- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062582315
感想・レビュー・書評
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面白い・・・二日で読んでしまった。
ただし、注意しなければいけない。実際に存在する神話を題材としているが、学説というわけではない。学術的な裏付けのあるハナシではないのである。レヴィ=ストロースや南方熊楠などの研究に基づいてはいるが、この話は中沢新一という思想家の、あくまで一つの、世界の捉え方であると、それだけを心の片隅に置いて読み進めれば問題はない。
僕自身、これまであれこれと考えてきた「人間の根源は何か」とい問いに答えてくれそうな気がして、中沢新一を読み始めたのである。このシリーズはまだ4冊続くが、読み終わるころにはきっと、自分の中に新しい地平が開けていそうに思う。
なお、芸術人類学研究所のHPの「芸術人類学とは」という文章だけでも読んでおくと、中沢新一の言わんとするところがより良く分かるだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人類学者の中沢新一によるカイエ・ソバージュシリーズの第一弾。
僕にとって初めての中沢新一。
とりあえず気になるところをつらつらと書いてみる。
以下ネタバレあり。
第一章人類的分布をする神話の謎
・北米インディアン版の竹取物語では両親に愛された娘は中国の纏足のように足が小さい。皆が求婚するが断り、族内婚を嫌い、熊や狐、シャチと結婚する。人間の世界で一切の媒介された状態を実現できていない。
・燕石に関する伝承はさまざまある。
・ヨーロッパの民間伝承で鳥の巣あさりがあるが、これは思春期を迎えた少年を青年が登らせて卵などを取りにいかせる習慣だが、ここで巣に手を入れてはじめて性の手ほどきが行われるといわれている。
第二章 神話論理の好物より
・アメリカインディアンは豆とトウモロコシをよく似た位置のものと捉えている。豆は睾丸、トウモロコシはペニス。柔らかい睾丸はより女性的。
・豆と燕はよく似た存在。豆は解剖学植物学的なレベルにおいて生と死を仲介する両義的な存在。ピタゴラスはそのため豆を取り入れずにいたし、同じ理由で燕を入れてはならなかった。
・ピタゴラス哲学はこちら側にはモダンの純粋主義にも通じる性格を持ちながら、向こう側には神話の世界が広がっていた。豆などを嫌っていたピタゴラスが蝶つがいの役目をになっている。これは節分でいう呼びながら払うという二重の性格を現している。つまりピタゴラスが豆と同じ働きをしている。
第三章 神話としてのシンデレラより
・現代の神話舞台は芸能界が担っている。
第四章 原シンデレラのほうへより
・民話は単調な反復を好む。
・原シンデレラは残酷な結末。姉たちは足を切り落として靴に足を滑り込ませる。さらに結婚式で小鳥に目を奪われる。
第六章 シンデレラに抗するシンデレラ より
・ミクマクインディアン版のシンデレラ「見えない人」は批判精神により作られた。「美しい」は単に見た目だけの話である、と。精神の話。
・カマドは人間と霊界を仲介する場所。
・見えない人に見てもらおうと美しく着飾っては見えない。
・最後にボロボロの娘はきれいに着飾ってもらうが、これは自然の美しさの話。それは誰もがもっている。
第七章 片方の靴の謎
・オイディプスの神話でもオイディプスが片方の足を引きずっているのは死者の領域に踏み込んでいるため。
・シンデレラは死者の領域と自由に行き来できる能力者。
・シンデレラが脱ぎ捨てた片方の靴は彼女に打ち込まれた死者の王国の刻印。
終章 神話と現実より
・神話は哲学。
・現実を失ってでもバーチャルにいくことに神話は警鐘を鳴らしている。
さまざまなシンデレラに対するアプローチは必見。
知識がつまっている。
他のいろいろな神話も調べたい。
やはり今と昔はぐるぐると回って同じところにあるのだ。 -
神話は、具体的な世界との関わりの中で生まれれる。
この本の中で紹介されるいくつかの神話を読んだとき、たしかな感動があった。
なぜ僕は今、神話に感動するのか。
きっと、僕が、具体的な世界に目覚めはじめているからだろう。
これまで浸ってきた、観念の世界から脱出しつつある。
神話と宗教の違いが、この本では語られる。
神話は具体的な世界をもとに生まれる。対して宗教は観念の世界である。
ああ、今まで自分がやっていたことは、宗教だったのかもしれない、と思った。
また、著者は現在流行しているアニメやゲームの物語は、神話的であるが、神話とは異なるものであるという。
アニメやゲームの物語は、神話の「様式」であり、そこには「内容」がない、と。
「内容」とは、具体的な世界のことである。物質の世界。自然。
大量の物語を消費する僕たちの空虚さの正体が、少し見えた気がした。 -
とても興味深い
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とりあえず恩師。感謝感激マジありがと。
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中沢新一先生の中央大学での講義を基にした1冊。読みやすい文体は元が授業故の口語文体だからでしょう。内容は神話。最古の哲学とはなるほど、と感心しきり。シンデレラを軸にその話の展開は一気に読まされてしまうほどワクワクしました。
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各地・各時代のシンデレラの話もとても面白いけれど、「最古の哲学」としての神話の考え方や有り方について書いた第1章がとにかく素晴らしかった。(20070516)
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あまりに面白くて一往復半で読了。
シリーズ?まであるそうなので図書館で予約しなくては。
アンデルセンよりグリムが好きな方は、もれなく楽しめること請け合い。 -
中央大学教授、2006年度からは多摩美大で芸術人類学を研究される、人類学者であり宗教学者の中沢先生の、中央大学での「比較宗教論」の講義録『カイエソバージュ』シリーズの第一弾。
国家や一神教が発生する前の人類(旧石器時代後期から)は、神話という様式を用いて宇宙における自分たちの位置や、自然の秩序や人生の意味などについて深い哲学的思考を行ってきた。国家というものを持たなかった自然民族の語り伝えた神話には、現実の世界とのつながりを失うことのない、素朴だが複雑な成り立ちをした論理の体系が潜在している。神話は非合理的、非科学的であるというイメージを払拭し、神話は人間が最初に考え出した、最古の哲学であると、私たちに教える一冊。