- Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062581004
感想・レビュー・書評
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2018/02/01 18:49:51
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「裏切り者」のみならず、筆者の他の著書でも出て来る、強烈な個性を持つ様々な者も取り上げられている。中国人なら当然知っているであろうエピソードも少なくないので、中国文化の理解にもよい。裏切り者が乱を起こす時には皇帝が暗愚なことが多いのも分かる。司馬懿仲達は三国志では死せる孔明に走らされているが、実はじわじわ三代かけて魏の乗っ取りに成功している。また、現代でも裏切り者の代表格とされる南宋の秦檜だが、筆者の言うように、彼の推進した金との和平のおかげて南宋がその後もそれなりに発展したとも言えないか。「英雄」岳飛のように徹底抗戦していたらもっと早く滅亡していただろう。
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取り上げられているのは、
・春秋時代の伍子胥
・戦国時代の各遊説家
・新の王莽
・三国末の司馬懿
・東晋の王敦、桓温
・唐の安禄山
・南宋の秦檜
・明末清初の呉三桂
必ずしも王朝簒奪者だけが紹介されているとは限らない。
気質、主や国を裏切った理由、その後の経緯などを描き、裏切り者にも色々なタイプがいるがそのほとんどがトリックスターの要素を備えていると結論づける。
人物像のみを紹介するのではなく、その時代の前後の政治、社会情勢も併せて描いていること、取り扱っている人物が春秋から清までを大体網羅していること、そしてどの章も読みやすく書かれていることから、通史をおおまかに理解するのにも役立つのではないかと思う。
ただし本当にその人物のみを重点的に調べたいなら、本書はあくまでビギナーズガイドとして捉え、別個の専門書を探したほうがいい。