神の発明 カイエ・ソバージュ〈4〉 (講談社選書メチエ)

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  • 講談社
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レビュー : 25
  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062582711

作品紹介・あらすじ

内部視覚、瞑想、夢の時間…。「宗教的思考」の根源はどこにあるのか?精霊が超越を生む。高神から唯一神へ。"精神の考古学"が、神々の基本構造をあざやかに解き明かす。

感想・レビュー・書評

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  • 中沢新一 「 カイエソバージュ 4 」宗教的思考の発生プロセスを論述した本。宗教的思考を 超越(人間の意識を超えた思考。スピリットの世界)概念から説明

    人間の心(超越、スピリットの世界)が 非対称になることにより 神が出現する とした

    人間の心が神を発明する
    *超越性の思考の発生→スピリットが明かす神の秘密
    *超越性の思考=人間の意識を超える→超越は心の内部を突き抜ける出来事
    *超越の入口にスピリットが群れている

    「スピリットからの神の離脱は必然的なものでない。そこには本質的な進化はない」

    スピリット→来訪神
    *スピリットは 思考の及ばない場所で活動
    *スピリットが 現実の世界に触れる→富の増殖
    *キリスト教の聖霊も スピリット(三位一体説)
    *シャーマンは スピリットの世界と交信
    *スピリットは種類が多い

    グレートスピリット
    *神学的には「神」、哲学的には「存在」に近い
    *グレートスピリット→高神=唯一神の原形

    「唯一神は 多神教などから進化したものではなく、最初から人間の心に発生していたもの」

    対称性の自発的破れ
    *高神=非対称性、来訪神=低次の対称性
    *対称性が高い=スピリットもグレートスピリットも自由
    *スピリットの世界に圧力→高神と来訪神が分岐→高神が外部へ=神の出現

  • カイエ・ソバージュも後半戦である。定常社会(中沢氏の言葉では対称性社会)、国家の誕生、資本主義の誕生と進んできた話は、一神教の誕生となる。

    中沢氏の専門の宗教の話で、講義はいきなり宗教儀式でのトリップの話から始まる。そこから、現世人類の脳の話に展開しつつ、宗教論へ。

    さまざまなスピリットから、一段高いところにあるスピリットがでてきて、それが神に移行していく。その過程で、対称性の破れが生じて、トポロジカルな転換が生じ、メビウス縫合型とトーラス型の神が出現する。そうだ。

    とまあ、物理学とか、トポロジーの喩えを使った説明が分かりやすいかどうかは別として、その主張は、なるほど感は高い。というか、わりと、まっとうな話だと感じた。

    で、いよいよ高いところにいる神とその他大勢の神からなる多神教から、一神教がなぜ生じるか、という肝心のところとなると、その説明には、拍子抜けしてしまう。

    つまり、トポロジカルな転換が生じるのでなく、多神教的なものを抑圧することによって、一神教が生じるとのこと。

    なーんだ。と思う訳であるが、「人間は完全には一神教にはなりえない。なぜなら脳がそういうふうにはできてないから。(また、完全に無宗教にもなれない。脳がそうできてないから。)キリスト教も三位一体の考え方を入れて、多神教性を取り入れる事によって、発展した。そして、資本主義も三位一体とパラレルな構造である」という主張には、一定の納得感があった。

    カイエ・ソバージュもあと、1冊。これまでの議論を踏まえて、どういう展開になるのか。楽しみである。

  • 「客観的な現実などというものはなく、お互いの会話を通じて共通の認識をつくることができる」という趣旨のことが書いてあり、まったくその通りだと思いました。

  • 物理学では万物の根本原理を科学的に証明する理論を「公式(モデル)化」する試みによって重要な発見がいくつもなされてきた。そのような「万物の理論」を探求する上で重視されてきたのが「対称性の原理」である。あらゆる現象を説明できるほどに汎用性の高い公式は、「対称性(偏りのない数学的美しさとシンプルさ)」を兼ね備えていなければならなかったからだ。

    著者は人類をめぐる壮大な歴史のフルコースを、古今東西さまざまな文明の材料をふんだんに使って、鮮やかに調理してみせる。そこで用いられる調理器具(モデル)こそ「対称性の原理」である(もちろん物理学でいう対称性とは内容が異なるが)。

    本書で「対称性の原理」のモデルとして活用されるのは「メビウスの帯」(表と裏が「ねじれ」ながらひとつながりになっている帯のこと)である。

    そこで示されるのは、「人間(表)」と「自然(裏)」との根源的な「結びつき」が成立する原理であり、「人間/自然」の区分がもはや分別不能となる世界である。なぜなら、人間もまた本来「自然の力」によって生み現れたものの一部に他ならないからである。

    著者は、この人間と自然との「結びつき」を引き裂いたり、再び回復しようとする試みが、宗教・哲学・科学・政治・経済等のあらゆる分野でどのように展開されてきたのかを、「トーラスの輪」「クラインの壺」といった他のモデルを駆使しながら、明晰かつウィットに富んだ語り口によって説明してみせる。

    著者によれば、この「対称性」は「(西欧的な)文明化」とともに隠ぺい、忘却、抑圧されてきた。

    たとえば、西欧の形而上学や科学に代表される「分析的知性」は、人間と自然(動植物や鉱物)との間に分断線を引くことでそれらを客体化させ、積極的な開発・利用・搾取を可能にした。また、(自然や他者とのつながりから分断された)「個人」や「共同体」による「契約=選択」という考え方は、「一神教」や「国民国家」「資本主義」の前提ともなっている。

