reinouさんの感想
2017年1月22日
主に第二次世界大戦前後の米国内の人権擁護の実態を、主に負の側面、すなわち黒人を中心とする人種差別、日系人強制収用問題などの点から解読する。もちろん、総力戦下であることは米国も変わりなく、敵国日独などの出身者への政策が、米国の掲げる自由・民主の理念には程遠い模様を展開。ただし、人口の一割を占める黒人への対策だが、忠誠心ある軍人として機能させる必要性、反面収まらない黒人差別(南部は勿論軍内でも)、一方で黒人が北部工場労働者のみならず、軍人としての海外での生活で得た視野の拡大が後の公民権運動に与えた影響も分析。 勿論、相対的に見れば、日本やドイツに比べ、民主主義の理念を貫徹させる要素が大きく、また、真珠湾攻撃までは日系人の強制移住は経済的にも物理的にも現実的ではなく、戒厳令布告のないままの措置に反対する勢力が存したことは特筆すべきか。米国史に無知な私の、単純なステレオタイプ的な見方を修正してくれた一書。2000年刊行。著者は横浜市立大学国際文化学部教授。
横浜市立大学名誉教授 「2019年 『ハリエット・タブマン』 で使われていた紹介文から引用しています。」