日本を意識する (講談社選書メチエ)

制作 : 齋藤 希史 
  • 講談社
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レビュー : 1
  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062583275

感想・レビュー・書評

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  • 内容:日本論に相対する。

     講義の単行本化だが、(個人的に)とても興味深い。
     前書きから、本書の問題意識がはっきり述べられている部分を抜粋する。

     “書店に行くと、日本論や日本人論は一つのジャンルをなしていて、書棚の少なからぬ部分を占めている。〔……〕あえて言えば、日本を語る言葉これらのことばにとって、日本という存在はあまりにも自明のことのようであるらしく、そもそも日本は語りうるものなのか、日本を語るとはいったいどういう行為なのか、という点については、あまり自覚的でない。もちろん、文化なるものは語りうるのか、という問いも眼中になさそうだ。
     一方で、日本を語る行為、文化を語るという行為そのものの意味について論じた書物や文章も、実は一つのジャンルをなしている。〔……〕国民国家論やカルチュラルスタディーズ、あるいはポストコロニアリズムといった方法論を標榜することもあるし、そういう旗印は関係ないと言う書き手もあるだろうけれども、こうしたことばがやはり一つのまとまりをなして、互いに参照し合いながら語られていることは事実だろう。〔……〕修士論文や博士論文のテーマとしても、単純な日本文化論よりもずっと論文らしく書けると思われるのか、人気のようだ。
     生産と消費のサイクルがそれぞれ別で、互いに噛み合うことがない。片方のジャンルの読者はもう一方のジャンルの読者にはならない。書く方も、むろんそうだ。奇妙な光景ではないだろうか。
     〔……〕
     私たちはすでに日本を語ることばに囲まれているし、それを完全に離れて思考することは難しい。日本なるものを意識することは、それが近代の産物だと宣言されても、無くなるわけではない。文化という観念にすっかり浸かってしまっているわが身が鏡に映るばかり、ということにもなりかねない。けれども、鏡を見て悦に入るのも、鏡を割ってしまうのも、どちらもしたくはない。”
    [齋藤希史『日本を意識する』pp.6-8]


    【目次】
    目次 [001-003]
    本文関連年表 004
    はじめに [005-010]

      第1部 日本のすがた
    第一章 異文化体験で私は何を発見したか――日本研究の視点から 義江彰夫 012
    私の二つの異文化体験/事前認識と実体験の大きなギャップ/異文化への感情的反発をその克服/異文化比較――宗教複合という視点/ヨーロッパの基層信仰とキリスト教/破壊された泉と神殿――ゲルマン信仰/制圧の論理/ケルト信仰とキリスト教/包摂されたケルト信仰/ヨーロッパ宗教複合を規定した歴史的背景/五臺山――宗教複合の縮図/神々が共存する背景/日本的宗教複合の形式/日本的合理思想の前提/宗教複合の多様性と共通性/注

    第二章 立ち現れた「日本語」のすがた 鈴木広光 038
    意識されることば/最古の日本語文法書/大航海時代の言語政策/ことばに輪郭を与える/活版印刷術の光と影/江戸の多様な印刷書体/「国民的出版後」の創出/「普遍」的書体としての明朝体/相性の悪い「和洋」かな/変容を遂げたひらがな書体/様式規範の継承/誰のものでもない文字/参考文献

      第2部 外からの日本
    第三章 日本女性の不可解性と理想化――『お菊さん』と『蝶々夫人』 大澤吉博 064
    ヨーロッパとの出会い/ルイス・フロイスの目に映った日本/バジル・ホール・チェンバレンの指摘/ピエール・ロチの『お菊さん』/外から眺めた心理描写/小説内にただよう疑惑と不安/いつ菜不可解さ、そして魅力/ロチと『マダム・バタフライ』/仮想の日本/イデオロギー批判と表現の質/オペレッタ『ミカド』をどう見るか/日本を意識すること、しないこと/参考文献

    第四章 脱和入欧の心理――ロチと日本の作家たち 菅原克也 089
    「外側」の目からの日本/世界の片隅にある夢の国/『お菊さん』――フランス海軍士官の描いた日本/辛口の日本批評/オリエンタリズム的な想像力/大正期の作家たちの反応――永井荷風と志賀直哉/芥川龍之介のロチ評価/芥川に見るオリエンタリズム/日本人が日本に感じるエキゾティシズム/高みから見下す視線/ロチが日本人作家に与えた「はしご」/注

    第五章 周作人の日本――「生活の芸術」と倫理的主体 伊藤徳也 113
    近代中国の知的巨人が見た日本文化/「人情美」/和辻哲郎『日本古代文化』からの啓発/天然の愛好、簡素の尊重/宗教的情緒/「生活の芸術」と日本文化/共感と同情の裏側/倫理的主体のあり方を見つめて/注

      第3部 日本の自意識
    第六章 どのようにしてこの国の名が「日本」となったか 神野志隆光 134
    神功皇后の物語から/朝鮮との関係における「日本」/「日本」の設定と承認/中国の世界像と「日本」/「日本」の転換

    第七章 唐土にたたずむ貴公子たち 三角洋一 154
    平安期の二つの物語/『浜松中納言物語』の中国故事の出典/中国でもみとめられる美貌/唐人の率直な物言い/物語文学史における『浜松中納言物語』『松浦宮物語』/定家の大胆な試み/弁の少将氏忠の唐土体験/三国意識の形成/天竺の天狗/宋で活躍した日本人僧の話

    第八章 「物のあはれ」の日本 杉田昌彦 176
    本居宣長と「物のあはれ」/宣長の二つの命題/「物のあはれを知る」とはどういうことか/感動を言語に有形化する/「物のあはれを知る」説と共感の心理/作中人物への感情移入/「うさをもなぐさめ、心をもはらす」/人情主義思想の系譜/「女童心」の説/拒絶反応――後世からの批評/中国文学者の視線/命題の普遍性/本居宣長の再評価

      第4部 開かれる日本
    第九章 時代観察の方法――杉田玄白と海保青陵 徳盛誠 200
    杉田玄白による時代観察の書/描き出される世相/田沼意次批判/「天下泰平」の実体/時代の表現がみずからの表現/玄白のもうひとつの書物/ジャパン・コンシャスの発生/海保青陵――コンサルタント型知識人/青陵の論理展開/感覚型と論理型の知識人/注

    第十章 明治零年代の「繁昌」 ロバート キャンベル 221
    はじめに/士族官吏から見た新階級制度/育まれたナショナリズムの素地/相対する世界/繁昌をめぐる物語/世界経済の連繋/一軒家の主/注

    第十一章 旅人の自画像 齋藤希史 244
    旅行記の時代/漢学者の中国紀行/士人の視点/国民の耳目/新聞記事の事実/志士の渡航記/英雄の気概/志士から留学生へ/鴎外の誇りと懊悩/鏡に映った姿――夏目漱石/河上肇の比較文化論/街角の異邦人/注

    あとがき(二〇〇五年二月 齋藤希史) [269-271]
    文献案内 [272-273]
    執筆者紹介 [274-276]
    索引 [277-278]

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