進化しすぎた脳―中高生と語る「大脳生理学」の最前線 (ブルーバックス)

著者 :
  • 講談社
4.09
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本棚登録 : 3058
レビュー : 295
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062575386

作品紹介・あらすじ

『記憶力を強くする』で鮮烈デビューした著者が大脳生理学の最先端の知識を駆使して、記憶のメカニズムから、意識の問題まで中高生を相手に縦横無尽に語り尽くす。「私自身が高校生の頃にこんな講義を受けていたら、きっと人生が変わっていたのではないか?」と、著者自らが語る珠玉の名講義。

感想・レビュー・書評

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  • 『進化しすぎた脳』(池谷裕二)
    やはり期待を裏切らない。
    この人の本は脳科学という分野から覗くことができる世の中の事象を脳科学を学ぶ教室で語ってくれるところが好き。
    この本は、出版された池谷裕二氏の本のなかではもう古い方に入るのかもしれない。私は、彼が出した最近の本から徐々に遡って読むようになってきた。
    でも、色褪せた感じはしなかった。
    時代の最先端の研究分野だから、次々に新しい研究結果がでて新しい事実に塗り替えられている部分も多いことだと思うけど、私たち一般peopleが生きていくなかで、既成概念が覆されることが起きていないのだから、私としては読み物として向き合うことに専念できた。
    「分かり易い」や「面白い」といった表現を突き抜けて、「ワクワクさせてくれる」テーマ選定とそこへの切り込み方が良いのです。「哲学を科学で語る」みたいな感じで、
    哲学書では難解な言い回しになるのに、池谷裕二氏は脳科学の研究成果をアナロジーに、哲学の世界に投影させる。
    『やっぱり、学問は楽しい』とぶるっとさせてくれる。

  • 著者は東大大学院薬学系研究科教授で、専門は神経生理学、システム薬理学。本書は大脳生理学の最先端の知見をもとに、脳と人間の「心」の本質に見事迫っている。後半の、アルツハイマー病の研究を通じて人間という種の特異性を考察する論考も秀逸。本書を読んで、生物学を突き詰めると哲学になるんだ、と驚きを感じた。

    人間は目の前にあるものを「そのまま見ている」と思いがちだが、錯視を例にとればわかるように、実は視神経は世界をラフにしか認識できておらず、映像の大部分を脳が補っている。つまり、我々の認識のかなりの部分は「脳の推測(解釈)」に依存しているのだ。

    また、我々が「自由意志」と呼んでいるものも、実は脳がつくり出した幻想に過ぎない。我々は「ボタンを押そう」と思ってボタンを押すのではない。まず無意識のうちに神経が活動を始めて、手にボタンを押す指令を出すかたわら、「ボタンを押そう」という「意志」が生まれるということが、実験により確かめられている。

    こうした事実を人文学的に解釈すれば、近代自由主義社会のベースにある「自我」や「自由意志」というのは実は根拠のないものであり、社会秩序を維持するためのフィクションに過ぎないということが言える。そういう意味で「無常」を主張して自己同一性を否定し、「物事はすべて関係性の中で起こる」と説く仏教の主張は確からしいということが、科学的にも説明できるわけである。

    また、同じ反応をしているように見えても、実は脳のシナプスの状態は毎回違っていて、再現性がない。同じように記憶も、繰り返せば一応強化されるが、前述のとおり脳の状態に再現性がないので、極めてあいまいにしか覚えらない。意志決定は結局人間のコントロールの及ばない直感、「脳のゆらぎ」の問題に帰着するのだ。しかし記憶があいまいであることによって、「抽象化」ができて法則を見つけられたり、あるいはイマジネーションの働く余地が生まれ、創造性が芽生える。人間の脳はあやふやであることによって、これだけの進化を果たしたと言えるのである。

  • 先輩からのおススメ&レンタルで読了。

    文系アタマには??の部分もあったので、自分なりに理解できる範囲で読み進めましたが、刊行されてから10年以上経つというのに、ものすごく新鮮。今では当時よりさらに研究も進んでいるのでしょうが、それでもまだ進んでいない脳科学ジャンルがあるかもしれません。

    ほんの数年前まで、人工知能といっても日常生活に入ってくるのはまだまだ先のことと思っていたけれど、自動車やちょっとしたアプリ、ネットの世界などでは、どうやら私たちも知らないうちに人工知能の恩恵を受けているらしい。そんな時代故か、そもそも人間の脳ってどうなっているんだろう、コンピュータと人間の脳って、いったい何が違うんだろう…人工知能に取って代わることのない人間の能力って、いったい何なんだろう、そんなことをふんわり思い巡らせることも出てきました。私には、今だからこそ興味深く読めた本かも。

