ゼロからわかるブラックホール―空を歪める暗黒天体が吸い込み、輝き、噴出するメカニズム (ブルーバックス)
- 講談社 (2011年6月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062577281
作品紹介・あらすじ
最新テーマまで驚くほどわかる!
暗黒なのに宇宙一明るい! いずれ地球も吸い込まれる? ジェットの超絶パワーの理由! ホーキング放射とは?
ゼロから最先端まで一気読み!
アインシュタインの一般相対性理論が予言したおそるべき暗黒天体ブラックホールは、激しい論争の末にその実在が明らかになり、いまもなお人類に多くの難問を突きつけている。
超巨大ブラックホールの形成、光り輝くガス円盤、噴出するジェットのすさまじいパワー、ホーキング放射による蒸発などを世界に先駆けシミュレーションで追究する著者が「絶対に誰にでもわかるように」と宣言して書いたブラックホール入門書の決定版!
まずざっくりと……次にくわしく
大須賀流の解説とシミュレーションでブラックホールが頭の中にできあがる!
第二十八回講談社科学出版賞受賞作
感想・レビュー・書評
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まさしくゼロからわかるブラックホール、
著者も繰り返し書いているように、
厳密さは多少犠牲にしてでも噛み砕かれて書かれています。
プラネタリウム・博物館に勤めている人間としては、
その方針は非常に重要になってきます。
ですが、自分が自信を持って噛み砕けているかは常に不安があります。
厳密さを犠牲にするのと間違ったことを伝えるのとは違うからです。
研究者が自身の専門を噛み砕いているという意味でも、
この本は参考になりました。
大事なことは繰り返し出てきますし、
この章に戻れば説明があります、といったガイドもあり、
ここはスルーしても大丈夫ですというように、
しっかち理解するよりは大略を掴むことに重点を置いた本で、
まさに初心者にオススメです。
著者は一般向けの本を書くのはこれが初めてだそうです。
「若い研究者はバリバリ研究だけをすべきで、
本の執筆をはじめとする普及活動は熟練の研究者がするべき」
という彼の考えには賛同できませんが、
そういう彼の文章は分かりやすいと思います。
今年は夏に天の川銀河中心のブラックホールでのイベントもあり、
いつもよりブラックホールへの関心が高まると思います。
ぜひ、次回作を書いていただきたいですね。
ブルーバックスだから仕方ないのでしょうが、
せっかくの図版がモノクロなのはちょっと残念ですね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
とにかくゼロから始めて、ブラックホールについての現在の知見(理論、現象双方)が全てカバーされているのではないだろうか。難解なところも飛ばさず、真正面から噛み砕いて説明してくれている。そして、まだまだ解明されていない点を明記しているのも研究者魂を感じる。
本書でふれられている重力波は、本年(2016年)、ついに検出された。
恒星質量ブラックホール、超巨大ブラックホール、ミニブラックホール。
ブラックホールの形成、ガス円盤、磁場の役割(なぜブラックホールに吸い込まれるか)、ジェット、ブラックホールの蒸発、観測。 -
ほんとにわくわくするような一冊(個人的に)
いっぱい書きたいことあるけど、まとまらないので
再読してから書きます!w -
平易に書かれているのだが、それでも話題が話題だけに、文系人間である私には難解な部分もあり、最後の2章は流し読みになってしまった。
それでも、相対性理論などの物理学のちょっとだけでもかじることができてなかなか楽しいものだった。
NHKBSPで放送しているコズミックフロントの内容ともシンクロして大変興味深い内容だった。
この分野の本は、どうせ理解できないのに、また、読んじゃうんだろうなあ。。 -
物性研の所内者、柏地区共通事務センター職員の方のみ借りることができます。
東大OPACには登録されていません。
貸出:物性研図書室にある借用証へ記入してください
返却:物性研図書室へ返却してください -
1100
大須賀健
