大学入試問題で語る数論の世界―素数、完全数からゼータ関数まで (ブルーバックス)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062577434

作品紹介・あらすじ

自分自身以外の約数の和がその数になっている「完全数」。単純な規則から驚きの数列が生まれる「フィボナッチ数」。「ピタゴラスの定理」と面積157の直角三角形の秘密。リーマン予想につながる「ゼータ関数」。22n+1の形をした「フェルマー数」は果たして素数を表すのか。大学入試問題を水先案内人にして、魅惑あふれる数論の世界に分け入る。

感想・レビュー・書評

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  • 歯ごたえ十分。入試問題に数論の最先端の入り口が示されていたことに驚き。非常に深いところまで誘ってくれ、楽しい勉強体験でした。

  • 入試問題の背後には「美しき数たち」が潜んでいた!フィボナッチ数列やフェルマー数、単位分数など、魅惑あふれる数論の世界に分け入る。

  • 2年ほど前に暇つぶしに読んだ本を、本棚から引っ張り出して再読。

    先月末に、「素数の間隔で新定理発見、極端な偏り無く分布」というニュースが飛び出した。でも、このニュースを聞いたとき、「あれ?素数の分布は素数定理で、大きな数になるほど希薄になっていくんじゃなかったっけ?」と思い、この本で復習した次第。やはり素数定理は正しくて、このニュースを書いた記者が理解できていないのだと思う。

    この本は、大学入試の数学の問題を例にいろんな数論のトピックを紹介してくれる。たとえば素数定理のほかにも、フェルマーの定理、フィボナッチ数列、から公開鍵暗号まで様々。

    受験生のころは無味乾燥に見えた数列や、代数の問題にこんな深い意味が隠されていたとは、本当にびっくり。良書。

  •  入試問題をネタに,数論の世界にいざなってくれる。一つ一つの問題の解説で留まることなく,そこからの関連を辿ってどんどんと内容が膨らんでいくのには驚かされる。
     そしてやはり素数は全体を通じて登場。数論の根幹だからなぁ。フィボナッチ数と黄金比の関係やパスカルの三角形と三角数,四面体数,五胞体数の関係なども非常に興味深い。オイラー関数を使って,素数がRSA暗号にどう使われているのかまで垣間見せてくれる。
     ゼータ関数というと,非常に難解な理論という感じがするけど,高校数学でチャレンジできるような問題にもうまく取り入れられるものだなあと感心。自分も受験を経験したけど,行き当たりばったりに解いていて,その背後にある数学の深淵を意識することはなかったな。もったいないことだ…。

