新装版 電磁気学のABC―やさしい回路から「場」の考え方まで (ブルーバックス)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062575690

作品紹介・あらすじ

電場と磁場自然界に存在する二つの「場」とは、本当のところどんなものなのか?どうしてそんなものを科学者が考えたのか?電磁気のさまざまな現象を調べながら、電場と磁場を徹底追究。

感想・レビュー・書評

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  • 私のブルーバックス積読シリーズ。積読と言っても、大学時代に読んで、電磁気学の単位取得に大いに役立った本。
    電磁気学の基礎を優しく解説してくれる新書。

    電位差を水位で表現し、高校時代にはよく分かってなかった「"電圧が流れる"ではない」ことを、この本で深く理解することができた。

  • 粒子と場。2つの概念を共に並べることによって、電磁気の世界は繰り広げられる。

    目に見えないものを解釈するのに、目に見えるものに捉われているままでは足りない。目に見えないということは一体何なのか。現実に目の当たりにする現象に対して、これまで通りの自らによって表れてくる像でしか世界を当て嵌めることができないままでは、世界を更新することができないという現実の姿だ。

    電磁気力は、物体どうしが離れたままに及ぼしあう。どうして働くのか。その間には媒介する何かがあるのは間違いないとして、それは一体何なのか。離れたままに働く遠隔力というものなんだとしてクーロンの法則が導かれたのは、それがニュートンの万有引力の法則に相似して示されたからだ。一方、ファラデーは離れているその空間自体を変質させることをイメージした。粒子が電荷(電気的特性、+と-)を持つことによって、その電荷によって空間が特殊な状態になる。その中というのは、電荷をもったものに力を生じさせる、「電場」と呼べる空間になっていることを、力の原理として見出した。媒介するものがなくても、何らかの受け渡しがなくても、電場は存在し、在り続ける。そういうものだ。それまでの遠隔力による概念を、空間自体が媒介することで伝えられる近接力によって成り立つものだと、新しい視点に振り向けさせる。

    1600年、ギルバートの「磁石論」によって電気と磁気が区別されるようになった。

    磁石には磁極があり、N極とS極が引き合う。同じ極同士は反発し合う。磁気に関してもクーロンが法則を打ち立て、遠隔力的に概念は育てられた。似たような電気と磁気に、何か関係があるはずだと予想されたのは当然だ。そうして、電流が磁気に影響を及ぼすことが発見される。電流によって磁気力の示す状態に変化が生まれる。右ねじの法則で説明される現象から、電場と同じように磁場という概念が立ち上がってくる。磁場と磁場に示される磁力線。電流が作り出す磁場。つまり、電流が磁場を齎す原因だとわかる。電流、つまり電荷の移動が磁場を作る。電子の回転(スピン)が磁石を作る。そして、コイルとそこを流れる電流によって、磁石ができる。

    電場と磁場。磁場は電流によって作り出される。そして、磁場の中を磁場に垂直に流れる電流には力(ローレンツ力)が働く。反対に、電流が磁場から作り出される「電磁誘導」がファラデーによって発見された。変動する磁場によって電流が作り出される。磁場とは言っても、変動する磁場からだ。いまでは常識的に思える電場・磁場という空間に「流れている」電気力線・磁力線のイメージが何もないような場の空間を満ちさせて、その状態の変化こそが電流を生み出す、電気力を取り出すことを可能にする原理だと、概念を拡張させた。場が急激に変わることをさせないように、反対の力が生じる。それが電磁誘導だ。磁場の変化に対して、誘導起電力が生じ、磁場が変化するほうとは反対の磁場を作るように電流が作り出される。

    変化する磁場が電場を作る。これが発電に使われている。磁場の中にコイルを入れ、外部から齎されたエネルギーで回転させることで電流を流す。コイルを貫く磁力線の数=磁束は、回転(角度)によって変動する。コイルを貫く磁束の向きが反転することで、向きが交互に入れ替わる交流を自然と作り出すことができる。

