近代性の構造 (講談社選書メチエ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062580014

感想・レビュー・書評

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  • 1968年のパリとプラハで起こった資本主義と社会主義の双方に反対する市民の運動には、象徴的な意味があったと著者は主張します。資本主義と社会主義は対立するイデオロギーと考えられていましたが、世界史的な観点から見ると、両者はともに「近代性」の精神的構造に基づいていると著者はいいます。1968年の事件は、そうした「近代性」への懐疑が噴出した、象徴的な出来事だとみなされることになります。

    本書では、「近代性」の精神的構造とその問題が包括的に論じられています。まず、「近代性の根源」とされる近代的時間構造がとりあげられ、円環的時間が支配する近代以前には、人びとは伝統にしたがって日々の営みをおこなっていたのに対し、近代の意識を支配するのは、直線的時間の枠組みだと述べられます。近代においては、人びとはたえず未来を先取りし、未来に向けての「企て」をおこないます。こうした精神が個々人に内在化されるとき、ウェーバーのいう「労働のエートス」が人々の内に根づくことになったと著者は主張します。

    さらに著者は、近代における機械の誕生に、「作る」ことによって自然を征服する制作的理性の成立を見ようとしています。機械論的発想は、個人主義とそれに基づく近代市民社会の根底にも認められるものです。しかし近代においては、人びとは同質的な個人であることが求められ、そのために異質的なものを排除する動きも生じることになります。二十世紀が生み出した数々の悲劇は、こうした近代的精神構造が生み出した病と考えられることになります。

    本書のねらいは、近代の精神構造を大枠でとらえようとするものだといってよいでしょう。著者が論じてきたさまざまな問題を整理して、「近代」という大きな問題圏の中に位置づけた本だということができるように思います。

  • 本書は、タイトルにある”近代性の構造”を、「時間論」「機械論」「自己規律論」の三点から批判的に検討。西洋近代のさまざまな思想のなかから、そのエッセンスを抽出していく分析は、各思想家の多面性を描き出していて興味深い。

    1968年を転換点として今日まで、いわゆる近代への批判が展開されてきたが、いまだ乗り越えられない近代性のうちに留まっているように思う。一方で、結論部で著者がしめす「試みの精神」の今日のありようを、しっかりとらえていく必要がある。そうでないと、”絶望しか残らない”。

    人(びと)が現実に存在するという事実がもつ根源的な”暴力”による「排除の構造」に対して、「あえて異者たれ」という呼びかけに勇気をもって答えたい。

    巻末の思想家紹介やブックガイドも秀逸。

  • だいぶ前に読んだ。微かな記憶によれば、ゴリゴリの左翼の近代論。戦後左翼の極みといっていいだろう。

    それまで親しんでいた近代論とは異質。でも、よく覚えていない。

  • 面白かった。近代を体系的網羅的に把握できた。時間論が興味深かった。いやはやまだまだ勉強不足だと痛感。。

  • 時間と機械の精神が支配する「近代性」の根源を洗い出し、脱-近代を試みる。

  • 近代人 特徴 時間感覚
           自己規律
           機械信仰
    近代の現代への移行 近代論

  • 石原千秋氏推薦して曰く、「時間感覚や自己規律や機械信仰といった近代人特有の心性を分析しながら、近代が現代(脱近代)に移行するその時をみごとに論じた。近代論の白眉と言える。」(『教養としての大学受験国語』063頁)

  • 資本主義と社会主義。

    大きな”対立”する問題だとばかり思い込んでた私に、一撃を与えてくれた一冊。

    「近代とは何か」という問題意識は、おそらくこれからも強く持ち続けることになるような気がする。

  • 先日読んでいた『近代天皇制と古都』の注にこの本が挙がっていたので、読むことにした。恥ずかしながら今村仁司の本を読むのははじめてだ。

    なんというか・・・すごい人なので、きっとすごいのだろうけど、たぶんすごすぎてそのすごさが僕には伝わらないんだと思う。膨大な研究を1冊にまとめると、なんとなく物足りなくなる、という感じに僕は受け止めてしまった。まあ、単に前提となる知識の不足のなせる感想なのでしょうが。

    疑問なのは「1930年代から、フランス革命以降から始まった第二近代は危機を迎えつつ、管理主義を特色とする体制へと変身していった。この危機の克服過程は、同時に世界のヘゲモニー(覇権)をめぐる争いであり、第二次世界大戦はひとつの決着のつけ方であった」(p185)とさらりと述べているけれど、管理主義が第二次世界大戦を導き出した道程はよくわからない。というか、それだけできっと歴史学的には1冊の本が書けるくらいの問題なのだけど、抽象化した事象A(ここでは管理主義)と抽象化した事象B(ここでは第二次世界大戦)が理論的に結び付けられるだけで、それって本当なの?という気に歴史学専攻の者としてはどうしてもなってしまう。

    あと、人間は著者が言うところの「近代」以降、<人間/非人間>の区分から逃れられなかったとするのだけど、じゃあ「近代」以前はどうだったのだろう?「人間の社会化や社会性が不幸(排除や差別―blog作成者)の源泉」と排除や差別は人間の誕生以来の課題だとしながら、一方で近代に生れた<人間/非人間>の区別を乗り越えることができたら、排除や差別も乗り越えられると書いているように思えるのだが。

    それから、政治革命があって産業革命がある、というテーゼについて。今の研究はイギリス産業革命について一気に起ったんじゃなくて極めて緩やかに展開してたという説があると思うのだけど(川北稔「近代世界と産業革命・市民革命」『歴史学における方法的転回1』)、そうなると「政治革命→産業革命」という単純な移行論では語れない、もっと複雑な過程が「近代」の形成について問われないといけないのではないだろうか、という気がする。

    と色々文句は書いたが、資本主義と社会主義を人間を機械とみなす発想において同根であり、それは近代の賜物であるという見方は(ほんとかどうかはよくわからないが)僕にとってはかなり斬新だった。まさに対立すると思われていた思想の揚棄を試みようとしているという点で、見習うべき姿勢を持っている本だと思う。

  • 「近代」という時代の本質について、この本ほど分かりやすく解説した本は少ないと思う。いわゆる今村哲学の入門書として最適な書。

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著者プロフィール

1942年岐阜県に生まれる。1970年京都大学経済学部大学院博士課程修了。元東京経済大学教授。2007年歿。著書『交易する人間』(2000、講談社)『清沢満之と哲学』(2004、岩波書店)『抗争する人間』(2005、講談社)『マルクス入門』(2005、筑摩書房)。訳書 ブルデュ『実践感覚』全2巻(共訳、1988/1990、みすず書房、新装版2001、新装版2018)アルチュセール他『資本論を読む』全3巻(1997、筑摩書房)マルクス『資本論』第1巻(共訳、2005、筑摩書房)ほか。

「2018年 『実践感覚 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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