     以下,内容を紹介。
     素数は自然数の中に離散的に現れて,長いこと出てこない区間もある。素数が全く存在しない区間はいくらでも長いものがある。これが簡単に証明できてしまううのがおもしろいところ。なぜなら任意の自然数nについて,(n+1)!+2から(n+1)!+(n+1)までのn個の連続する自然数はどれも素数でないから。
     nと2nの間に必ず素数が存在するという「チェビシェフの定理」があるのに,「連続する二つの平方数の間に素数が必ず存在するか」という問題は未解決。数論にはこういう意外な事実も多い。 nと2nよりも,n^2と(n+1)^2の方が間にいっぱい数があるから素数も多くありそうなものだけど,よく考えれば納得がいく。隣接平方数の差は2n+1だけど平方数そのものがでかいから素数は疎らになってるんだ。
     双子素数が無限に存在するか?という問題も未解決。双子素数とは,隣り合う奇数で両方とも素数になる組。双子素数の逆数の総和が有限になることは分かっているんだけど。
     三つ子素数というのもあるんだ。でも連続する三つの奇数で全部素数なのは,3,5,7の一組に限られるから,三つ子素数というのは,n,n+2,n+6またはn,n+4,n+6のどちらかで,三つともが素数になる組。5,7,11とか,7,11,13とか。三つ子素数のうちの二人は双子素数というわけ。三つ子素数も無限にあるかどうかは分かってない。
     自然数の逆数の和が発散することは簡単に証明できるけど,素数の逆数の和が発散することもオイラーが証明している。でもこの発散はものすごくゆっくりで,180124123005660523という素数まででもやっと4を超える程度。現在分かっている最大の素数まででもわずか17程度。
     奇数の完全数が存在するのかも,偶数の完全数が無数にあるのかもまだ分かっていない。 偶数の完全数が2^(n-1)(2^n-1)の形に限られることはオイラーによって解決されてる。
     2^n-1の形の数(メルセンヌ数)が素数であるための必要条件にnが素数であることがある。 メルセンヌ素数が一個わかると偶数の完全数が一個増える。リュカは僕の生まれる百年前に2^127-1が素数であることを示した。次のメルセンヌ素数はコンピューターの仕事。リュカすげー。
     a,bを2以上の整数とすると, a^b-1が素数になるのはそれがメルセンヌ素数の場合だけ。 a^b+1が素数になるのはそれがフェルマー素数の場合だけ。 2007年の千葉大入試問題。
     正素数角形で作図可能なのは,正フェルマー素数角形のみ。ガウスが証明。 これより前,オイラーはF4=65537がフェルマー素数であることを証明していたが,正65537角形の具体的作図法が発見されたのはさらに後の話。
     すべてのフェルマー数は互いに素である。 F4=2^(2^4)+1=65537より大きいフェルマー素数があるかどうかは未解明。
     フェルマー数が無数にあるのは自明。それらがどれも互いに素なので,素数は無限にあることがわかる。
     ピタゴラス数a<b<cが既約であれば,cは奇数であり,a,bの一方は3の倍数,a,bの一方は4の倍数である。(旭川医科大学2004年) さらにa,b,cのうち一つは5の倍数である。(防衛医科大学校2004年)
     フェルマーの最終定理は超難問だったけど,似たような命題 「nが3以上の自然数のとき,a^n+2b^n=4c^nを満たす自然数a,b,cは存在しない」 は簡単に証明できるのか…。2005年首都大学東京入試問題。面白い。
    「a^n+2b^n=4c^n」は,n=2のときはこれを満たす自然数a,b,cが存在する。例えば2,4,3。 もし既約なのが無数にあるとすれば,ピタゴラス数とおんなじで興味深いな。どうなんだろ?
     フェルマーの最終定理より,「a^3+b^3=c^3」を満たす自然数a,b,cは存在しないけど,「a^3+b^3+c^3=d^3」を満たす自然数a,b,c,dなら存在する。例えば3,4,5,6。これも既約なのが無数に存在するんだろうか?連続する4数では3,4,5,6が唯一解らしい。
    「a^4+b^4+c^4+d^4=e^4」を満たす自然数a,b,c,d,eもあるらしい。もっと一般に「(a_1)^n+(a_2)^n+…(a_n)^n=(a_(n+1))^n」を満たす自然数の組が必ずあるとしたらすごいや。ピタゴラス数の一般化?
    「a^4+b^4+c^4+d^4=e^4」を満たす自然数の組,オイラーはあると予想してたらしい。でも見つけられなかった。1911年に,(a,b,c,d,e)=(30,120,272,315,353)が見つかったらしい。
     オイラーは「a^4+b^4+c^4=d^4」を満たす自然数の組はないと予想してたらしい。でも証明できなかった。1988年にようやく既約な解が無数にあることが証明された。
     オイラーは「a^5+b^5+c^5+d^5=e^5」を満たす自然数の組はないと予想してたらしい。でも1966年に見つかった。(a,b,c,d,e)=(27,84,110,133,144)。では,既約なものが無数にあるんだろうか?
     フィボナッチ数列の中にある平方数は,a_1=a_2=1とa_12=144の2つだけであることがわかっている。 フィボナッチ数列の中に素数が無限にあるかどうかはわかっていない。

  • 大学入試の問題を解きながら,数論に親しもうという趣向.
    いっぱいに題材を詰め込んである.ちょっと慌ただしい感じがした.
    それにしても大学入試に背景となる数論が露骨にみえる問題がこんなにあるとは思わなかった.私としてはほのかに見えるくらいが奥ゆかしくて好み.

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。
    通常の配架場所は、1階文庫本コーナー 請求記号:408//B59//1743

  • なんとなくリーマン予想の概要がわかったような。

  • 20111029 bk1

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著者プロフィール

(しみず・けんいち)
1948年、兵庫県生まれ。岡山大学理学部数学科卒業。博士(理学)。専門は整数論。賢明女子学院中学校・高等学校の教諭を経て、現在、岡山大学客員教授、岡山理科大学非常勤講師。著書に『大学入試問題で語る数論の世界』『美しすぎる「数」の世界』(ともに講談社ブルーバックス)がある。

「2020年 『有限の中の無限 素数がつくる有限体のふしぎ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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