愛と経済のロゴス カイエ・ソバージュ(3) (講談社選書メチエ)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062582605

作品紹介・あらすじ

カイエ・ソバージュ第3巻刊行!
モース、マルクス、ラカンを超えて、21世紀の贈与論へ!

本当の豊かさとは? 資本増殖の秘密とは?
貨幣と魔術。愛と資本主義。
全体性の運動としての経済と精神の構造は同一である。
資本主義の彼方に出現する「未知の贈与論」を探究する。

感想・レビュー・書評

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  • 借りを返すために生まれたわけじゃない。でもそういう仕組みの社会だから、洞察して、わたしが何を本当に欲していて与えたいのか、考えながら生きていきたい。

    以下要約↓

    金額が高いものは、果たして価値があるものなのか。逆も然り、安いものは価値が低いのか?
    もちろん、金額が高いからたくさんの人の手で作られて丹念にっていう商品もあるのだろうけど、それは僅かの芸術家だけで、そういうものはタマシイが込められてる、作者によって。

    ハイブランドのアクセサリーや洋服、高い車、これらはその作者の満ち満ちたエネルギーやタマシイが本当にあるのか、モノが誰かの手に入る時、作者は心から与えたいと思っているのか。
    この「与えたい」という純粋な気持ちが100%あるモノって、大好きな人に誕生日プレゼントを贈るときくらいではないのか。あとは、手作り料理とか。

    今や、バレンタインなども「義理チョコ」と呼ばれるわけだ。それは、「交換」であり、見返りを求めている。

    労働も「賃金」によって交換されている。

    交換の世界じゃなくて、贈与の世界になったらこんなにも幸福なことは無いんだろうけど、それをするのは人口がめっちゃ減らないと厳しいし、どうにもならないなあとも思ってしまうね。無念^_^

  • 初期マルクスの「経哲草稿」には、愛に触れたこんな一節があるとは些か不意をつかれた感がした。
    「きみが愛することがあっても、それにこたえる愛をよび起すことがないならば、換言すればきみの愛が愛として、それにこたえる愛を生み出すことがないならば、きみが愛する人間としてのきみの生活表現によって、きみ自身を、愛された人間たらしめることがないならば、きみの愛は無力であり、一つの不幸なのである。」

    これはまさしく愛の互酬性、贈与としての愛の言説ではないか、と。自分自身を愛するのではなく、他者を愛することによって、かえって自分自身が愛される人間になるという、愛についてのこの謂いが格別特殊なものでもなく、ごく自明の言質というべきなのだが、マルクスの言というだけで、私が抱いてきたマルクスへの既視感を逸脱して、私にはかなり新鮮に映るのだから奇妙なことではある。

    本書で中沢は「資本論」に結実していくマルクスの思考は、その出発の時点では贈与論の思考をあらわに表に出しながら展開されていたものとし、マルクスは最後まで贈与論的な思考に支えられていたと想定したうえで、マルクスの思考の背景に流れる、愛の互酬性、贈与としての愛を読み解き、貨幣の交換原理に互酬と純粋贈与の贈与論を対置させ、すでにグローバル化してしまった資本主義社会に対抗し、これを突き抜けうる人間世界の理論を構築しようとする。

  • 2003年 中沢新一
    カバー、エドワード・アーリントン「毒の神酒」1983

    NOTE記録
    https://note.com/nabechoo/n/n5825c0a59323

    現代の「沈黙した自然」と、愛のあるコミュニケーションを!さすれば、無尽蔵の富を与えてくれる?

    贈与=愛=増殖。

    「コルヌコピア(豊穣の角)」表紙。無尽蔵の富を生み出す不思議な器。

    信頼と愛と思いやり。
    「仲間たちに、変わらぬ忠誠と愛を」ベイブ、エコノミーの真の精神は、まさにここに尽きる。

    3巻目。ここまで、とても面白く読み進めてきたけども、今回はそろそろ我が頭脳の限界に達しそう笑 経済というのがなんとも苦手意識が強く、読むには読むけど、どこまで理解できたか、怪しい。

  • 中沢新一 「 カイエソバージュ 3 」資本主義を贈与と交換の原理により説明した本。志賀直哉「小僧の神様」をテキストに モースの贈与概念に 純粋贈与を加えて 富(価値)の増殖概念を解き明かした

    資本主義
    *贈与型の共同体を解体した社会様式=交換の原理により贈与の原理を無力化
    *資本家の貨幣増殖=労働者の不払剰余労働

    純粋贈与
    *極限の贈与が純粋贈与
    *純粋贈与とは 自然 の別名
    *贈り物と返礼の円環の外にある
    *贈与の見返りは求めない
    *贈与の原理が純粋贈与に触れるたびに霊力が増殖

    富の変態
    *コルヌコピア=無から有が創造、富を生み出す
    *富の源泉は自然や神など社会の外部→富の源泉が社会の内部へ=人間化

    フィジオクラシー(重農主義)
    *貨幣そのものは富ではない=貨幣から増殖は受けない
    *労働の贈与と純粋贈与する大地との出会いにより 純生産は出現

  • 1巻で定常社会、2巻で定常社会から王、すなわち国家の誕生と進んできたカイエ・ソバージュ、3巻目は、資本主義の誕生ということになる。

    2巻から、話が進みすぎじゃないの、という気もするが、とりあえず読んでみる。

    モースの「贈与論」を起点に、ケネー、マルクスと進んでいく流れは、人類学側から経済にアプローチする場合、「まあ、そうだろうな」という展開だろうか。と、偉そうなことを言うほど、その辺の本を読んだ訳ではないが、栗本慎一郎や今村 仁司を昔読んだときと同じような感じの議論である。

    中沢氏は、さらにそこにラカンを援用しながら、資本主義の精神とキリスト教の三味一体説との類似性を指摘する。このへんが、この本のハイライトかな?

