- Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062582797
作品紹介・あらすじ
誤解され続けてきた哲学者ニーチェ。病気に苦しむ哲学者の健康法とは、発狂後に描かれたただ一枚のスケッチが告げるものとは、思想誕生の秘密とは-喜劇的で少し哀しい生涯を辿りながら、そのラディカルな思想の全貌を明らかにする。
感想・レビュー・書評
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「超訳ニーチェの言葉」あたりから、出版社が吹聴する「ニーチェすごい、ニーチェすごい」のメッセ―ジに私たちは洗脳されている。
この本を通して、ニーチェの実像・実際の考えに近づけたことがよかった。彼自身、世俗の価値観の中で奮闘していたのだなと。(特に、恋人候補と友人と3人で浮足立った恥ずかしい写真を撮るあたり。)
筆者が、ニーチェの思考の核は体の病気である、と言い当てている点も的確な分析かと。
ニーチェについていえば、”本能の健康”が、世の価値観があまねく妄想であるという悲観を受け入れた上で、自らの価値観で生きていけ、と言っている点には合点がいく。
けど、きみたち、人生を徹底的かつ積極的に悲観せよ、と言っているように聞こえ、気が滅入る...
この人、どれだけ不幸に暮らしてきたのだろうか。救済などないと言うけれど、本当にそうなのか?
親しい人たちとのひとときのあたたかな交流、ひとときの微笑み、青空、そよ風、緑、花々。春の訪れ。夏のアイス。秋のグラデーション。冬の温泉・おでん。そして、夢見る心。近所の銭湯。それは救済ではないのか?
・・・あ、これが、ニヒリズムの進んだ結果「文化が卑近・矮小になる」ということか。
筆者の、なんというか、ねじれつつ暗いながらも真面目な筆致に信頼感あり。最後、読み切れないほどの参考図書を上げてくれているところが、彼なりのサービス精神なのだろう。引き続き勉強したい。
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・ (体の健康と対比して、)本能や知性の点で健康な者は、知性に負荷をかけることを意欲する者。知性に対する負荷とは、生存に敵対的に作用する、ペシミスティック(悲観的)な認識。
・一切の価値は虚偽・妄想。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ちょっと前に読んだ「笑うショーペンハウアー」がらみでニーチェが気になった。
ニーチェってドイツ人?
ニーチェって変な人?
という小学生でも思いつく疑問がずっと返答のないままの状態で私の中に籠っていた。
哲学とは縁を切ってもいいほど一からニーチェを教えてくれる伝記的入門書。分かり易い分ニーチェを身近に感じられた。
とりあえず哲学そのものを知りたい人が読んでみてもいいのではないか。
ニーチェはドイツ人です。ニーチェは変人です。でもね・・・(つづく) -
30年近く、ニーチェの周囲をウロウロしてきたが、ようやく視界をスッキリさせてくれる本に出会った。ありがたい。様々なデマ、勝手解釈の横行が開示されており、ニーチェを読む上での基本書だと思う。オススメ。
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ニーチェの入門書として非常にわかりやすい。読書案内も。
ニーチェを内的に読むと発散するので外的に(=史料も参考にして)読む、と。それぞれのタームへの説明や、事実への裏付けによってニーチェが一貫して読みやすくなっている。
最重要なタームとしては健康、か。強者の徳の、奴隷道徳による転倒。真なる認識を求めることの無効性=ニヒリズム。そこにおいては健康さが試され、超人は永劫回帰という最も強烈なペシミズムにおいても生きる意志を失わないことが試される。デュオニソス敵なもの=ニヒリズムに気付いたときに陶酔へと向かう態度。などなど。
あと、それぞれの主体はそれぞれの遠近法を持っており、真実はなく解釈しかない。動物の種の進化と同じように我々の道徳は真理の実現へ向かっているのではなく、系譜にできる変化でしかない。などなど。
この人の本はまた読んでみよう。 -
著者は自分以外のすべての解釈が不満などと大言壮語を放っているが、ニーチェの思想に対してたいした解釈を提供せず、せいぜいニーチェも軽い伝記にしかなっていない書籍だと思われる。
正直ニーチェは髭を生やしていたがその印象より女性っぽい雰囲気があるという記述しか印象に残る記述がなかった。 -
ニーチェについてはこれまでにも多数の解説書などが出版されているが、本書は伝記・思想・著作解題・ブックガイドなどで構成されている。
文体も読みやすく内容も充実しており、おすすめできる本だといえる。
238ページ
目次
●プロローグ――新しき海へ
●ニーチェの生涯と思想
●ニーチェのキーワード――教養俗物/ニヒリズム/ディオニュソス的なもの
●三次元で読むニーチェ――ニーチェ百景/アリアドネと2つの三角形/敵たちよ、敵などいないのだ
●著作解題――『人間的な、あまりに人間的な』/七つの序文/『道徳の系譜学』
●エピローグ――新しき海から
●知の道具箱――ブックガイド/ニーチェの軌跡