。途中からは実験の細かい内容に入っていってフォローできなかったのですが、生物学の研究の大変さだけは分かったような気がします。なんとなく理解できたバイオアッセイという方法――病原体が入っている試験管を10分の1ずつ薄めていき、10本の試験管を準備する。そして、それぞれをたとえば10匹のマウスに注射する。そして5匹以上が発症するのはどの濃さの試験管だったかを調べる。そうすることで、もとの試験管に入っている病原体の濃度が分かる。(発症が5匹未満になるのが8番目の試験管と5番目の試験管なら最初の濃さが1000倍は違うということになる。)それをいくつかの部位から取り出したもので調べていく。するとどこにその病原体がより多くいるのかがつかめてくる。気の遠くなるような手のかかる実験です。それで何か良い結果が出ればいいけれど、そうとも限らない。しかしこうした地道な研究が、後々は医療にも応用されていくのでしょう。ところで、本書は5年前に書かれている。現在はどういう状況なのだろう? 調べないと・・・ 本書もまたまた、リサイクル市で見つけてきました。

  • おもしろい。
    プリオン説はマスコミを通じて広く一般に知られた「事実」となっている。
    しかしながら、真に懐疑的な立場からすればまだ疑いの余地はあるのだ、
    というのが筆者の主張である。その意味で、本書は現在進行形の研究に関する
    レビュー的な性格を持っていると言える。

    本書の面白いところは、内容に技術的な詳細が含まれることである。
    当然ながら、科学はおとぎ話ではない。世界から科学的事実を見出すための
    道具が、いくつも用意されている。それらの道具には一つ一つ癖があり、
    そこから導かれた結論を解釈するときにはいつでも注意が必要なのである。

    本書では、そうした技術に関する癖についてきちんと述べられている。
    スクレイピーを発症した羊から、どのようなプロセスで病原体の濃縮が行われるのか。
    その感染力の評価がどのような方法で行われるのか。
    これらは瑣末な事柄に見えるが、実は本質的である。
    問題の難しさがどこにあるのか理解する上で不可欠な知識である。
    そしてこれは科学を語る上で、決して欠くことのできない視点である。

    技術的に込み入った話であり、本書は非常に泥臭いと言える。
    しかし読みづらさを感じないのは、筆者の文章力のなせる技なのだろう。

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著者プロフィール

福岡伸一 (ふくおか・しんいち)
生物学者。1959年東京生まれ。京都大学卒。米国ハーバード大学医学部博士研究員、京都大学助教授などを経て、青山学院大学教授。2013年4月よりロックフェラー大学客員教授としてNYに赴任。サントリー学芸賞を受賞し、ベストセラーとなった『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)、『動的平衡』(木楽舎)ほか、「生命とは何か」をわかりやすく解説した著書多数。ほかに『できそこないの男たち』(光文社新書)、『生命と食』(岩波ブックレット)、『フェルメール 光の王国』(木楽舎)、『せいめいのはなし』(新潮社)、『ルリボシカミキリの青 福岡ハカセができるまで』(文藝春秋)、『福岡ハカセの本棚』(メディアファクトリー)、『生命の逆襲』(朝日新聞出版)など。

「2019年 『フェルメール 隠された次元』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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