「ものづくり」と複雑系―アポロ13号はなぜ帰還できたか (講談社選書メチエ)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062581448

作品紹介・あらすじ

宇宙空間から奇跡の生還を遂げたアポロ13号。それを支えたものはなにか?事故をも想定した設計、地上での丹念なシミュレーション、巨大システムの掌握術…。複雑すぎる現実に対処する工学に潜むしなやかな知を探り、人間が世界を作り変えるための「限定合理性の思想」に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 以下、本文からの引用

    ──もう一つの工学理解の観点は、世界を「理解しよう」という科学や哲学に対して、世界に「対処しよう」とする工学の目的に関わる。自然科学は「世界はどのようなものであるか」を問う。このときには、法則が線形であろうが、非線形であろうがそんなに大きな意味は持たない。

    ──また、工学は理論のきれいな世界に留まれないということも重要である。科学の発達は、単純な原理で多くのことが説明できることを一つの目的にしている。しかし、工学ではもっと泥臭い世界を相手にしている。それは複雑な系の世界であり、非線形が効いている世界である。科学の発展があっても、それが即座に工学の発展には結びつかない。科学がひじょうに信頼のおける世界を記述していても、それでは生きている世界は扱えない。

    ──ルーティンや習慣といったものは、合理性とは反するように思えるかもしれないが、実は限定された合理性しかもたない人間にとっては、合理的な決定をするために時に必要なものなのだ。真理に近づくことだけを目指すのではなく、計算能力の限界があるということを踏まえたうえで、客観的合理性に近づこうとしているのである。

  • 限定的な合理性、しなやかな合理性という考え方は、そもそも複雑系だった現実に対応するために生まれた人間の知識そのものである。社会心理学者が実験室に閉じこもらず、社会に出て責任を持とうというときに、本書の考え方、工学の考え方、複雑系に対する人間の知識の集積方法、は必ず役に立つものと思われる。

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