意識と無意識のあいだ 「ぼんやり」したとき脳で起きていること (ブルーバックス)

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062579520

作品紹介・あらすじ

ぼんやりしているときほど脳は活発に働いていた!
記憶、創造性、共感力を支える「陰の脳活動」とは?

研究によると、私たちの心は日中のほぼ半分はどこかをさまよっているといいます。なにか特定の物事に集中していない、いわゆる「ぼんやり」した状態です。この「ぼんやり」した状態のとき、意識的にするのとは異なるしくみで脳が活性化し、膨大な記憶が整理され、創造性や共感力が育まれることが、最新の脳研究や心理学実験から分かってきました。これは、人間だけが持つこのユニークな脳と心のメカニズムといえます。マインドワンダリング、デフォルトモードネットワークなど、今、脳科学・心理学で注目を集める新たな脳と心のメカニズムを、この分野の研究の世界的第一人者が解き明かします。

”ふとぼんやりしていたことに気づくと、自分は集中力に欠けるのではないかと引け目を感じる。厄介なことに、私たちは何かに注意を向けた状態と、別のことを考える状態を行き来するように生まれついている。このぼんやりした状態を「マインドワンダリング」と呼ぶ。本書では、マインドワンダリングには多くの建設的で適応的な側面があり、たぶん私たちはそれなくしては生きていけないことを示していこう。”(「はじめに」より)

感想・レビュー・書評

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  • 目的不明の思考が自然と生まれ、その思考は意識をさまよい、うつろっていく。授業中、仕事中、いやいや読書中にも運転中にだってそれはあるものです。この作用をマインドワンダリングと呼びます。マインドワンダリングしていると「集中しなさい!」と授業や仕事に呼び戻され、読書中にそれに気づけばハッと意識を正すようにして読書に戻る。運転中のマインドワンダリングならば、もしもそれが深いものならば事故の危険が高まります。「集中しないと!」と目を見開いたりするかもしれません。

    時代はマインドフルネスが力を持っています。マインドフルネスは、「今ここ」に集中する方法です。雑念を払い、今を十全に感じることで、生きている実感や充実感とともに、意識がすっきりするとも言われます。ひとつの瞑想法です。対してマインドワンダリングは、「今ここ」に集中しません。マインドタイムトラベルと呼ばれるような、意識の中で過去や未来へと思念を飛ばしあれこれ考えを巡らせるようなことも含まれます。マインドフルネスが正しい行為であると決めてしまえば、マインドワンダリングは取り除くべき悪い行いなのでしょうか。本書は、これまでに解析されたマインドワンダリングのメカニズムをたどり、それらの研究にもとづく論理的な筋を骨子としながらも、数多の文学作品の引用をまじえて味わい深くその意味を語ってくれるエッセイです。

    マインドワンダリングが生まれるのは、安静時の脳で活動するデフォルトモードネットワークという神経網の状態からです。といいますか、デフォルトモードネットワークの状態で脳は何をやっているのか、と考えていくとマインドワンダリングがあった、といったほうがわかりやすいでしょうか。活動してない状態なのに、活動時よりも脳が活発に動いているデフォルトモードネットワークの状態が不思議で、それがどういうことか、と追ってみたら……ということです。

    前述のマインドタイムトラベルについて考えを深めるとわかるように、マインドワンダリングには「記憶」が重要なソースとなっているようです。つまり、脳の海馬が関係している。この、海馬を損傷した人を調べた研究によると、マインドワンダリングは生じていないようでした。その人の脳でデフォルトモードネットワークが起こっていないと考えるのは難しいので、デフォルトモードネットワークの活動中にマインドワンダリングを起こすためには海馬の能力が必要だということでしょう。

    また、私たちは他者がなにを考えているか知る能力に長けています。これを「心の理論」と呼ぶそうです。他者の気持ちになって考えたり、他者が間違った信念を持っていることに気づいたり、そういったことはシンパシーやエンパシーができるからですが、これらを行っているときは、デフォルトモードネットワークが活性化しており、つまりマインドワンダリングが作用していると考えられるそうです。

    その後、本書では、マインドタイムトラベルとマインドワンダリングの性質から、物語を作る能力や夢を見る能力につながることを論じていきます。そして、その先に、マインドトラベルと創造性の関係が浮かび上がってくるのでした。マインドワンダリングは、ランダムに思考が浮かんでくることでもあります。ランダム性というものは、「たまたまやってみる」という行為を生むもので、その結果として、「たまたまやってみたらうまくいった」こともでてきます。これがいわゆる、新しいアイデアが成功した瞬間なのでした。創造的です。この先に何があるのかといったことを知るには、さまよってみることが必要です。思考も同じで、思考をさまよわせる(マインドワンダリング)ことで、考えたことのない考えを発見することがあります。さまようことの大部分は、逸れたり失敗したりすることでしょう。創造的ということはそういったことなんだと思います。

    またこの論理を、たとえば読書という行為へと当てはめてみるとします。すると乱読というランダム性にはどうやら効能があるだろうことがわかってくると思います。調べ、深めるための体系的な読書は素晴らしいですが、アイデアの発見、知的領域の新大陸発見のための乱読だってすばらしいと言えるのではないでしょうか。