    前の2冊が、さまざまな神話や風習の分析が沢山入っていて楽しかったのに対して、3巻目は、やや理論的な印象であった。冒頭の志賀直哉の「小僧の神様」の分析は、なかなか面白かったが。

    順序的には、第4巻の「神の発明」のほうが、先にきて、そこから資本主義が誕生する言う流れでも良かったのではないか、とも思うが、そこは、「起承転結」の「転」というところで、すこしムードを変えてみようということなのかな。

    あるいは、全体の真ん中なので、ここいらで理論を整理して、次なる飛躍に備えようということだろうか。

    第4巻の「神の発明」に期待して、満足度は、3つとしておく。

  • 交換と贈与について学べるよ。 今の交換社会に互酬の概念を 織り込んでいければいいね。 マオリ族のハウがいいなー。

  • 2007-05-08

    ラボの先輩と「手作り工芸品」と「ダイソーみたいな大量生産品」との価値をどう見出すか,または存在するか,
    また価値付けていけるかという議論の中で,

    貨幣に交換しうる市場経済に乗るグローバルな使用価値や貴重価値ではなく,おばあちゃんの形見とか,
    結婚指輪みたいな手作り品のもつ非均一性,ローカルな希少性が持つ「替えられぬ価値」
    を金銭的尺度の元で切り捨てることなく流通させることが必要だろうとか,主張していると,

    先輩が「これ読んでみたら」と渡してくれた.

    贈与論です.

    本書では,交換・贈与・純粋贈与というものを区別し,純粋贈与(与えるのみ,見返りが徹底して存在しない.)
    に神聖が見出されやすいことを指摘されている.

    確かに「贈与」という行為は面白いなあ と思う.

    贈与が一方的であるというのは,法的には正しいが,社会的には誤りだ.(特に日本では)

    お中元でもお歳暮でもお祝いでも,「お返し」はほとんど必ず存在する.だから現代人は「面倒くさい」と言うわけで,バレンタインでも
    「結局,交換になるだけやん.じゃ,相殺で,なしで.」となるわけだが,

    その相互行為に時間的なずれがあり,相手がくれるものの価値が前もっては見えない(情報の不完全さ=リスクの存在)構造が入ることで,
    そこにはやっぱり,同時に等価物を「交換」することとは,心理的・社会的に全く異なる次元が現れてくる.

    もらった側にとっては,それが高島屋ギフトならギフト価格はすぐに分かるので等価なものを渡せばいいが,「手作り品」をもらった場合,
    等価な返礼など出来るだろうか?

    ブランド品的に市場の中で価値を見出された工芸品は良いが,
    それ以外の市場で貴重価値が認められなかった手作り工芸品が生きる道として,交換に基づく市場経済への参戦を放棄し,
    贈与に徹することでニッチとしての,その真の価値が見出されていくんじゃないだろうか.

    と,思ったりした.



    ちなみに,英米法では「約因」(見返りみたいなもん?)てのが契約には必要らしく,贈与みたい片務契約は有効じゃないとか・・・・.
    さらに.ちなみに,贈与物や行為にたいして,「借り」を感じすぎてしまうのが日本人で,
    それが日本人がうつ病にかかりやすい原因だという議論もあります.

  • 読了。

    【借り本】
    カイエ・ソバージュ3 愛と経済のロゴス / 中沢新一

    大学でカイエ・ソバージュの講義をまとめた本の第三弾。

    愛と経済のロゴス
    愛と経済は一見背反してるようだけれどがっちり繋がってますよというお話ですが、難しい話でございました。

    経済の原理は交換と贈与と純粋贈与の3つからなり、交換は貨幣に置き換わるよく知る部分でここには人とものとは切り離されていてつながりはない。
    贈与は贈り物等で人とものとの間に思いがつながっている。贈り贈られがある。
    純粋贈与は見返りのない善意の贈与。自然になる山菜のような大地からの贈り物ってところかな。
    あるいは神からの贈り物
    この3つである。
    贈与と純粋贈与とに愛が絡むのだろう...
    たぶん…w

    マルクスの話はもちろん、後半ハイデガーの話とか出てきて、哲学入門でさらっとかじったことあるけどもう難しいよね...

    勉強になったのかならなかったのか...
    私にはまだレベルが足りないようです。
    全体像はぼやけて見えてる気はしますが...
    でもなぜキリスト教のもとで資本主義が発生というか発展したのかはうっすらわかった気がしますね。

    勉強になりました。

  • 2巻よりおもしろかったなー。

  •  グローバル経済という一元的な価値観に基づいて社会が形成され、私たちは翻弄され、もう耐えられなくなってきているといっていいだろう。そんななか、贈与、純粋贈与という最古の思想から出発して共同体のあり方オイコノモスを考えなおすきっかけを与えてくれる。

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著者プロフィール

1950年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。京都大学特任教授、秋田公立美術大学客員教授。人類学者。著書に『増補改訂 アースダイバー』(桑原武夫賞)、『カイエ・ソバージュ』(小林秀雄賞)、『チベットのモーツァルト』(サントリー学芸賞)、『森のバロック』(読売文学賞)、『哲学の東北』(斎藤緑雨賞)など多数。

「2023年 『岡潔の教育論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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