死因不明社会―Aiが拓く新しい医療 (ブルーバックス)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062575782

感想・レビュー・書評

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  • 物語ではなく、死亡時医学的検索についての解説本です。

    相撲部屋で若い力士が死亡した事件では、当初県警は事件性は無いと判断し解剖をしませんでした。
    その後 ご家族が新潟大学に依頼し、暴行による多臓器不全が明らかになりました。

    この本は 事件はもちろんですが、医学的進歩のためにも解剖を含めた死亡時医学的検索の必要性が書かれています。

    海堂氏が書かれた本にはよく死亡時医学的検索、Ai(死亡時画像診断Autopsy imaging)がでてきます。
    日本の現状や問題点、厚生労働省の批評などを シリーズに登場する厚生労働省の役人「白鳥圭輔」のインタビュー方式を混ぜ、分りやすく解説されています。

    海堂氏の本の中で厚生労働省を含めたお役人さんの批判が面白いです。
    本当にもっと責任をもって動いて欲しいものです。

  • ◯Aiの導入は医療を進化させる可能性を感じた。そもそもとして、一般感覚では解剖は普通行なっているような気でいたが、実際にはとても少ないのだという現実も衝撃。
    ◯併せて痛烈な厚労省批判。著者の気持ちは理解できるが、実際に天下りと日和見主義だけで仕事をしているのだろうか。既得権益の調整と、全国に整備することで生じる財源の調整が遅々として進まぬ理由な気もする。
    ◯いずれにせよ、できない理由ではなく、導入するためにはどうするかを積極的考えてほしいテーマ。

  • Aiの重要性は大変よくわかった。また、厚労省の官僚の不作為も。現在の死因確定システムだと、陰でほくそ笑んでいる悪人がそれなりにいることも想像できる。ゆえに、フィクションも創作できるのかもしれない。

    著者のAiについての解説は良いことだらけだが、是非、反論する立場の人の話も聞いてみたい。経済効率だけだったら納得しかねる。

  • 作者の主張は、小説の方がわかりやすい。この本は、学術の要素を入れることで、小説での主張を補足している。
    螺鈿迷宮だったか。
    「医学とは、死体から学ぶ学問だ。」
    という意味の一節があった。
    日本の近代医学の先駆けだった杉田玄白も、当時はタブーとされていた解剖を、罪人の遺体を使う許可を何とか手に入れ、西洋医学の正しさを学んだ、と言われている。
    だとすると、今の医療現場はただ過去のデータで運用されているのか?と考えてしまう。
    エーアイが普遍になれば、医学はもっと人に優しくなれるきがした。

  • 日本の剖検率の低さ(2%)、また(解剖しない)「臨床診断」による誤診率(12%〜30%)の高さや、剖検の遺族承諾を取る必要性のため看過される犯罪(虐待死等)など、実質的死因不明社会という問題への解決策として、Aiという提案を行っている。
    新書にフィクションキャラクター登場させちゃう辺りが海堂尊らしい。白鳥さんに葉子ちゃんがインタビューしたものが各章毎に挟まれています。
    23区は官僚のお膝元だから例外だそうで年間約3000件剖検が行われているそうですが、中には年間0の県も! 横浜市も3000とされているそうだがソースがかなり怪しいらしく、それもそれでどうなの‥‥。
    しかしAiが導入されれば遺族同意率100%であることに加え、医療や医学もデータが増える分向上するし、良いことづくめだそうです。あとは国や厚労省が金を出すだけだけどそれを渋られていると。
    しかし繰り返される「無知は罪である」という言葉が鼻につくうるせえな。

  • たくさんの人がその死因が良くわからないまま荼毘に付される世界。私たちは体験してしまいました。今もそれは続いているように思います。
    2007年刊の本書。
    さて、このAiシステムは現在どのように推移しているのでしょうか。
    コロナ禍に於いてその存在はどのように位置づけられたのでしょうか。
    あの時わからなくても、画像として記録し保存しておけば、のちに何かわかるかもしれない。
    コロナ初期の、亡くなった人の体すら危険物扱いでどうしようもなかった時代はともかく、その後や、これから、人々の疑念だけが膨らんで、コロナのみならず、ワクチンにまで疑いの目が向けられてしまっている現在こそ、活躍すべきもののような気がするのですが、どうなっているのでしょうか。
    そして、こうして「どうなっているのか」という認識な時点で望みは薄いのかもしれないし、著者のいう無知は罪という言葉が、そのまま私たちに降りかかっているのかもしれません。

  • ☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
    http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BA83792216

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99046555

  • なるほど、生者に対しての臨床は充実しているけど死者に対しては驚くほど無関心だなぁと思う。
    祖母の死因については正直ほんとかなと思うこともあったが、高齢だし老衰に近いものがあると思いそのまま受けいれてしまった。今思えばAiを使って診断されたら、遺族としてもより納得できたのかもしれない。

  • 再読、読了。
    10年以上前によんだ時にも、日本の解剖率の低さに驚いた記憶がある。死亡時の医学検索の環境はあれからどれくらい変わっているだろうか?Aiに関しては海堂氏が言うほど進められてはいないように思う。確かに「生前に画像診断していれば死因はおのずとわかる」という言い分は違うと思う。
    本は著者の今までの小説の登場人物でもある白鳥さんと別宮さんの会話形式で、日本の今の現状からAiの必要性が語られており、難しい内容も比較的わかりやすく読むことができる。

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著者プロフィール

1961年千葉県生まれ。医師、作家。外科医・病理医としての経験を活かした医療現場のリアリティあふれる描写で現実社会に起こっている問題を衝くアクチュアルなフィクション作品を発表し続けている。作家としてのデビュー作『チーム・バチスタの栄光』(宝島社)をはじめ同シリーズは累計1千万部を超え、映像化作品多数。Ai(オートプシー・イメージング=死亡時画像診断)の概念提唱者で関連著作に『死因不明社会2018』(講談社)がある。近刊著に『北里柴三郎 よみがえる天才7』(ちくまプリマー新書) 、『コロナ黙示録』『コロナ狂騒録』(宝島社)、『奏鳴曲 北里と鷗外』(文藝春秋) 。

「2022年 『よみがえる天才8 森鷗外』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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