    交流とコンデンサ、コイルが電磁気利用の主役になっていく。

    コンデンサは直流を通さないが、周波数の大きい交流ほど通しやすい。コイルは直流をよく通すが、周波数の大きい交流ほど通しにくい。コイルとコンデンサを並列につないだ回路では、電荷を蓄えたコンデンサから流れ出す電流と、電流が流れ込むコイルのその増加を妨げる自己誘導によって、位相をずらしながら電荷が行ったり来たりを繰り返す振動電流が流れる。

    この振動電流が流れる回路で、コンデンサは電場を変動させている。この変動する電場によって磁場ができているとマックスウェルは主張した。つまり、「変動する磁場は(そのまわりに循環型の)電場を作る」という法則と対をなして、「電流および変動する電場はそのまわりに循環型の磁場を作る」という法則があるということだった。

    この仮説は、その発展として電磁波の存在を予言した。光は電磁波の一種であるという仮説とともにだ。

    電場の変動が磁場の変動を作り出す。その磁場の変動が電場の変動を作り出す。そしてまた、そしてまた、・・・・。繰り返す電場と磁場と相互を作り出しながら、空間を伝わっていく。つまり波として、電場と磁場を齎す存在が予言されたということだ。

  • 学生時代にクーロンの法則やキルヒホッフの法則などを習ってテストではそれなりに答えることができた。一方で、それら法則間のつながりや実生活でどのように役立っているかはよく知らなかった。そのせいか電磁気学をあまり面白いと思ったことはなかった。しかし、本書を読んでその考えは一変した。様々な名前のついた法則があるが、電磁気学の基本法則は 4 つであり、それらはお互いに関連していることがよく分かった。また、ラジオや電子レンジなど身近なところで電磁気学がどのように役立っているか説明されており、それによってより理解が深まった感じがする。それほど身近なものではないが、超電導磁石やそれを利用したリニアモーターカーのしくみについても書かれており興味深かった。学校で学習する際にも、教科書と併せて本書のようなものを活用したほうが、法則をただ頭に詰め込むだけではなくなり良いのではないかと思う。

  • 50数年前、無味乾燥な、電気磁気学の抗議を受けた。この著書を当時読んでたら、理解が格段に進んでただろう。      

  • 電磁気について知りたかったので読みました。

    とてもわかりやすく解説されており大変参考になりました。

    面白かったです。

  • 一度高校電磁気学を学んだ後に読むと、電磁気学の世界の奥深さを感じる本でした。そんな簡単なことも知らないで、学んだことになっているのか、ということがいくつも問いとして現れ、面白かったです。
    電磁気学は覚えることが多いですが、本質的には4つの法則からなっているということを説明している本でした。
    また、電磁波の発生の原理は、色々調べましたが、これまでで一番わかりやすい説明でした。

    この本と、それから、その前に読んだ本 ↓

    「「高校数学でわかるマクスウェル方程式―電磁気を学びたい人、学びはじめた人へ」読みました。(http://ur0.work/NbF8)」

    だんだんと、高校生の時にとりあえず問題が解けるようになっただけだった

    電磁気学の分野が目の前に開けてきた気がします。

  • イメージを持ちやすい説明で、中学か、高校か、遅くても大学入学直後くらいでこれを読んでいれば、人生が変わってた気がする。主に電磁気学を避けなかったという意味で。
    きちんと電磁気学を勉強したいという逃避なのか微妙なところの欲求を満たすための良い頭の体操になった。
    160904

  •  電気って何? という人から、一度学んだけど電磁気学についての知識を整理したい、という人までオススメの一冊。

     電磁気学の基本がわかりやすくまとめられている。そのうえ数式を極力使わないようにする努力がなされている。
     もちろん数式が全く無いというわけではない。
     しかし、それら数式はこちらの理解を混乱させるほど複雑な代物ではない。むしろ単純でさえある。
     電磁気の現象は数少ない法則で説明できる、という著者の意見が伝わってくる。

     本書の特徴は、遠隔力と近接力という二つの力の考え方の違いから、「場」とはどういうものであるのか、ということをはっきりさせようとしていることだろう。
     また、現実で電磁気学の理論がどのように利用されているのか、その実用例もところどころで取り入れられている。
     電磁気学が実際にどう用いられているのかを知ることで、「電気」というものが身近に感じられるようになるのではないかと思う。

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