日本海 その深層で起こっていること (ブルーバックス)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 116
レビュー : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062579575

作品紹介・あらすじ

実は「謎だらけの海」だった!

独自の海水と循環構造をもち、厳寒の冬にだけ起動する“造水装置”をも備える。
調査航海歴40年の第一人者が謎解きに挑む。


なぜ、世界中の海洋学者が注目しているのか?

わずか8000年前まで“死の海”だった日本海。

生命の宝庫へと変貌した背景には、最下層にひそむ、厚さ1000メートルにおよぶ「謎の水」の存在があった。
この海特有の海水は、なぜ生まれたのか?

そして、環境変化を先取りする「ミニ海洋」の異名をもつこの海に、いま生じつつある大きな異変とは?

「母なる海」の知られざる姿を解き明かす、海洋科学ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  •  太平洋や北海道民にとってのオホーツク海より地味な印象の日本海。
     しかしそこは地球の海の縮図ともいえるダイナミックな海。

     知的好奇心を刺激する、一級の科学読み物。

     日本海の特徴は風呂桶のような構造になっていること。3000mを超える深度があるにもかかわらず、周囲の海峡は深さ150m(対馬海峡)から10m(間宮海峡)程度しかない。その日本海の深層水を調べると驚くべき結果がでる。
     塩分濃度、温度、酸素濃度が2つの断層面は挟むものの一定に保たれていること。これは海水が十分に攪拌されていることを示す。ではどのようにその流れが起きるのか。
     ロシアから吹き降ろす冬季の北西季節風により対馬海峡から暖流によって運ばれる暖かい海水が急速に冷やされる。蒸発した水蒸気は雪雲となり日本列島に衝突、大雪を降らせる。水分を失い急速に冷やされた海水は比重を高め海の中に沈みこんでいく。沈む海水の塊があればそれによって表面に押し上げられる塊もある。こうして日本海の深層水は均一に攪拌される。
     黒海は深さ2000mもあるが寒冷な気候にないためこの沈みこみが起きない。そうすると150mを超える深度の黒海では生物の死骸の分解により酸素が使われる一方で沈み込みによる酸素供給が起きず、生物が生存できない、死の海となっている。
     放射能同位元素に測定することで日本海の一回の循環には100-200年を要することがわかる北極や南極から太平洋などを循環するのに2000年を要することを考えると日本海はそれをコンパクトな形で観察できるミニチュア版海洋といえる。
     この深層への沈み込みは常に起きているわけではなく、日本海の海底に沈殿した有機物を分析すると過去何回か沈み込みによる酸素供給が途絶し日本海が死の海になった時期がある。
     インド大陸塊がユーラシアプレートに衝突、ヒマラヤ山脈を作った力が東に逃げ、日本列島やフィリピンなどを外側に押しやったことで日本列島ひいては日本海ができた。
     大陸と微妙な距離で隔てられたことで今の日本がある。これがもっと近く、日本海が小さいものだったら文化的経済的にも日本は大陸の一部となったはず。またもっと遠かったら絶海の孤島となり、やはり文化は華開かなかっただろう。気候的にももっと大陸に近ければ寒冷乾燥した大陸的な気候となったはずだし、離れすぎていれば海洋性の気候になったはずで日本人の感性をはぐくんだ豊かな四季は生まれなかった。このサイズ、この大きさの日本海があればこそ日本という国がある。冬期間豪雪があることで雪解け水は地下水となって日本海側に豊かな水資源をもたらす。これがまた冬期間の荒れた波が砂州を形成し天然の港が形成された。日本海に寒流暖流が流れ込み種類、資源量とも豊富な海の幸がとれる。日本の太平洋側の都市が勃興したのはこの100年ほどでありそれまでは日本海側が日本の顔、世界に開かれた玄関だった。
     この数十年、顕著に日本海深層の酸素濃度が落ちてきている。これは冬の寒さが温暖化のために和らいでしまい、十分な海水の沈み込みが起きなかったことを示す。ここにも温暖化の影響が表れていると考えられる。
     また、2000年ー2001年は寒い冬だったがその年には表層海水が十分冷され、その年に沈み込んだ海水塊がウラジオストック沖の深層にあるのが観測されている。
     深度計、海水採取装置、精密な温度計の発達でここまでわかるようになってきた。
     世界の海のミニチュア版として日本海は絶好の研究対象である。
     

  • ★3.5。
    何が一番新鮮だったかと言われれば、日本地図の示し方。
    富山県、凄いじゃないですか、この発想。日本列島がどういう形なのか、むしろこの方が分かりやすいくらいかも。
    いやいや、こちらも面白い本でした。

  • 海水が沈み込み、酸素や栄養を深海に届けるというのは興味深い
    海水だから沈んでいるというイメージがないが、表層面が重くなると沈むと言われると納得
    日本海は循環が内部で完結しているミニ海洋で、この先の世界の海の先行モデルたりうる
    地球温暖化の影響が海水の循環にどのような影響が出るのか不安になってくる
    過去の核実験で出たトリチウムが海水が沈んだ時期を特定するのに役立つというのも面白い

  • memo:
            平均水深 最大水深
    日本海     1667m  10920m(マリアナ海溝)
    全海洋     3800m   3796m(日本海盆)
    黄海・東シナ海  272m
    オホーツク海   973m