    最後に。
    脳には右脳と左脳をつなぐ脳梁という部位があります。その脳梁が小さいほうが創造的らしいそうです。右脳と左脳それぞれが独立していることに理由があるのではないか、と。大きなひとつの枠組みで考えるよりも、二つの枠組みで考えるほうが創造性に繋がるのではないかということでした。なかなか意外ですけれども。

  • ぼんやりする時間も大事なことが分かった。
    翻訳調と過剰な具体例が読みづらい。

  • 訳者あとがきより、
    私たちがぼんやりしているとき、心はどのような状態にあるのか、脳はどんなはたらきをしているのか。マイケル・コーバリスはこの本で、さまよう心に関わる記憶(海馬のはたらき)、時間、心の理論、物語、睡眠と夢、幻覚、創造性について述べ、私たちの心のはたらきに迫っていく。

  • ニュージーランドの心理学者による心理学の話。「マインドワンダリング」と呼ばれるぼんやりとした状態について、心理学的、脳科学的に述べたものであるが、結論が曖昧でよくわからなかった。
    「(ロフタス)偽の広告を被験者に見せた。その広告では、ディズニーランドの素晴らしさを伝えるために、ディズニーのキャラクターではないバッグス・バニーが用いられた。すると、被験者のうち1/3が自分もディズニーランドに行って、バッグス・バニーと握手したことがあると主張した。バッグス・バニーはワーナー・ブラザーズのキャラクターで、ディズニーランドにいることはありえないのに。記憶は誤りだった」p44

  • 本としては、心理学、脳科学、神経医療、生物学、言語学などの多くの研究を紹介しつつ、文学作品にまで広がりを持つ良書。

    ただ、残念ながら知りたいことはほとんど書いていなかった。
    知りたかったことというのは「ぼんやりの積極的な意義」である。

    この本の日本語タイトルは

    『「意識」と「無意識」のあいだ 「ぼんやり」したとき脳で起きていること』


    だが、原題は

    『The Wandering Mind : What the Brain Does When You're Not Looking』だった。

    つまり本書のタイトルも主題も「The Wandering Mind」であり、本書ではこれは「マインドワンダリング」とされている。
    マインドワンダリングとは「飛び交う思考」といった意味のようである。
    例えば、人間は過去や未来を想像することができるが、これは「マインドタイムトラベル」とされ、他には「忘れること」「記憶違い」「幻覚」といった「当人が意識していない脳活動」のこと指すようだ。
    その際に活動する脳領域を「デフォルトモード・ネットワーク」というらしい。
    (ちなみに「マインドワンダリング」の反対は「イマ・ココ」に集中する「マインドフルネス」であり、こちらはマインドワンダリングに比べれば名前は広く知られていると思う)

    これらについて、様々な研究を紹介がされているのだが、本書では「ぼんやり」の積極的な意義が説明されているわけではない。
    最後のほうで「創造性」との関わりについて触れられている程度だ。
    それでも「創造性」に関わる内容のほとんどは「麻薬」と小説家・音楽家等のクリエイターとの関わりについて書かれている。

    最初に書いた通り、「脳活動」について、心理学、脳科学、神経科学、言語学など幅広く取り扱い、議論が分かれている部分について断定的な書き方がされていない点も良い。

    ただ、やはり、タイトルについては疑問が残る。
    そのまま「マインドワンダリング」で良かったのではないか。

  • 「マインドワンダリング」や「デフォルトモードネットワーク」など現在でも心理学で研究の対象になることについて書かれた本。

    内容はちょっと古いというかどこかで聞いたことあるようなものも多く、あまりよく考えずざっと読んでしまった。

  • ふむ

  • 145-C
    閲覧新書

  • 難しいパズルの解答が思いつかない時、そのパズルに集中
    している間にはいっこうに答えが見つからないのに、一旦
    休憩して他のことをしている時─あるいは集中の要らない
    単純作業をしている時、全く何もしないでボーッとしている
    時─に突然答えを思いつく・答えが降ってくるという体験は
    誰しもが経験していると思う。この本はそんな現象が起こる
    時に脳内で何が起きているかを書いた本、だとタイトルから
    勝手に思っていたのだが、その前の段階─人の脳はボーッと
    して彷徨う(マインド・ワンダリング)ものなのだということを
    書いた本であった。何となく当たり前のことを改めて聞か
    された感じで少々期待外れでした。

  • マインドワンダリングは、無意識なものと、自分の意思で過去の記憶を再生したり未来の計画を立てたりといった意識的なものがある。私たちの心はさまようようにデザインされている。
    皿洗いなどの記憶力を要しない課題が1番マインドワンダリングを起こしやすい。新しい発想をするにはマインドワンダリングが効果的。どんな妄想するにしても、それが時間の無駄だと思わないでおく。

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著者プロフィール

ニュージーランドのオークランド大学心理学部名誉教授。同大学で修士号、カナダのマギル大学で博士号(心理学)取得後、一九六八年から七七年にかけてマギル大学心理学部で教鞭を執った。おもな研究分野は認知神経科学と言語の進化。邦訳された著書に『言葉は身振りから進化した』(勁草書房、二〇〇八)と『左と右の心理学』(紀伊國屋書店、一九七八)がある。

「2015年 『意識と無意識のあいだ 「ぼんやり」したとき脳で起きていること』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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