    そのうえで、著者は現代社会が抱え込んでいる難問の多くが、生命やこころの根源にある「対称性」が破られたことによってもたらされたものであることを示す。

    「宇宙や自然とのつながりを取り戻す」というとオカルトめいて聞こえるかもしれない。だが、著者によると、人間は記号論理的な「分別的知性」と同時に、常に変成し続ける事象全体を、直感的に捉える「流動的知性」を本来的に備え持っている。著者は人間の脳が備えているそのデフォルト機能に希望を見出している。

    宇宙を生成変化させる「大いなる力」の現れを精霊(スピリット)として崇めてきた「古代人」。分断し、固定化された概念への執着を無碍にする「仏教」。これらの考え方や生き方は、「分別的知性」と「流動的知性」をかろうじて両立させ、「対処性」を維持・回復することを可能にしてきたからだ。

    本書を味わう醍醐味は、人類史をめぐる現象の単なる知識や情報を得ることではなく、そこに潜む根本原理を通じて「自分たちはどこから来てどこへ行くのか?」という存在への根源的な問いを掘り起こすことにある。

    そして、なにより「生命の大地」「こころの母胎」にふれることは、世界をよりいっそう新しい驚きと喜びに満ちたものとして受け容れることを可能にしてくれる。

  • Mon, 15 Sep 2008
    神といっても唯一神に焦点があたる.
    スピリットとしての多神はどこの文化においても古来から見受けられる.
    これに対して,ユダヤが生み出した唯一神はどのような相転移を元に生まれたのか?というところに焦点があたる.
    中沢氏は読んでいると,純粋にレヴィ・ストロースの構造主義人類学の影響をうけていて,そこに深遠さ,
    かっこよさがあるんだけど,その後の現代思想的な議論の飛躍を内包している.

    本書の議論の中にで「トポロジー」「対称性の破れ」などという,数学的・
    物理学的言語を使って多神教から一神教への流れを切っていくのだが,比喩以上のものがあるのかどうかは非常に怪しいように感じた.

    純粋数学とフィールドの現象をマッチングさせるのは構造主義の特徴なので,よいのだが,
    ブルバギとの交流で四元数を近親相姦禁止のルールの考察というフィールドに持ち込んだレヴィ・ストロースに比べると,
    フィールドの現象と,上記数学的言語との間の対応が比喩の域を出ていない気がした.


    ともあれ,一神教が科学的思考,そして現在の非共生型社会の根本に据えられていそうという考えは多くの人が了解するところ.
    多神教と一神教の相容れぬ相の違い.この差異を考えることは非常に重要だ.


    おもしろかった考察は,自然の中にスピリットが潜むという多神教から一神教へ移ったフェーズにおいて,神の位置が街・
    村落の外部にある<自然>から都市の中心に位置する国王の上へと移り<自然>が対象化されたという考え方だ.
    これは至極なっとくした.
    まあ,一神教の信者の方には,国王・司教と神様の関係については御異論あるかと思いますが,その辺りは本書にて・・・・.
    神様は森の中におらず,国王の上にいるんだから,森の動物や木々,氾濫する川の水は最早,神様の意思ではなく,
    統御すべき<対象>にすぎない.その過程で自然に対する畏敬の念は消えたのかもしれない.

  • ようこそ!「精神考古学」の世界へ!!この講義に必要なのは、古代から変わらぬ、あなたの脳と心。
    さぁ、ここにあるのはスピリット、あると信じてもらわねば話は始まりませんよ!!
    スピリットを材料に、いかにして神が生まれたか、精神考古学で解き明かしていきましょう!!という内容です。
    文章は講義の内容なので読みやすいです!!
    ラスト、現代の宗教は無宗教の皮を被った経済主義。知識が権力となり、情報が、物質が最大に価値を持つようになっている、というところに大興奮。

  • 興味深い。

  • 「神の発明」という題名に惹かれて読みだした

    人間を人間たらしめた創造力がもたらす
    姿を持つ肉体と相対する見えない意識の世界を切り口に
    歴史を紐解いていく内容も面白いけれど
    即興に近い講義のノートを
    本にしたという語り口調も軽くて読みやすい

    資本主義や経済とスピリットや神が関わる道筋など
    楽しい発想がイッパイだけれど
    無限と有限の織り成すパラドックス観のところで
    相対性時空間に関する思いがずれてか
    しっくりこないものとでくわす

    最初のタグは「純粋贈与の本質がはっきりと見えてくる」
    二度目は「心の内部と外部の世界をつなぐドリームタイム」
    3番目は「グレートスピリットの形態学」
    4は「シュミット学説再考」の後半
    5は「カーテンの向こう側へ」の後半
    6は「南島へ」・・・

    第六章のトーラス型になって膝を乗り出すも
    少しずつ違和感も感じだす
    言葉の行き違いだけのようにも思うし・・
    何度か読み返す必要を感じる
    最後に描かれている「未来のスピリット」で
    私自身が馴染めない手塚治虫のアトムが出てきてしまう

    どうやらこの世の要はスピリットなのかもしれない

  • カイエソバージュの4冊目。一神教の、それも原理主義が大統領選挙を動かす国で「多神教っていいな」と思いはじめて久しい。アイヌにもグレートスピリットに当たるものがあるのだろうか?中国の宗教って何なのか、などと思いながら読みました。

  • 神がどのように存在しているのかが、分かりやすいことばで書かれている本。シリーズ物だが、この一冊だけでも問題なく読める。

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著者プロフィール

中沢新一(なかざわ・しんいち)
1950年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。現在、明治大学野生の科学研究所所長。思想家。
著書に『アースダイバー』(桑原武夫学芸賞)、『大阪アースダイバー』、『カイエ・ソバージュ』(小林秀雄賞)、『チベットのモーツァルト』(サントリー学芸賞)、『森のバロック』(読売文学賞)『哲学の東北』(斎藤緑雨賞)など多数ある。

「2018年 『精霊の王』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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