    大和海盆 3000m 対馬海盆 2600m 大和堆 236m
    海峡 間宮10m 宗谷50m 津軽130m 対馬130m
    ~海峡の浅さ、強い閉鎖性

    干満の差 八戸130cm 深浦20cm

    (P37)
    「ブロッカーのコンベアーベルト」
    北大西洋深層水(冷却され塩分の高い北部北大西洋で沈み込んだ高密度水)→大西洋を南下 →南極底層水 →(地球の自転の動きで西へ)→太平洋 暖かい表層の流れとなり、北大西洋へ還流(一巡に1000~2000年)

    日本海は一巡100~200年

    海水の年齢調査 放射性炭素C14やトリチウム含有

    ◇C14による年代測定
     大気中の窒素原子N14が宇宙線由来の熱中性子nによって核反応を起こしC14を生成。C14はCO2となって大気中に均一に拡がり、その一部は大気から海洋表面水に溶け込む。C14がどのぐらい減少(半減期5730年)しているかを調べることで、経過時間(年代)を算出できる。
     木片の場合、樹木中のセルロースは生育中は大気中のC14を取り込んでいる。切り倒されると、大気との接続が断たれてC14の供給がなくなることから算出できる。

    ◇トリチウム(半減期12.3年) 1960年代 大気中核実験で生成
     H2Oの中にTHOとして紛れ込む

  • 日本海が、構造的に世界の海洋システムのミニチュアのようになっており、その変化を観察することが、気候変動が世界の海洋に及ぼす影響を考える上で、非常に示唆に富むということが分かった。

    海の水はその場所によっても、その深さによっても異なっており、それらの循環システムが、海の生態系を作りだす役割を担っている。

    中でも日本海は、そのシステムの独立性が高く、かつ非常にコンパクトな形で成立しているということに、大きな特徴がある。

    著者の研究は、その実態を明らかにする意味で非常に有意義なものであると感じた。

  • 朝日書評より。図書館にて。
    日本海は地球の海の縮小モデル
    海峡は浅い
    急激に深くなる
    太陽系における地球の奇跡と同じ、日本の気候の奇跡
    大陸からの風が日本海で水分を吸い上げ、冷やされ、列島の日本海側に雪を降らせる
    雪は多量の水を蓄積する
    流れやすい雨と違う

    良書なので結局買いました。2017/5/4御茶ノ水丸善にて。
    この頃はブルーバックス本を続けて購入読書。法律、英語、論文書き方、研究不正など。

  • 日本海の構造,歴史,日本の気候に及ぼす影響,環境変化のカナリヤ的位置付けであること,など。
    直接潜ってどうこういった違いがわかるような深さではないけど,次に日本海に相見える時にはそうかこの中は……とにやにやしそう。

  • 請求記号 452.223/G 18/1957

  • 内容紹介
    実は「謎だらけの海」だった!

    独自の海水と循環構造をもち、厳寒の冬にだけ起動する“造水装置”をも備える。
    調査航海歴40年の第一人者が謎解きに挑む。


    なぜ、世界中の海洋学者が注目しているのか?

    わずか8000年前まで“死の海”だった日本海。

    生命の宝庫へと変貌した背景には、最下層にひそむ、厚さ1000メートルにおよぶ「謎の水」の存在があった。
    この海特有の海水は、なぜ生まれたのか?

    そして、環境変化を先取りする「ミニ海洋」の異名をもつこの海に、いま生じつつある大きな異変とは?

    「母なる海」の知られざる姿を解き明かす、海洋科学ミステリー。

    著者について
    蒲生 俊敬
    蒲生俊敬(がもう・としたか)
    一九五二年、長野県上田市生まれ。東京大学理学部化学科卒業。同大学院理学系研究科化学専攻博士課程修了。理学博士。東京大学海洋研究所助手、同助教授、北海道大学大学院理学研究科教授を経て、東京大学大気海洋研究所海洋化学部門教授。専門は化学海洋学。海水中に溶存する気体成分・放射性核種等を用いた海洋の深層循環や海底熱水活動に関する研究により、日本地球化学会賞・日本海洋学会賞・海洋化学学術賞(石橋賞)を受賞。研究船や潜水船によるフィールド調査をこよなく愛し、これまでの乗船日数は一七四〇日に及ぶ。著書に『海洋の科学』(日本放送出版協会)、『海洋地球化学』(講談社)など。

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著者プロフィール

蒲生俊敬(がもう・としたか)
東京大学名誉教授。
1952年、長野県上田市生まれ。東京大学理学部化学科卒業、同大学院理学系研究科化学専攻博士課程修了。理学博士。北海道大学教授、東京大学大気海洋研究所教授を歴任。専門は化学海洋学。海水中に溶存する気体成分・放射性核種等を用いた海洋の深層循環や海底熱水活動に関する研究により、日本地球化学会賞・日本海洋学会賞・海洋化学学術賞(石橋賞)を受賞。研究船や潜水船によるフィールド調査をこよなく愛し、これまでの乗船日数は1740日に及ぶ。著書に『日本海 その深層で起こっていること』(講談社ブルーバックス)、『海洋の科学』(日本放送出版協会)、『海洋地球化学』(講談社)など。

「2018年 『太平洋 その深層で起こっていること』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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