1973年秋田県生まれ。北海道大学工学部卒業。筑波大学大学院物理学研究科修了。理学博士。日本学術振興会特別研究員(京都大学)、立教大学理学部助手、理化学研究所基礎科学特別研究員を経て現在、国立天文台理論研究部・天文シミュレーションプロジェクト助教。専門は理論およびコンピュータ・シミュレーションを駆使したブラックホール宇宙物理学、超巨大ブラックホール形成論 -
今まで読んだブラックホールに関する本の中で最もわかりやすかった。
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2019年4月10日、イヴェント・ホライゾン・テレスコープ(EHT)が、はじめてブラックホールを画像に捉えたと発表した。
https://eventhorizontelescope.org/press-release-april-10-2019-astronomers-capture-first-image-black-hole
地球から5,500万光年はなれたM87銀河の中心にある超巨大ブラックホールを、捉えることができた。
ブラックホールは見ることができない。
光や電波が脱出することさえできなくさせる極大の重力の極小の固まり、それがブラックホールだ。事象の地平面、シュヴァルツシルト半径を境にして、もう戻ることができない暗黒の底が広がっている。だから、ブラックホールそのものは見ることができない。ブラックホールを見るということは、その周囲に表れる、ブラックホールというシステムにおける現象を捉えることができるということを示している。
ガスの固まりとして発生する恒星は、その中心における反応によって熱を生じ、重力に対抗するようにガスの圧力を高めている。これが恒星を成り立たせているが、いずれ燃料が切れていく星は支える力を失って重力のままに縮退していくしかない。太陽の数十倍の質量をもつ星は、この縮退が止まらずに、事象の地平面すらも超えて、ブラックホールになる。
ブラックホールは周囲にあるガスを吸い込み続ける。一般相対性理論で示された時空の歪みのままに、重力は働く。近づけば近づくほどガスの速度は早まる。重力と遠心力と、地場によって、渦を巻く軌道でガスは飲み込まれていく。内側のガスと外側のガスの速度差がどんどんと大きくなる。その摩擦によって、エネルギーが熱に変わっていく。太陽の100万倍の温度、明るさで光るガスの円盤がブラックホールの周りに表れることになる。
捉えたのはその明かりの円盤。そして、その真ん中にぽっかりと空いた光を残さなり暗黒のあとだ。
光の軌道も曲がる。見えないはずのブラックホールの向こう側の円盤の光も見える。だから、ぼくたちに見えるのは、ブラックホールをぐるりと囲む(包む)円盤の光になる。
現象は、存在の仕方は予測できていた。ただし、観測することはままならない。
太陽の10倍の質量をもつ恒星ブラックホールで半径30キロメートル、銀河の中心に存在す超巨大ブラックホール(太陽の1億倍の質量)では半径3億キロメートル。この宇宙のサイズの中では極小でしかない。小さすぎるから見ることが難しい。
小さなものの形を見分けるための空間分解能が極めて高性能でなければならない。方法として複数の電波望遠鏡を組み合わせて、一つの巨大な望遠鏡として働かせる電波干渉計というシステムがある。空間分解能は電波望遠鏡の直径で決まる。電波干渉計では離れた場所にある電波望遠鏡を組み合わせるほど、巨大な望遠鏡と同じ働きをできるということだ。
EHTは世界8箇所にある望遠鏡を組み合わせて、地球規模の望遠鏡を実現させた。それが今回、ブラックホールを画像としてはじめて捉えさせたのだ。 -
正真正銘の教科書本だ。自分の思い込みがいくつも訂正された。例えば赤方偏移など。読書量が多いことは何の自慢にもならないが(単なる病気のため)、知識が正確になるのは確かである。
https://sessendo.blogspot.com/2020/03/blog-post_5.html -
ブラックホールの形成過程(星の進化論。恒星の質量によって白色矮星、中性子星、ブラックホールになる)、エディントン限界、ガス円盤の種類、ホーキング放射によるブラックホールの蒸発など。とてもわかりやすかったです。