    本を読んで特に興味深かったポイントは以下。

    ・脳の「地図」は、脳ではなくて身体が決めている。脳は実はもっと大きな可能性を持っているが、人間の「身体」の限界ゆえに、脳はその持てる力の大半を使わずにいる。

    ・意識、とは、表現を選択できること。言葉があるからこそ、人間は多様な選択肢を持ち、その中から選択した表現ができる。

    ・抽象的なものが存在していてそれを脳が理解しているのではなく、言葉があるからこそ、抽象的なものを意識し、他者と共有することができる。

    ・人間が人間らしくあるのは、曖昧さがあるから。機械は「正しく」記憶できるが、その記憶に柔軟性はない。人間の記憶が曖昧であるからこそ、時に覚えられないからこそ、情報を汎化することができる。

    ・アルツハイマー病の仕組み。長寿になったからこそ、アルツハイマー病は淘汰されずに残った。

    ・睡眠の意味。

  • まるで近未来SFの序章のようなタイトルだが、副題の通り、中高生向けの脳科学紹介が主題。
    脳構造の進化や脳内物質の化学的機能を細かに語るのではなく、意識や視覚、記憶の実態など、機能を中心に講義形式でわかりやすく解説される。
    なかでも特筆されるのは、肉体とのつながりについて。
    肉体を支配する司令塔と思われている脳が、いかに肉体に支配され、肉体とともに成長するのか。
    なぜ脳のサイズが等しいイルカは人間ほどの知能を持たないのか、なぜイカやタコは小さい脳で多数の手足を動かせるのか。
    『人間の脳は3%しか使われていない』みたいな都市伝説は最近では下火になったが、例えば脳波で動かす義手を子供の頃から装着した場合、脳構造は大きく変化する余地を残しているかもしれない。

    しばし脳力とは記憶力と同一視して語られることがあるが、記憶は正確でないからこそ、特徴を抽出し、意味を見出し、状況を理解することを可能とする。
    どの脳力が優れているか、どう役立つかは時代によって変わる。人には得意・不得意、向き・不向きがあることはどうしようもないが、せめてこの本を楽しんで読めるという奇跡は忘れないでいたい。

  • 夫からのオススメで読みました。

    大変面白い!
    脳の概念が覆されました。

    脳は体によって制限されているという事実。
    意識自体がとても曖昧だということ。
    感覚器はとても曖昧で、我々は脳が作り出した想像の世界の中で少しの感覚によって生きているということ。
    色んなことが驚きだった。

    色んなことが自分の思い込みなんじゃないかと思わされた一冊。

  • 著者は脳科学をガチで研究している方なので、頭モジャモジャのビジネス脳科学者とはちょっと違います。

    高校生に対して授業をしているという体で(もしくは本当にした?)話が進みます。かと言って話が冗長でわかりにくいかというと全くそんなことはなく、内容がスルスル頭に入ってきます。

    色を司る第4次視覚野が壊れると世界が白黒に見えるとか、物の動きを司る第五次視覚野が壊れると動いているものが見えなくなるといった話がとても興味深かったです(現実にこのような人がいるようです)。

    あと、目の解像度は100万画素くらいなのに、なぜくっきりきれいに滑らかに見えるのかとか、盲点の話など、全ては脳が勝手に補完しているからそのように見えるという話も個人的にはかなり「へぇ~」でした。

    2007年の本なので、現在はもっと進んでいると思いますが、脳について知りたいと思ったら読むべきです。

  • 普通に生活してて考えた一部のことの答えになるかもしれない
    非常に読みやすく脳科学の入門に読むのに特に適していると思う
    エンタメとしても面白く意外なことがたくさん詰まっている

  • とっってもおすすめ。
    池谷先生の本は、全部面白い。

  • 面白い。
    難しい話なのに読みやすい。
    この著者好き。

  • 本当に分かりやすくて知識が増える。
    最新の成果は書かれていないかもしれないが,基本をおさえるには読みやすくて良い本だ。

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著者プロフィール

1970年、静岡県藤枝市生まれ。薬学博士。現在、東京大学薬学部教授。脳研究者。海馬の研究を通じ、脳の健康や老化について探求をつづける。日本薬理学会学術奨励賞、日本神経科学学会奨励賞、日本薬学会奨励賞、文部科学大臣表彰(若手科学者賞)、日本学術振興会賞、日本学士院学術奨励賞、塚原仲晃記念賞などを受賞。主な著書に『記憶力を強くする』『進化しすぎた脳』『単純な脳、複雑な「私」』(ともに講談社ブルーバックス)、『海馬』『脳はこんなに悩ましい』(ともに共著、新潮文庫)、『脳には妙なクセがある』(扶桑社)などがある。

「2016年 『怖いくらい通じるカタカナ英語の法則 ネット対応版 ネイティブも認めた画期的発音術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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